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らい
2025-04-28 21:00:25
4176文字
Public
レオいず
レオいず30days㉘「その蛇、良妻につき」
パラレル・パロディ編⑧ お題「蛇」
※辻蛇(辻斬り×蛇)
※十八禁に相当する描写はありませんが、ちょっぴり助平な場面があります
地獄谷の温泉宿にでも来ているのだろうか。
湯がグツグツと煮立つ音がして、辻斬りのレオはまぶたを開いた。温泉ならではの、腐ったゆで卵のような独特なにおいこそしなかったが、そのかわり白米をかき込みたくなるような味噌の香りが通り抜ける。レオが寝返りを打てば、真っ赤に燃える囲炉裏に、野菜のたっぷり乗った土鍋があぶられていた。木製のお玉を持って汁をかき混ぜているのは、蛇の泉であった。
レオは柔らかな布団を剥いで、鼻先をくんくんと尖らせる。食欲を刺激される香りが充満し、レオの胃袋は嬉しい悲鳴を響かせるのだった。
「旨そうなにおい!」
「ふん。ずっと起きないから、くたばったのかと思った。か弱い人間のくせにして、妖怪並みにしぶといよねえ」
「そうは言うけどさ。動けないおれのために、夕飯をこしらえてくれたんだよな。さすがは良妻賢母
……
痛っ」
素直に褒めたつもりなのに、頬をつねられる。泉は「俺が人間のために尽くすわけないでしょ。勘違いしないでよねえ」とそっぽを向いて、しもべである子蛇たちを呼び寄せる。
襖のすきまから、三つの影がにょろりと現れた。けなげな子蛇たちは地面を這いつくばって移動すると、円陣を組むようにして茶碗を持ちあげる。敬愛する主人の命令には、忠実なのだ。
「いい子♪」
泉は子蛇らの頭を撫でると、味噌鍋から具をすくった。濃厚な汁が絡んだ鮭に、とり肉、ねぎ、白菜、しめじ、椎茸、大根───栄養価の高いものばかりを茶碗によそって、ぶっきらぼうにレオに手渡す。
「はい。とっとと食べたら?」
「ありがとう、セナ! ぐっすり眠りすぎてお腹が空いてたから、助かる! それもセナの手料理を食べられるなんて、今夜はご馳走だな~!」
「魚と肉と野菜を切って、適当に煮ただけでしょ。人間って、ほんと大袈裟」
「おまえらもセナを手伝ったのか? えらい、えらいっ!」
得意げに背伸びする蛇たちの頭を撫でてやると、三匹は意気揚々と外に出ていく。どうやらレオが動けないあいだ、周辺の警護にあたっているらしい。出会ったばかりのころは頼りなかったが、いまでは立派な武士である。
レオがうんうん、と父親のようなまなざしで頷いていると、泉は美しい所作でお玉を置いた。
「どこかの誰かさんと違って、ちゃんと働いてくれてるんだから。帰ってきたら、もっと褒めてあげなよねえ」
「そりゃあ、助かってるけどさ。でも仕方ないだろ。おれは怪我してるんだぞ~?」
レオは唇を尖らせながら、口の悪い蛇に物申す。
日ノ本を横断して悪のあやかし退治をしている辻斬りレオは、先立っての戦いで利き腕の骨を折る大けがを負った。泉の治癒術で命だけは繋ぎ留めたものの、旅を続けるなんてもってのほか。立ち尽くしているだけで激痛が伴い、相棒の妖刀を振るうことすらままならない状態であった。窮地から救ってくれたせめてものお礼です、と宿の一室を提供してくれた村長の厚意に甘えて、七日間ほど療養しているわけである。
痛みに苦しんでいた当初よりは確実に良くなってはきているが、討伐の旅を再開するにはまだまだ時間が必要だろう。まずは胃を膨らませて、体力を取り戻さなくては。レオは「いただきまぁす」と鮭を放り込もうとしたが、火でくべた鍋の汁は熱い。「あちっ」と火傷しそうになる。
「急に食べるからでしょ。
……
ったく」
泉は箸を取り上げると、湯気の立つ鮭をふうふうと冷ましながら、レオに食べさせた。レオが「ありがとう!」と礼を告げると、泉はちいさな唇をふたたび尖らせて、熱々の具に息を吹きかける。
なんて健気な蛇なんだ。レオは胸をじぃんと熱くしながら、もぐもぐと咀嚼する。
「世話焼きの蛇もいたもんだ」
「恩に着てよね。動けないあんたのために、わざわざ村の人間から食材をもらってきたんだから。完食しないと殺すよ」
「わかった、わかった。おれに元気になってほしくて、栄養たっぷりの鍋を作ってくれたんだもんな。おまえは最高の嫁さんだよ
……
って、あちちちちちちちっ」
取りたての肉を無理やり突っ込まれて、レオは「ぎにゃ~っ」を悲鳴をあげる。
愚かな人間は嫌いとのたまいながら、大怪我をした男のために甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるなんて───これが理想の嫁でなければ、一体なんと呼べばいい。しかし、気の強い蛇は、逆立った髪を青白く燃やしている。レオは黙って淡々と平らげた。
「ふぅ~、食った食った! ごちそうさまっ」
空っぽになった土鍋に両手をすり合わせて、レオは腹部をぽんぽんと叩く。村の警備から戻ってきた子蛇たちが三匹がかりで茶碗を持っていき、すれ違いで泉が湯呑みをことんと置いた。
そして、粉末の紙包が乗った小皿が、静かに渡される。レオは目を丸くして、泉に尋ねた。
「なんだ?
