三崎
2025-04-27 21:40:29
7647文字
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果てない宇宙、きみを探して

ラス6♂本「ふたりの境界線」の火√話「燃え尽きた惑星で」の後日談です。
ルビコンを出た二人のその後。
ラスティwebオンリー合わせの書き下ろしです。

 ルビコンを出た私たちは、約束通り、宇宙をあちこち廻って過ごした。気に入った惑星があれば家を借りてしばらく暮らしてみたり、金が必要になれば、私たちの長年の相棒である彼女――フルコースに乗って、いくつかの依頼をこなしたり。
 旧型の強化人間の大半は死んでしまって、戦友を診てくれる医者が残っているのかどうか、それだけが気がかりだった。しかし奇特な人間はいるもので、それは思いの外早く見つかった。研究半分、慈善事業半分といった様子だったが、珍しい生きた旧型の強化人間を扱えるとのことで、その医者は彼を丁寧に調整し診察し、古くなった体内パーツの交換も含め、〝普通〟の人間として生きていくのに困らない体にしてくれた。もちろん、相応の対価を支払うことになった訳だが。
 私と戦友の宇宙共通通貨を貯めていた口座は、奇跡的に凍結されずに残されていた。ロックもされず、誰かに奪われることもなく。誰かの手が入っていなければ、こうはならない。私の頭の中には、かつてアーキバスでそれなりに交流のあった男の顔が過ぎったが、真実はわからない。彼から私へコンタクトを取ることは出来ても、私が彼を探し出すのは不可能に近いことだ。アーキバス特殊情報局長官の肩書は伊達ではない。相応の能力があってこそ、彼はその立場にいたのだから。だがもし、どこかで巡り合うことがあれば、すっとぼけられてしまうかも知れないけれど、感謝を伝えなければならない。それはさておき、これが彼のささやかな好意だとするならば、受け取るのが礼儀というものだろう。私はそう解釈して、すっかり顔色の良くなった戦友と、自由気ままな旅に出ることにした。
 数々の惑星を巡り、たくさんの景色を見た。視界いっぱいに広がる、命を湛えた青い海。遥か彼方まで雄々しく立ち並ぶ山々。命に溢れた風景は、悲しくなるくらいに美しい。知らない風景、知らない文化。そして、その中で生きる、無数の人々。似ても似つかない惑星でも、どうしてもルビコンを思い出してしまうのは、きっと仕方のないことだ。失った故郷、失った人々。どんなに美しく楽しい場所に行っても、彼もまた、どこか遠く――誰も気にも留めなくなった惑星――ルビコンを見つめたままだったように思う。
 それでも、私たちは努めて明るく、この旅を楽しもうとした。実際、楽しくない訳ではなかった。ふとした瞬間に後悔や後ろめたさが襲ってくるだけで。
 そんな生活を続けて十五年ほど経った頃。少しばかり金が貯まった私たちは、しばらくどこかで腰を落ち着けることにした。そして私たちが選んだのは、今の宇宙には珍しく、多くの自然が残った不便な惑星だった。風景が少しルビコンに似ていたから、お互い心に引っかかるものがあったのだろう。この惑星なら、もしかしたらあったかも知れない、ルビコンでの豊かな未来に近い日々を送れるのではないか、と。
 定住しようと決めた理由はもう一つある。ルビコンが燃えたあの日――それがレイヴンの火と呼ばれていると知ったのは、私たちがルビコンを経ってからのことだった――から二十年以上の年月が経ち、私も相応に歳を取ったからだ。
