Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
らい
2025-04-27 08:30:00
8254文字
Public
レオいず
レオいず30days㉗「プ〇ティ5♡12話『エゴイスト登場!小悪魔ペットにご用心♡』」
パラレル・パロディ編⑦ お題「ニ〇アサ」
※エゴイスト×インテリジェンス
※プリ〇ィ5の嵐ちゃんVS悪の組織のニチ〇サパロディ
「キラッキラのエッセンスをダークなエナジーで汚すなんて、許さない! 退かず! 媚びず! 顧みず! 世界中にあふれるプリティ達は、アタシたちが絶対守る! 本日も可愛く♡プリティ☆ミッション、スタートよ!」
シ〜〜〜ン
……
。
プリティ5の決めポーズも虚しく、木枯らしが吹き荒ぶ。愛の戦士プリティ5のリーダーである嵐は、漆黒の闇に包まれた公園で「ぜ〜んぜんっ、プリティじゃなぁ〜い!」と叫んだ。
なぜならプリティ5の本業は勉強、部活、アルバイトに忙しい青春真っ盛りの高校生。日和は修学旅行in海外、桃李は姫宮家の跡取りとして稽古事、みかは居候先の生活費を稼ぐためにアルバイト、藍良はテストの赤点で居残り補修───高校生の世界は、学校生活がすべて。たとえ敵が襲来したとしても、そう簡単に駆けつけるわけにはいかないのだ。
大親友のみかは「店長にかけあってみる〜! 待ってて、なるちゃん!」と連絡してくれたけれど、それ以降の音沙汰はなし。当面はひとり寂しくバトルに挑むことになりそうで、嵐はぐすんとハンカチで涙を拭うのだった。
「いつものお友達はどうしたのかなあ〜? ひとりぼっちの、な〜るくん♪」
宙に浮いた状態で足を組み、意地悪に笑っているのは───悪の組織インテリジェンス、『美しき確信』こと泉である。ルーブル美術館に飾られた名画みたいに綺麗な顔をしているくせに、とんでもなく口が悪い。プリティ5を執拗にいびっては、キュートな正義の邪魔をするのだ。
嵐はびしっと指を差して、嫌味たっぷりの泉に物申す。孤独に戦う愛の戦士をあざ笑うなんて、許せない。
「うるっさいわね! 皆それぞれのプリティで大忙しなのよっ! 海外の日和ちゃんは物理的に難しいしっ、桃李ちゃんと藍良ちゃんはお勉強で大変なんだからっ! みかちゃんだって、遅刻してるだけですぅ〜!」
「事情はどうあれ、なるくんを助けてくれるお友達は一人もいないわけでしょ~? それって、チョ〜かわいそぉ♪」
「失礼しちゃう! っていうか、泉ちゃんだっていっつも一人じゃない! アタシしかお喋り相手がいなくって、お気の毒ですこと!」
「ぐぅっ
……
なるくんのくせに、生意気ぃ!」
どうやら図星のようである。悔しそうに唇を噛みしめる泉に「お~っほっほっほ!」と女王の高笑いを披露すると、泉はふんと鼻で笑った。余裕たっぷりに足を組み直して、嵐を見下ろしている。
アレ? アタシの挑発に乗ってこないなんて、明日は雨でも降るのかしら
……
。
嵐が立ち尽くしていると、泉は胸元からキセルを取り出した。
「ふん。調子に乗っていられるのも、今のうちだよぉ♪」
「なんですって!?」
「ひとりぼっちで寂しがってるなるくんのために、今日は俺のペットを特別に紹介してあげる。
……
出でよっ、悠々エゴイスト!」
愛しの恋人に唇を捧げるかのように、泉はキセルにくちづけた。甘いキスに誘われて、ふかし部分から黄昏色の煙がにゅるりと這い出る。もくもくと浮かぶそれは人影に変化し───水色のツノに、メロンカラーのジャケット。音符のチョーカーをぽろんと鳴らして、愛らしい八重歯の男の子が飛び出した。
「呼ばれて飛びでて、じゃじゃじゃ~ん! 大人の体験をとくと見よっ、魔界の底から大天才☆月永レオさまの登場だ~っ!」
「へ?」
レオと名乗る少年は、ビビットピンクのハーフパンツから膝小僧をのぞかせて、「えっへん!」と得意げにのけぞっている。てっきり番犬ケルベロスだとか暗黒のドラゴンだとか、日和の後輩が好きそうな『男の子の夢』を想像していた嵐には、拍子抜けである。
アラアラアラ、と瞳を輝かせながら、嵐は食い気味にレオを見やった。
「あらやだ、プリティな男の子じゃないの。まさか本当にペットを紹介してくれるカンジ?」
「ふふ
……
。こいつ小動物っぽいけど、可愛い顔に騙されちゃダメ。俺の命令には忠実で、徹底的に容赦ないんだから♪」
「セナ~。おれの好きに奏でてもいい? いちっ、にっ、さんっ、しっ!」
