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とはり
2025-04-27 22:55:12
3323文字
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いろいろ
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少年失踪事件【La Mort】
半死神の少年が行方不明になる話
カウントダウンLa Mort画が良すぎてインスピレーション湧き出た結果リプツリーで連投した文章をまとめたもの
クマのぬいぐるみに手を引かれる少年が見たくて見たくて……
以下、読了後閲覧推奨
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
墓守は妖精と表現しましたが、もしかしたらイタズラ好きな下級の悪魔(デーモン、妖魔)だったりするかもしれません(こあ"くま"のぬいぐるみ……なーんて)
死神にすれば妖精も妖魔も取るに足らない存在で区別するまでもないのかもしれないとかなんとか
少年はこの後一週間分の疲労が一気に押し寄せてきて、再び意識を失い三日三晩眠り続けたりするかも。(クマぬいの霊力?で無茶させられていただけなので……)
眠り続ける少年の横で祈るように看病を続ける断罪だけど、ようやく目を覚ました少年の第一声が「お腹空いた」だったらさすがにデコピン一発くらいはお見舞いするかも。
作業用BGMは『堕天使たちの晩餐会』
妖しげながらも軽快なリズムが心地よい 堕天使ちゃん達の悪戯な足音が聞こえてくるみたい
歌声も伸びがあって可愛い 時々囁くように歌うのがいたずらっ子ぽくて非常に愛らしく愛おしい
「ちょっと、どこに行くんだよ!」
『半死神の少年』が手を引かれて時折躓きそうになりながら教会内部を歩いている。少年は腰を大きく折り曲げた姿勢を強いられいて、歩く姿はひどく不安定だ。というのも、強引な力で少年の手を引くのは全長十五㎝ほどのぬいぐるみだった。白くて手触りのいい生地で型どられたそれはクマの形をしていた。布の皮膚はピンと張っていてその下にたっぷりとふかふかの綿が詰め込まれているのだろうと分かる。瞳には大きなボタンがあしらわれ、愛らしい見た目をしていた。
何故ぬいぐるみが動いているのか、それは少年にも分からない。教会の廊の壁にくたりともたれかかっていたそれに手を触れた瞬間にまるで命を宿したかのように動き出したのだ。驚く暇もなく少年は気づけばぬいぐるみに引っぱられ廊を進んでいた。不思議なことにぬいぐるみに掴まれた人差し指はびくともせず、振りほどくことができなかった。
クマのぬいぐるみは少年の声を気に留める様子もなくずんずんと教会の奥の方へと少年を連れていく。ぽふぽふと気の抜けた足音が非現実を演出しながら響く。
「わかった、ついていくから! この体勢は疲れるんだ。少し待ってくれ
……
!」
少年が懇願するとクマの足がぴたりと止まった。くるりと振り返るクマに小動物のような愛らしさを感じてしまってどこか憎めない。ため息を吐きながら少年はクマを両手で抱えあげた。
「よいしょ。俺がお前を抱えておくから道案内をしてくれよ」
少年の顔を見上げていたクマはその言葉を理解したかのように、再び前を向いて小さな腕を伸ばして前方を指した。
「はいはい、次はこっちな。まったく、俺をどこに連れていこうっていうんだ」
クマが指差す通りに角を曲がり、いくつもの部屋を経由して進んでいく。
コツ、コツ。コツ
……
コツ
……
。コッ
……
────。
教会内に反響していた少年の靴音が突如途切れる。それ以降、廊には少年の声も足音すら響くことなく、まるで誰もいなかったかのように静寂だけが満ちていた。
その日を境に少年は雪の町から忽然と姿を消した。
最初に気づいたのは『断罪の死神』だ。あくる日、待てど暮らせど少年は教会に姿を現さなかった。毎日来ると言っていたのに、あの言葉は嘘だったのか。最初はわずかな落胆と共にそう思うだけだった。けれど、翌日もまた次の日も少年が教会の扉を開くことはなかった。しびれを切らした断罪は少年の所在を確認するために町へ出た。少年が町から教会に出て来られない事情があったのかもしれないと、迎えに行けば少し驚いた顔で「こんにちは、ハーデイ。こんなところでどうしたんだ?」なんて声をかけてくるだろうと、そう楽観的に考えていた。
けれど、いくら探せど町に少年の姿はなく、断罪は少年の消息が数日前から途絶えていることを知る。ターゲットの行方が分からなくなったとなれば緊急事態だ。すぐに教会に派遣された死神たち総出で町をくまなく捜索した。しかし、少年の姿どころか詳細な足取りすら掴めない。町で最後に少年が目撃されたのが教会に向かう姿で、どうやらその日から少年は町に帰ってきていないらしいというのが辛うじて得られた情報だった。