 六十近くになり、髪に白いものが混じり始め、皺が目立つようになってきた私と違い、戦友は出会った頃と変わらないままの若さを保っていた。戦友を診た医者が言うことには、戦友の体は老いることが無くなってしまったのだという。旧型の強化人間にはよくある副作用らしいが、強化人間の使われ方の問題で、それが表面化することは少ないそうだ。確かに、彼らの命は軽く、使い捨ての道具のように扱われていたことは知っている。
 つまり、このまま暮らしていれば、確実に私は戦友を置いて逝くことになるということだ。となれば、いつか来る別れの日のために、私にはしなければならないことがあった。生活能力というものに乏しい彼に、人並みの生活ができるように手ほどきをすることだ。まだ時間があるうちに、私の体が動くうちに、彼を一人でも生きていけるように鍛えなければならない。私がいなくても、彼が自分で自身の手綱を握り、前を向いて生きていけるように。
 炊事・洗濯・掃除、そういった身の回りのあれこれ、金銭管理、人付き合い。生きている限りついて回るありとあらゆることを、私は彼にご近所さんを巻き込みながら教えていった。
 私たちが住むことに決めたのは本当に小さな古めかしい町だった。住民たちはそれぞれ庭の家庭菜園で作物を育て、余った野菜はお裾分けしあう、そんな牧歌的な町。少し足を伸ばせば生活に必要な施設はなんでもあったし、暮らすのには困らない。
 そんな中によそ者がいきなり転がり込んで来たのだから、警戒されるのも無理はない。そう思ったが、元々、そういう暮らしがしてみたくて集まった人たちばかりらしく、私たちも自然に受け入れられた。
 私たちの事情もそれとなく話してある。強化人間だったが、普通の暮らしがしたくてここにやって来たこと、彼が老いない体であること。もちろん、彼がルビコンを燃やした張本人であるとか、そういったことは伏せて、だが。
 彼らはみんな親切で、私にも、彼にも、良くしてくれた。私は事あるごとに、誰もがこんなに親切という訳じゃない、と彼に言い含めておかなければいけないくらいに。
 家事や作物の世話をして、町の人々と世間話をして――そうして過ごす時間はあっという間に過ぎていった。〝普通〟の暮らしというものは、穏やかで、ある意味では退屈で、しかし、流れる時はあまりに早い。
 初老と言って良い年齢だった私は、いつしか老人になり、少しずつ体は動かなくなっていった。彼は三十代前半の見た目のまま、何も変わらない。
 土いじりをする戦友を窓から眺め、調子の良い時は水やりや収穫を手伝う、そんな日々。彼はすっかり一人前の住人になり、一通りの家事は問題なくこなせるし、作物の世話も上手くなった。何より、畑仕事をする彼は実に楽しそうだった。元々、こういったことが好きな性分だったのかも知れない。春には丁寧に苗を育てて畑を作り、夏から秋にかけては、朝早くに起きて採れたてつやつやの茄子やらトマトやらを抱えて家に戻り、瑞々しいそれらを調理して私に食べさせてくれた。冬には備蓄していた作物で暖かいスープを作り、静かで長い雪の夜には、甘くしたフィーカを飲みながら、とつとつと思い出話をした。そんな優しい季節を何度繰り返しただろう。
「すっかりおじいさんになってしまったな」
 夜、ベッドの上で何の気無しに私はそう呟いた。聞かれていてもいなくても構わないつもりの言葉だったけれど、隣で横になっていた彼は体を起こし、私の頬を撫でながら、ふっと微笑んだ。
「歳を取っても、きみは、格好良いままだな」
 彼の、そういうところが好きだった。思うように体が動かず、今や戦友の手助けが無ければ生きていけないくらいに衰えてしまった。それでも彼は、私を格好良いと言ってくれる。
 私が死ぬその間際まで、そう思っていてくれたら良い。その願いを叶えるために、私ももうしばらくの間、格好をつける必要があった。


   ※※※