屈伸運動をしながら、レオが振り返る。泉はキセルに頬ずりして、妖艶に微笑んだ。
「もちろん。俺を一番にするために、頑張って働いてね。れおくん♪」
「うん、わかった! それじゃあ───」
おまえをギッチギチに引っ張って、五線譜の一本にしてやるよ。
レオは無邪気な瞳を深紅に輝かせながら、電光石火のごとく嵐の前に現れる。左の拳に宿ったオレンジの光が五線譜の触手となり、公園の地面に突き刺さった。真っ二つになった大地の割れ目から、砂埃がたちのぼる。嵐は間一髪のところで交わしたが、あと一歩遅れていたら串刺しになっていた。
この子
……
早い! ───攻撃がかすめた頬を手の甲で拭いながら、嵐は華麗に着地する。よいしょ、と触手を引っこ抜いて、レオは笑った。
「おお~っ、やるなおまえっ! サビに入る前に決着ついちゃうかも~、なんて想像してたけど、おまえとの戦いは愉快にリフレインできそうだ~!」
「何度も繰り返されてたまるもんですか! いつだって最後には、プリティが
……
勝つのよっ!」
愛の弓矢・フローラルアローを掲げながら、嵐はプリンシパルのごとく美しい跳躍でレオを迎え撃つ。するとレオは花開くように両手を開いた。またしてもオレンジの煌めきが光り輝き、黄金のシンバルが現れる。
「わははっ! ミュージック、スタート!」
ゴ~ン!
空間を切り裂くような地響きがほとばしる。生み出された円盤の波動は、まるでブーメランのように嵐を襲った。
次から次へと発射されるそれは、仰け反るだけで行動を消費されてしまう。嵐は「ちょっと待ちなさいよ~っ!」と抗議を入れるが、レオの旋律は止まらない。
「こんなリンボーダンスっ、ぜぇ~んぜんプリティじゃなぁ~い!」
「ふふん、驚いたでしょ? れおくんは、ありとあらゆる楽器のメロディーを使役して、自由自在に戦うの。オーケストラみたいに優雅に座って鑑賞なんて、絶対にさせないんだから♪」
嫉妬するほどに美しい足を組みながら、泉はリップを塗りはじめる。高みの見物なんてしちゃって、偉そうに。嵐はこめかみを引き攣らせて、文句を垂れた。
「この時期って乾燥するわよね、わかるわよ唇のケアは大切よ! だからって何よその態度っ、余裕ぶっちゃってさぁ~!」
「セナは、美の追求に余念がないもんな~。
……
だからって、よそ見してる場合じゃないぞ~?」
両手に持っていたシンバルが消滅し、今度はユーフォニウムが現れる。勢いよく息を吸ったレオが一斉に奏でると、先端の広がる穴から巨大な音符が現れた。それは隕石の束となって、逃げ惑う嵐に降り注ぐ。
「イヤイヤイヤ~っ! 立て続けに攻撃するなんて、卑怯よォ~!」
「わはは~っ! だ~るまさんが、こ~ろんだっ! だ~るまさんが
……
こ~ろんだっ!」
レオは自らの腕で視界を隠し、まぶたを見開くたびに楽器を変える。フルートの美しい音色で生み出した波状攻撃、カスタネットを叩くたびに発射されるエネルギー弾、ハープの旋律とともにしなる螺旋の鞭───エレキギターの鮮烈な雷矢が解き放たれたところで、嵐はステップを踏み外して地面に倒れ込んだ。
強い、強すぎる
……
! ───両肩を息をしながら、頭上を仰ぐ。エゴイストの名に恥じない雄々しい瞳を燃やして、レオが近づいてきた。無表情で見下ろす冷ややかなまなざしに、嵐は息を呑む。
「なるくん、どう? すっごく強いでしょ、俺のペット♪」
優雅に浮いていた泉が、嵐の前にすっと降り立った。嵐は眉を歪めながら、泉を睨みつける。
「何よ! 泉ちゃんはなぁ~んにもしてないくせに、偉そうにしないでちょうだい! ペットの力を借りないと戦えないご主人さまなんて、情けないったらありゃしない。ち~っとも美しくないわ! いくら顔が綺麗だからって、アタシはそんなビューティー
……
絶対に認めないわよ!」
「はあ~? 俺の美しさを否定する気ぃ!?」
「ふんだ。
……
なぁ~にがペットよ! わがままな飼い主の言うことホイホイ聞いちゃってさっ、
……
ええと、レオくんだっけ!? こんなに強いのに、ペット呼ばわりされて悔しくないの~!?」
完全に八つ当たりである。疲れ切った嵐は、がっくりと肩を落とした。完膚なきまでの敗北───こんなことなら、椚センセェをデートに誘っておけばよかったわ
……
。命短し恋せよ乙女、プリティ5鳴上嵐のキュートな物語は、これでおしまいだっていうの
……
!?
