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kaede
2025-04-27 14:51:15
2176文字
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一彩くんと一緒に寝てた燐音くんの明け方のはなし
燐一
⚠️普通に一緒に寝てるだけです
間違えた。
「
……
誰と?」
「あ?」
眠さに任せて閉じた目を、ふたたび開く。
……
ああ、そうか。あれは、夢じゃなかったのか。だとしたら。
だとしたら、まずいことになった。
……
寝たふりをしてごまかすか。
とは思ったものの、ぎりぎり焦点が合う距離にある弟を、どこか寂しげな顔をして俺を見つめている一彩に気づいてしまったら、正直もう眠気側につくことなんてできなかった。無体な。俺はもう少し眠りたかったのに。眠気が勝ってりゃよかったのに。そうすりゃ罪悪感が生まれる間もなくさっさと意識を閉じられたのに。
俺の意識がはっきりと弟を捉えてしまった以上、今さら寝たふりをするのも無理があるし、放っておけるわけもない。
誰と?
誰?
何のことを言ってるんだ? 一彩は。
誰?
……
間違えた。
間違えた
……
ああそうか。俺が、誰と一彩を間違えたのか、ってことか。
いや、相手は間違っちゃいなかったンだよ。
ただ。
「寝ぼけてた」
「寝ぼけてた?」
「そ。だから、間違えた、って思った
……
いや、お前がそう訊いたってことは、口に出してたのか」
その辺については正直、曖昧だ。覚束ない意識なんて、夢の中にいるのとほぼ変わらない。一彩が言語として認識しているのだから、実際口に出して言った、と判断するのが妥当だろう、というだけの話で。確かなことなんて俺にはわからない。確信は持てない。
一彩は俺の反応を窺うように
……
いや、与えられた情報から推測しているのか。
「
……
つまり兄さんは、夢の中の相手と僕を間違えた、ということ?」
そう言って、今度こそ、俺の反応を窺う。
ふわふわの癖っ毛についた寝癖がひょこひょこ揺れて、かわいい。
かわいいなぁ。
なァ、こんな話どうでもいいから、お兄ちゃんともう少し、寝ようぜ。こんなこと、故郷ではほとんどできなかったんだから。一緒に寝るなんてこと、ほとんど。
たまに何やかやと理由をつけてそういう機会をつくっても、俺にはやらなきゃいけないことが山ほどあったから。夜の弟のぬくもりは独り占めできても、朝の弟の寝顔を眺めながら、時間も気にせずだらだら過ごすなんてこと、一切許されなかった。
でも今は、タイミングさえ合えばそれができちまうんだからよ。
そろそろ朝飯でも食うかァ、って気になるまで、二人で惰眠をむさぼろうぜ。
そんな顔しなくても、お前が不安に思うような事実なんて何一つないんだからよ。
不安?
不安なのか?
どうして。
「あー
……
間違えたっつーか
……
」
夢うつつではあったが、夢を見ていたわけじゃない。
あるだろう。誰に起こされるでもなくふと目を覚ます瞬間ってのが。目を覚ましたんだよ、俺も。そしたらお前が俺を見つめてて、その表情が、なんて言うんだ。なんて言うか、ああ俺は許されてるんだなぁ、って思って、愛しくて、夢だ、とはっきり思ったわけじゃないが、覚束ない意識なんて、夢の中にいるのとほぼ変わらないだろ。
だから、その。
夢ならいいと思ったわけじゃない。
夢だとしてもそれはするべきではなかった。
なのに、つい、してしまった。
だから、間違えた。
「嫌だったよな。ごめんな」
そろりと手を伸ばして、一彩の髪の先に触れる。反応を窺う。
一彩が嫌がることはしたくない。
一彩は特に俺を避けることはなくて、わかってはいたが、わかっていても、やっぱり、嬉しい。
ふわふわ。ふわふわ。
髪を、頭を撫でると、一彩の表情が少し、溶ける。
「嫌ではないよ。ただ、誰と間違えられたのか気になっただけで」
頬を撫でると、とろける。
そんな顔するなよ。
勘違いするだろ。
「そっちじゃなくて
……
いやそっちもそうなのか。ごめんな」
「そっちも?」
「つーか、なんでそんなに気にしてンだ?」
「なんで、と言われても。気になるから、としか答えようがないよ」
「俺がお前と誰を間違えてキスしたのか、が?」
「ウム
……
」
しまった。
なんかいい感じにうやむやにしようとしてたはずなのに。
まだ寝ぼけているから、言わなくてもいいことを、つい、言ってしまった。
これじゃもう、ごまかしようがない。
いや、でもよ、少し、期待しちまったンだよ。
キスされたことは嫌じゃない。
誰かと間違えられたのが嫌だ。
そんなことを言われたら、誰だってそうだろ。
それってつまり、俺がお前にキスをした、を事実として求めている、ってことだろ。
俺はそれを事実にしていい、ってことだろ。
なァ、ひいろ。
「
……
兄さん?」
「んー?」
「おねむなのかな」
「んー
……
いまなんじ」
「ええと
……
五時半を過ぎたところだよ」
「ンだよ、じゃあまだねれるじゃん
……
もうちょい
……
」
身を寄せてきた一彩を抱きしめると、弟が、一彩が、くすぐったそうに笑って、俺は、幸せだな、と思った。
あいしてる。
「
……
ウム。おやすみ、兄さん」
星のささやきみたいにちかちかまたたく一彩のきれいな声がする。
返事をしようとしたくちびるにふわりと何か、やわらかなものがぶつかった気がしたけど、たぶん夢だろう。
だれかなんていない。
おまえだけだよ、ひいろ。あいしてる。
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