 ラスティが亡くなって、三ヶ月。彼の望みを叶えるために、私は一人、廃星となったルビコンへと向かった。誰もいない、誰も訪れない、寂しい惑星。死んだ後、遺骨はルビコンに埋葬して欲しい――ラスティはそう私に頼んでいたからだ。
 あちこち旅をして生きてきた期間が長かったし、死んで墓に入るという発想は、私にはあまり無かった。しかしラスティは、墓なんて上等なものでなくてもいい、ただ、死んだら、ルビコンの大地に還りたい、と、そう言ったのだ。私には故郷の記憶はない。しかし、人というのは故郷へ帰りたいと願うものだというのは知っている。ラスティもそうだったのだ。故郷に――私が燃やし尽くし、二人で十年間彷徨った、あの惑星と共にありたい、と。きみがそう願うなら、私はそれを叶えるだけだ。そう応えると、ラスティは頼んだよ、と言って、昔から変わらない、格好良い笑顔を私に向けた。
 そんな話をして二ヶ月後ばかりたった頃。少しずつ冬の匂いが濃くなってきた、肌寒い秋の朝のことだった。私の隣で眠っていたはずのラスティは、私の手を握ったまま、穏やかな顔で亡くなっていた。眠っているだけのように見えるのに、二度と目覚めない眠り。前日の夜に、いつものようにおやすみを交わして、それが最期の会話になった。何か病んでいた訳では無く、ただ老いて、安らかに死んだのだと医者は言う。有無を言わせぬままに、ラスティは逝った。突然の別れだった。
 そうなるとわかっていたら、もっと何か出来たはずだった。喋ることが出来なくても、その時が来るまで、きみに思い出話を聞かせることだって出来た。私がきみにどれだけ感謝しているか、伝えることだって。けれど、そんな時間を作らせなかったのが、むしろきみらしい気もして、私は泣いた。どうしようもなく悔しくて、悲しかった。
 町の人たちは親切で、葬儀に必要なあれこれを手伝ってくれ、あれよあれよという間にラスティは両手で抱えられるくらいの木箱の中に収まった。彼の中にあった強化人間用の脳内デバイスと共に。
 ここ二十年ばかり、私たちはACには乗らないまま過ごしてきた。この辺境惑星では強化人間が乗るようなACでの争いとは無縁だったし、今の暮らしは穏やかで、血生臭い戦いのことなんて、遠い昔のように思えていた。けれど、焼け焦げた脳内デバイスを見ていると、ラスティも私も強化人間で、ACに乗るために生み出された存在――そう突きつけられたような気がして、胸が苦しくなる。忘れた訳でも、後悔が消えた訳でもない。ただ、ラスティの願いを叶えるためだけでなく、もう一度、ルビコンを訪れなければ、と、そう思った。


 廃星となった惑星へ向かう便なんてあるはずもなく、私は小さな輸送艦を借りて、ルビコンへと向かった。行き先を告げると、貸主はなんでまた、と明らかに怪訝な表情をした。興味本位だと言うと、変わり者もいるもんだ、と呆れられ、それでも払うものを払ってくれれば構わないと、快く輸送艦を貸してくれた。あの惑星が廃星になったのなんて、あんたの生まれる前の出来事だろうに、なんて言いながら。見た目だけはあの頃と変わらないから、そう思われるのも無理は無かった。
 自動操縦モードでの宇宙の旅。私はラスティが入った木箱を抱えながら、ぼうっと暗い宇宙を眺めていた。どこまでも広い宇宙では、いつだってどこかで誰かが争い合っている。私たちは争いの中で使われるために生み出され、しかし、〝普通〟の人として生きることを望み、それを選んだ。選べない人々もいる中で、きっと贅沢な生き方をした。ラスティは幸せだったのだろうか。そうだと良い。でも、彼が最期に願ったのは、争いの末に壊れてしまった故郷で眠ることだった。ラスティは、本当に幸せだったのだろうか? 私の人生に付き合わせてしまっただけなのではないか? 答えの出ない疑問が、頭の中でぐるぐる回る。そうしているうちに、輸送艦はルビコンに到着した。