涙がぽろりと零れて、柔らかな土に滲んでいく。レオが「そうだっ、そうだっ!」と不満げに抗議した。
「はあ?」
嵐が声を上げるよりも先に、泉が困惑している。レオは「むむう!」と頬を膨らませると、膝をつく嵐をかばうようにして泉と向き合った。
「そうだっ、そうだっ! セナっ、おまえはおれをそうやって簡単にペットって呼ぶ! わんわん! にゃーにゃー! コケコッコー! おまえなりに愛してくれるのは嬉しいけどっ、最近おれの扱いがぞんざいだぞ~っ!」
青いツノを尖らせながら、泉にぐいと詰め寄る。主人とペット、どうやらその仲は不安定であるらしい。
これは
……
逆転の予感。プリティチャンス到来だわ! ───嵐は、女子会のティータイムのようにウンウンと頷いて、レオの肩を揺さぶる。
「けなげな男の子が溜めこんでる不満っ、プリティ戦士として見逃せないわ! もっと聞かせてちょうだい!」
「おお~っ、おれの話を聞いてくれるのか? おまえいいやつだな! いいやつは大好きだ~っ!」
嵐の両手をぶんぶんと上下に振りながら、レオは満面の笑みを浮かべる。「敵と仲良くするな~!」と引き剝がそうとする泉にも反旗を翻して、大声で主張した。
「おれとセナは恋人同士のはずだけど、最近ぜ~んぜんハッピーじゃない! デートしようって指切りげんまんしたのに、悪の組織インテリジェンスの社内総会があるからって、平気でドタキャンしたりする!」
「だって、プリティ5ときたら意外と強いんだもん
……
。緊急ミーティングもやむを得ない状況なの、れおくんもそれぐらいは理解できるでしょ?」
「えっ、意外とアタシたちのせいだったりする
……
?」
嵐は気まずそうに目を泳がせながら、レオを見守る。レオは、更に不満をぶちまけた。
「でも! ちゃんと埋め合わせするって謝ってくれたから、おれはず~っと信じてたのに
……
。やっぱり我慢できなくて問い詰めたら、『聞き分けの悪いペットは嫌いになるよ!』とか言ってすぐ脅すし! 心がしょんぼり寂しくなったからちゅ~しようとしたら、『エッチ!』って変な誤解されるし!
……
ぐすん」
涙ぐむレオの背中をさすりながら、嵐はチャンスとばかりに励ます。
悪魔のレオは強敵だけれど、愛する泉に服従しているだけで、根っこはきっと善人だ。インテリジェンスの野望なんて捨て置いて、プリティの意義を説き伏せることができたなら、こちらの仲間に引き込めるかもしれない───脳内に思い描いたプリティ補完計画にほくそ笑みながら、嵐は必死にエールを送る。
「ねえ、レオくん。この先もずっと悪の組織インテリジェンスで働いてたら、毎日残業でアフターファイブも夢のまた夢よ。だぁい好きな泉ちゃんと毎日デートしたいなら、そんな組織はとっとと抜けたほうが幸せなんじゃない?」
「う~ん
……
そうかも
……
?」
ハート型のしっぽが点滅して、ふわふわと揺れている。
もう一押しよ! ───嵐は情熱的に訴えた。
「そして
……
泉ちゃんのためでもあるわ! 日々の戦いで激務を強いられている泉ちゃんは
……
まぁ、アタシたちプリティ5が強すぎるせいで、インテリジェンスも多忙になってるっぽいんだけど
……
」
ふたりの仲を引き裂いているようで気まずいが、世界中のプリティを守るためには致し方ない。コホン、と咳ばらいをして、嵐は続ける。
「とにかく泉ちゃんは、忙しくって目が回ってる状態。組織からの命令で時間外のミーティングにも参加させられるわ、戦闘が終わるたびに報告書を書かされるわ、睡眠時間をとるだけで精一杯の生活
……
。不規則な暮らしで、きっとお肌の調子も乱れまくり。恋する乙女はね、いつだって美しい状態でボーイフレンドと会いたいものよ
……
。泉ちゃんがあんまりデートしてくれなくなったのは、きっとそういうこと。うんうんっ、間違いないっ!