得られた情報と記憶とを照らし合わせた断罪は、少年の姿が消えたとされる日に自身が少年と顔を合わせていたことを思い出す。日課の祈祷を済ませた少年は断罪といくらか言葉を交わした後、教会の奥へと続く扉をくぐっていった。確かに、それから少年が教会を出た姿は見かけていないが、教会内から気配は消えており、てっきり町へ帰ったものだと思っていた。あの日から町へ帰っていないとなれば、少年はあれからずっと教会内に留まっていることになる。にわかには信じがたかったが、そもそも教会内は捜索範囲の選択肢から除外していた。可能性はゼロではない。
そうして、捜索範囲を教会内に絞るが、四人で探せばそれほど広くないはずの教会を隅から隅まで探しても少年は見つからなかった。
途方に暮れつつも捜索を続けていたある日、「あ」と『墓守の死神』が声をこぼした。墓守の視線の先には床の上でもがく、なめらかな曲線で縁取られた十五㎝ほどの白い塊。墓守の声に動きをぴたりと止めたそれはクマの形に見えた。
墓守とボタンの瞳とが見つめ合って一瞬時が止まる。墓守が一歩踏み出すとクマのぬいぐるみはまた一層激しく手足をバタつかせた。まるで危機を感じて逃げ出そうとしているかのようだ。しかし、その体は床にくっついているかのごとくその場から動かない。
「ああ。糸が引っ掛かっているね」
暴れるそれの傍に屈んで注意深く観察していた墓守が何かに気づいたように呟き、ぬいぐるみの右足の輪郭を優しく撫でると、つんのめるようにふかふかの体が前に転がった。墓守が触れたぬいぐるみの縁は糸がほつれて飛び出している。
「おや。君が引っ掛かっていたところに僅かな段差があるね。これはもしかして、隠し部屋?」
墓守が段差の隙間に指をかけて持ち上げると床が剥がれた。と言うよりは床が蓋のように持ち上がった。
「これは
……
」
墓守が目の前に現れた穴の中を覗き込むのと、断罪がその場に到着したのはほぼ同時だった。
「『墓守の死神』、そこで何を
……
。こんなところに地下へ続く穴なんてあったか?」
「秘密の扉、だね。そこにいる妖精達が作り出したものかもしれない」
「妖精
……
?」
墓守が視線で示す先にいた白いそれに断罪は目を見開いた。クマの形のそれは両手で懸命に墓守の手を引き、まるで穴から遠ざけようとしているようで明確な意思を感じた。
「なんだ、それは
……
」
「なんだろうね。けれどお目当ての彼は見つかったみたい」
足元に目線を移した墓守の言葉にハッとした断罪は飛び込まん勢いで穴の中を覗く。
「し、少年
……
!」
桜色の髪を持つ少年はそこにいた。淡く発光する大量の白いクマのぬいぐるみに埋もれ、まるで暖かな羽毛布団に包まれているかのような安らかな表情で目を閉じている。雪の上に散る花びらのように少年は横たわっていた。
その光景に断罪の背筋が凍る。穴から漏れるおぼろげな青白い光の中では少年が眠っているだけなのかそれとも息絶えているのか、はっきりと分からない。感じたことのない焦りに指先が震えた。
「少年!」
断罪の叫ぶ声が穴の中で反響してビリビリと空気を震わせる。切実な声が届いたのか、少年の瞼がぴくりと震えてゆっくりと持ち上がった。
「ん、眩し
……
。誰?」
少年は外界から射し込む光に眉をしかめ、瞬きを繰り返す。ライラック色の瞳は微睡むようにどこか虚ろだ。
「私だ、少年!」
「その声、もしかしてハーデイ? あぁ、俺、出られたのか」
おはよう、と少年はまるで朝を迎えた時のように大きく伸びをして、欠伸をこぼしている。ターゲットの存命に安堵すると同時に、最後に見かけた時と何ら変わらない少年の姿に断罪はうすら寒ささえ覚えた。
「何を呑気なことを言っている
……
っ、もうとっくに夜だ! それに君は一週間も姿を消していたんだぞ」
「え、いっしゅう、かん
……
?」
少年が姿を見せなくなってから既に一週間が経過していた。その間、ぬいぐるみだけが敷き詰められた空間にいたらしい少年には食物や水分を摂取した形跡がない。なのに彼は少しも痩せた様子も憔悴した様子もない。異常としか思えなかった。
「そんなに、経ってるなんて
……
」
不気味な現状に少年もようやく気づいたようで、動揺から激しく目を泳がせている。
「だって、この子たちが遊んでくれるまで帰さない、なんて言うから。少し付き合ってただけだったんだ」
手近にあったぬいぐるみを手繰り寄せて両腕で抱きかかえる。腕の中のそれは少年の手にもたれかかってだらりと項垂れている。さっきまで活き活きと動いていた小さな白い塊は魂を抜かれたようにすっかりと生気を失っていた。
「ぬいぐるみが動くなんて不思議だったけど、嫌な気持ちじゃなかったんだ。一体
……
なんだったんだろう」
少年が落とした声は、手中の綿の塊に吸い込まれていった。
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