 惑星を包んでいた炎はすっかり落ち着いて、ただ荒れ果てた地表が残るのみ。着陸出来そうな平地に輸送艦を停めて、彼女――ACフルコースに乗り込み、私はルビコンへと降り立った。彼女にとっても、久しぶりの帰郷だ。
 どこがいいだろう。十年過ごしたルビコンだが、観光めいた時間ではなかった。ラスティにとって思い入れのある場所が良いと思ったが、そんな場所に心当たりはない。彼がルビコンのどこで生まれ育ったのかさえ、私は知らなかった。彼が話さなかったから? いや、ルビコン中を回ったのだから、故郷が近くなれば、きっとそれらしい素振りを見せていたはずだ。私にそれを察することが出来なかっただけ。仕方なく、見晴らしの良さそうな高台に彼を埋めることにした。辛うじて雑草が茂り、朽ちかけた木々が立つ高台。遠くにバスキュラープラントの跡地が見える。炎は収まり、ただ、暗い闇が広がっているだけの場所。この上空、境界線カーマンラインの上で、私たちは……
 私はラスティが入った木箱を抱え、ACフルコースのハッチを開けて外に出た。コーラル汚染への耐性がある私なら、生身でも問題はない。さく、さく、枯れ草が乾いた音を立てる。頬を撫でる風はぬるく、あの刺すような寒さは無くなっていた。
 持ってきた頼りないシャベルで穴を掘った。不毛の大地となったルビコンでは、大地は風に吹かれて容易に削れ、形を変えてしまう。だから、なるべく深く穴を掘った。ラスティが体を鍛えた方がいいと言ってから、私は随分逞しくなった。畑仕事も得意になったし、一時間ばかり穴を掘り続けるのに、何の問題もなかった。
 黒い土が覗く深い穴に、抱えられる程度の大きさの箱の中身を――ラスティを、一つずつ置いていく。肋、大腿骨、上腕骨……そして、綺麗に残った頭蓋骨をそっと両手で抱え、大事に、穴の中に置いた。
「もう、私と一緒にいてくれないんだな、きみは」
 きみと、ずっと一緒にいたかったのに。そう口にすると、ぽたりぽたりと涙が溢れた。乾いた骨の上に、涙がじわりと滲みていく。遺骨はルビコンに埋めて欲しいと、最後はルビコンで眠りたいときみが言った時、私がどれだけ悲しかったか、きみは知らないだろう。ずっと一緒にいてくれたのだから、これからも、死んでからだって、私といてくれると思っていた。けれど、きみは最後の最後で私の手を離した。きみの最後の願いだからと、私は悲しさを押し殺して、きみが望むなら叶えようと、そう答えたのだ。本当はわかっている。私が一人でも生きていけるようにと、ラスティは私にあれこれを叩き込んだ。だからきっと、死んでしまった自分には縛られず――自由に空を舞う烏のように生きて欲しいと、そう思っての願いだということくらいは。でも、私は――
「私は、きみと違って……格好良くも、強くもないから」
 これくらいは、許して欲しい。木箱の底に残された、きみと共にあったもの。焼け焦げた脳内デバイスだけは、私に持って行かせて欲しい。私が頼まれたのは、きみの遺骨だけだ。だから、せめて、これだけは。
 小さなデバイスをポケットに仕舞って、私は震える手で骨の上に土を被せていった。掘るのは時間がかかっても、埋めるのは一瞬のこと。あっという間に白い骨は見えなくなり、きみは、ルビコンの大地の中に消えていった。
 死んだ人はいつかどこかで生まれ変わると、そう信じる人たちもいる。記憶がなければそんなこと確かめようもないし、そう思うことで自分を慰めているだけだと、きみはそう言って寂しそうに笑っていた。けれど、もしそれが本当なら――。老いることのない私には、途方もない時間がある。きみが生まれ変わるのを待つ時間も、生まれ変わったきみを探し出す時間も。一人ぼっちは寂しいけれど、きみを探すという目的があれば、きっと、まだ羽ばたいていける。