……
これ」
「村長から教わったの。
……
怪我によく効く薬草だって」
行儀よく正座をしながら差し出すので、ますます健気な嫁に映る。食の介護までしてくれるうえに、怪我の治療薬まで調合してくれるなんて───レオが感極まっていると、泉はぷいっとそっぽを向いた。
「別に、あんたのために用意したんじゃないから。俺は、いつまでも同じところに留まり続けてるのが嫌なだけ。とっとと回復してもらわないと、困るんだよねえ」
「まぁ
……
それもそうか。村のみんなは歓迎してくれてるけど、いつまでも世話になりっぱなしってわけにもいかんしな
……
」
「それに!
……
あんたを治療するのに使い果たしたおかげで、俺の妖力も
……
ずいぶん、枯渇、してる、し
……
」
蛇の語尾が弱々しくなっていく。太腿の着流しをぎゅっと掴み、そわそわと揺れるものだから、レオはごくりと唾をのむ。
泉の治療によって命を失うことはなかったが、その代償として泉の妖力は底を突いてしまった。使い込んだ妖力は時間経過により徐々に戻るにせよ、その量は微々たるもの。もともと酒嫌いの泉は回復力の高い妖酒も好まないので、戦闘能力が著しく低下している状態なのである。
もっとも効果的なのは───人間とまぐわって、胎内に体液を注ぎ込むこと。しかし大怪我を負ってからは、一夜たりとも致していない。泉の自覚があるかどうかはともかく、少なくとも蛇の肉体は、人間の精を求めたがる頃合いなのだろう。
野草を探すために周囲を散策していたのか、泉の胸元が緩んでいる。ぷくりと膨らむ突起がさらしを押し上げていることに気が付いて、レオはとっさに視線を逸らした。骨折で動けなくなるまえは、あやかしとの戦闘をこなすたびに交尾していたのだ。性の衝動に駆られてしまうのは、人間のレオも一緒なのである。脳裏に浮かびはじめる泉の痴態に、レオは眉間にしわを寄せた。
静かな森の湖畔で、大木にすがりつきながら「神聖な場所でっ、こんなことしたら駄目なんだからぁっ
……
!」と気持ちよさそうに突かれたり。
小屋でまぐわっていたら馬が近づいてきて、「見ないでぇっ
……
」と恥じらったり。
殺し合いをするほどの喧嘩を繰り広げて仲直りした晩、「れおくんで、いっぱいにして
……
」といやらしく下腹部をさすったり。
流星がまたたく夜空の下で、「れおくんっれおくんっもっとしてっ」と首筋に甘えたり。
泉のとろける肉壁を思い返しながら、レオは和らいだ唇を引き結ぶ。卑猥な記憶に浸っているレオを察したのか、泉が「あ!」と前のめりになった。
「ちょっとぉ
……
。あんた、いま助平なこと考えてたでしょ」
「えっ! 妖力が枯渇しすぎて、ついに透視能力にでも目覚めたか?」
「馬鹿いわないでよねえ。愚かな人間がいやらしいことを考えてるときは、においでわかるの!」
美しい顔で圧を掛ける蛇にたじたじしながら、レオは後ずさる。怒りのままに身体を揺らしたせいか、さらしがほどけて、薄桃の突起があらわになった。
いますぐにでも押し倒したい衝動に駆られたが、悲しいことに利き腕を自由に動かせない。不格好な交尾になるのは男の自尊心が許せないので、レオは雪空にたたずむ地蔵のような顔で耐え抜いた。
「悪かったな、助平なにおいを漂わせちゃって。
……
おまえと交尾したら、すぐにでも治るような気がしたんだよ」
「ばっ
……
馬っ鹿じゃないのぉ? 人間って、ほんっとに交尾のことしか考えてないんだから! チョ~うざぁい!」
「おいおい。この世の人間すべてが、色ぼけだと思うなよ
……
。
……
まぁ、今のおれだと恰好つかないしな。まずは、回復に努めるよ」
ありがとうな、薬。
レオは爽やかに笑って、粉末に手を掛けた。しかし泉が唐突にかっさらっていったので、呆然としてしまう。
交尾したがってるのはセナも同じだと思ってたけど、まさか怒ってる? 助平なことばっかり考えてる人間に、「やっぱり、あげなぁい!」って気が変わっちゃったとか? ───レオの予想は外れることになる。奪った粉薬を水で流し込むと、泉はレオの腰にまたがって、口移しをしたのだ。
「んっ
……
」
薬草の苦みが口内を満たしているのに、それでいて甘い音がちゅくちゅくと鳴り響く。レオがごくりと喉を鳴らせば、泉はくちびるを離した。透明な糸が引いて、熱っぽい視線が絡み合う。
「交尾したら、すぐにでも治るって言ったのは
……
あんたでしょ」
「え!? いや、おまえの気持ちは嬉しいけど、今のおれじゃ恰好がつかんから
……
」
「俺が、してあげるって言ってるの」
着物をずり上げて、弾力のある太腿を露出させる。さらしをほどいて、つんと主張する乳首をレオに押し付けた。
「それとも、何?
……
したく、ないわけ?」
布越しの尻たぶが股間の熱に引っ掛かって、レオは眉を歪める。
魅力的な蛇に誘われて、鉄の理性を貫き通す男がいるのだとしたら教えてほしい。細い腰に手を添えて、レオは熱っぽく尋ねた。
「
……
おれの看病、してくれるのか?」
「あっ
……
駄目。今晩は、俺がするの」
膨らむ胸に吸い付けば、しおらしくなった泉がレオの布をくつろげる。
やっぱり最高の嫁さんだ
……
。
下半身の昂ぶりを健気にしごく泉を見下ろしながら、レオは満足げに身を任せるのだった。
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