……
だから、レオくん! あんた、こんな戦いはもうやめちゃいなさい!」
「わかった! そうする!」
「こら~~~っ! 黙って聞いてりゃ、勝手に話を進めやがって!」
泉はぷりぷり怒りながら、レオの胸倉を揺さぶる。
これよこれよっ、痴話喧嘩こそプリティのエッセンス! ───嵐は興奮しながらふたりの動向を見守るが、泉の怒号は止まらない。
「ご主人さまの命令に背いてっ、あんたそれでも俺のペットなの~!?」
「わぁん! またペットって言った~っ!」
「ペットはペット! っつうか、あんたのだぁい好きな俺が命令してるんだから、ちゃんと言うこと聞きな! とっとと戦ってよねえ!」
「やだ!」
「やだじゃない!」
「やだったら、やだ!」
レオはそっぽを向いて、悪魔のしっぽを激しく揺らしている。
アタシの計画どおりよォ
……
! ───嵐は腹黒い笑みを浮かべて、幻の六人目に思いを馳せる。焦った泉がぐぬぬ、と歯ぎしりしながら、レオの耳たぶを引っ張った。
「れおくん、ちょっと耳貸してっ!」
「い・や・だ~っ!」
「いいから、貸してっ!」
暴れるレオを押さえつけながら、泉はこそこそと喋りかける。
「ちゃんと戦ってくれたら、今晩
……
ごにょごにょごにょ
……
してあげるから!」
「えっ! 一晩じゅう、おれとえっちしてくれるの!?」
「ばっ、馬鹿っ! 声が大きいっ!」
顔を真っ赤にした泉が、レオの頬をつねった。プリティなバトルを応援してくれる全国のお友達には、到底聞かせられない台詞である。嵐もつられて頬が熱くなったが───悪魔のレオは、俄然やる気が出たらしい。上半身を横断するように出現したアコーディオンを抱えて、宙に浮かび上がった。
プリティ補完計画、失敗
……
! 嵐は冷や汗を垂らしながらレオを仰ぐ。本気の戦闘モードになった悪魔の瞳は、真っ赤に染まっていた。
「セナ~っ、大好きだっ愛してるよ! おまえを世界で一番美しいインテリジェンスにしてやるからな~っ!」
「そうそう、その意気♪ いい子、いい子♪」
「
……
というわけで、おれはおまえをやっつけなくちゃならなくなった! ごめんっ、許してっ!」
「
……
っ! 戦うしか、ないみたいね
……
!」
無邪気な笑みを浮かべつつも、その瞳は殺気に満ちあふれている。旋律のオーラを身にまとうレオと対峙しながら、嵐はフローラルアローを構えた。
どうしても、戦わなくっちゃいけないのね
……
!
エゴイストからは、邪悪なハートは微塵も感じられない。それでも、確かな信念がある。愛する者のために戦うと決めた男は、世界じゅうの誰よりも強いのだ。
もちろん嵐だって、そう簡単にプリティを明け渡すわけにはいかない。両者ともに譲れない戦いが、火蓋を切って落とされる───ペットの服従に満足げな泉は、余裕たっぷりに笑った。
「ところで、あんたの仲間はいつ来るの? 遅刻してる~とか言ってたけど、いくらなんでも遅すぎなぁい?」
「みかちゃんのこと?」
バイト先の店長に交渉するとは言ってはいたが、ただでさえ人手不足の職場で難航しているのだろう。「あか~ん、間に合わへ~ん」と泣きべそをかいているみかを想像しながら、嵐はため息をつく。
「みかちゃんは、かならず来てくれるわ。でも
……
決着がつくころには、アタシは
……
やられちゃってるかもね」
心優しいみかのことだから、がむしゃらに走ってきてくれるだろうけれど。残念ながら強敵を相手にして、たったひとりで太刀打ちできるわけがない。
でも、やるわ。例えひとりぼっちでも
……
アタシ、みんなのプリティを守るために、戦うわ!