……さよなら、ラスティ。またいつか、会おう」
 ぬるい風が、ぶわりと砂埃を捲き上げる。また出会える日まで、どうか、安らかに。そう祈って、私は再びACフルコースに乗って、ルビコンを発った。


 ルビコンから戻った私は、ラスティとの思い出が詰まった家を引き払い、宇宙中を飛び回る生活を始めた。町の人たちは寂しがってくれたが、もう一度ラスティに会うには、定住していてはいけない。彼の脳内デバイスをお守り代わりに握りしめ、私はもう一度独立傭兵として仕事を始めた。登録名は――ラスティ。彼の名を借りて、もう一度、私は戦場に身を投じた。手綱を握ってくれる人はもういない。一人きりの戦いは寂しかったが、私が一人で生きていけることが、そのままラスティの生きた証にもなる。そう信じて、飛び続けた。
 十年、五十年、百年。それだけの年月を重ねても、人々は争いを止められない。繰り返される戦火の中で、数え切れない人間を見送ってきた。殺したことも、助けたことも。けれど、まだラスティには出会えないままだ。
 百年を過ぎても、私の見た目は変わらない。依頼はすべてテキストメッセージでのみやり取りをし、現場に出ても一言も喋らずにいたから、すっかり有名になった独立傭兵ラスティの噂は様々だった。何人かの人間がその名を継いでいるとか、その正体は人間ではなく高性能AIだとか。まさか、二百年近く前の旧型の強化人間が乗っているとは、誰も思わないだろう。今までも、これからも。
 ――そしてまた、百年の時が過ぎた。
 それは、ある辺境惑星での出来事だった。企業からの侵略を受けていた現地の人々に加勢し、企業を追い払ってから数年。幾分落ち着きを取り戻した町の片隅で、私は〝彼〟に出会った。
 濃い藍色の髪。赤錆色の瞳。十歳かそこらの少年が、孤児院らしい建物の影から私を見つめていた。心臓がばくばく鳴る。ぶわりと汗が噴き出した。まさか。そんな。こんなところにいたなんて。私はゆっくりと彼に近づいて片膝をつくと、努めて優しく、彼に話しかけた。
……私に、何か用かな」
「あ……あの、えっと……
 彼はうまく答えられずにもじもじしている。幼い頃のラスティにも、こんな時があったのだろうか。私はくすりと笑って、彼の言葉を待った。彼はじっと私の顔を見つめると、おずおずと私に尋ねた。
……おにいちゃん、ぼくと会ったこと、ある?」
……!」
 彼のその問いに、私の目がじんと熱くなる。ああ、やはり、彼は――
 急に泣き出した私を心配して、彼が驚いた顔になる。ラスティとルビコンで別れて以来の、二百年ぶりの涙が溢れ出した。やっと、やっと会えた。心を無くしてしまいそうなくらい、途方もなく長い時間だった。何度も諦めそうになって、それでも飛び続けて、やっとたどり着いた。きみのもとに。
「どうしたの? どこか、痛いの?」
「いや、違うんだ、ただ……
 もう一度、きみに会えたのが、嬉しかった。その言葉を飲み込んで、私は涙を拭った。せっかくきみを見つけたのに、きっと、泣いていちゃいけない。
「ごめん、なんでもないんだ。きみと会ったこともない。ただ、私の知っている人によく似ていたから……
 私がそう言うと、彼は不思議そうな顔で私を見た。
「そう、なんだ……。でも、ぼく、おにいちゃんのこと、知ってる気がする」
 私にそう話した彼の目は、ラスティそっくりの、真っ直ぐな瞳。きみは、子どもの頃から格好良かったんだな。
 私は、すう、と息を吸って、彼に尋ねた。
「そうか……。私は……ラスティ。きみの名前を聞いてもいいかな?」
「ぼく? ぼくはね――


おしまい