覚悟を決めた嵐は、上空のレオを睨みつけ───視界いっぱいに泉が映ったので、「へ?」と驚いた。戦意に満ちたレオを「むぎゅっ」と押しのけて、嵐に詰め寄ったのだ。
「はあ? なんで? もう来ないかもってこと?」
「え?
……
まぁ、けっこう時間が掛かっちゃってるみたいだし
……
?」
「ねえ。それって、どれくらい掛かるわけ」
「さぁ
……
? みかちゃんから連絡がないってことは、今日じゅうにはもう合流できないかも
……
?」
嵐が首を傾げると、泉は呆れたようにそっぽを向く。インテリジェンスの名に相応しい知的な横顔で長考すると、「ふん!」と踵を返した。
「それって、全然フェアじゃないよねえ。こんなの俺が弱いものいじめしてるじゃん
……
れおくん、帰るよ!」
「えっ」
「えっ」
嵐とレオの声が交差する。アコーディオンを奏でようとするレオの手首を引っ張ると、泉は指をぱちんと鳴らした。公園の空に、異空間のひずみが現れる。闇に渦巻くリングに手を掛けながら、泉は振り返った。
「今日のところは見逃してやるから、万全の準備を整えてきなよねえ!」
「何すんだよ、セナ~! せっかくやる気になったのにっ!」
「二対一じゃ張り合いがないって言ってるの。今日のところは出直すよ!」
「え~っ! おれとえっちしてくれるって、約束しただろ~!」
「だからっ、声が大きいっての! それはそれとして今晩エッチしてあげるから、大人しくしてよねえ!」
もぉ~っ、全国のお友達には聞かせられないおしゃべりばっかりしてっ! ───嵐が照れながら抗議すると、頬を赤らめた泉が「今のは聞かなかったことにして!」と振り返る。
「時代はインテリジェンス! 次に会ったらこてんぱんにしてやるから、覚えてなよぉ!」
「わはは! また戦おうな~っ、アスタラビスタベイビ~!」
悪魔のレオが上機嫌に手を振る。泉に勢いよく引っ張られたところで、異空間のゲートが閉じられるのだった。
嵐はプリティモードを解除して、制服姿に戻る。ふう、と息をついてネクタイを整えていると、愛おしい声が響き渡った。
「なるちゃ~んっ、あか~ん遅刻してもぉた~っ」
バイト先から全力疾走してきたんだろう。荒い息遣いのみかが膝をついて、嵐を見上げる。
「堪忍なぁ、スマホの充電ぷっつり切れてもぉて
……
」
「みかちゃんっ、来てくれたのね~っ!」
「わあぁあぁっ、なるちゃん、苦しい~っ!」
窮地に駆けつけてくれた親友を抱き締めながら、友情の絆を確かめ合う。「あれっ、敵さんはおらんの?」と尋ねるみかに、嵐は前のめりになった。
「大発見よ! 悪の組織インテリジェンスにも、尊いプリティはあるんだわ!」
「んあ~
……
?」
訳もわからず唇を半開きにするみかの肩を揺さぶりながら、嵐はプリティのときめきに胸を躍らせる。
世界中のプリティを破壊しつくす、悪の組織インテリジェンス───決して相容れない存在とばかり考えていたけれど、敵にだって愛の絆は存在するのだ。
表向きは主人とペット、ほんとうは恋人として愛しあっているふたり。真のプリティに気づかせることができたなら、強力な味方になるかもしれない。キュートな未来予想図に心をときめかせながら、嵐はみかの拳ごと天に引っ張った。
「悪の組織インテリジェンス、『美の確信』泉ちゃんと、『悠久エゴイスト』レオくん! あんたたちの愛の結晶っ、このアタシが絶対にプリティにしてみせるわ! 退かず! 媚びず! 顧みず! 明日もときめいていくわよ~っ、イエス~~~!?」
「ぷ、プリティ~~~
……
?」
未だに状況を把握していないみかと覚悟の拳を突きあげながら、嵐はこの世界のどこかで愛を育んでいるであろうふたりに思いを馳せる。
世界中にあふれるプリティをかき集めるまで、嵐の野望はとまらない。可愛くってキラキラで、お得な未来を達成するミッションは、スタートしたばかりである。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内