ヒノチャン
2025-04-27 00:01:53
1471文字
Public ヒノチャン創作
 

TRPGの姿のヒノチャン

小次郎と道満、サーヴァント業の休日

日野剣銃郎はニンゲンである。
齢33歳、最終学歴は商業高校だ。女である性自認だが、男装を好む。
長い手足の巨躯には、男の格好がさまになるだろうと自覚している。

日野剣銃郎の職業は、占い師である。
占い師、という看板を掲げた詐欺師でもある。
時と場合によって占い師を名乗ったり、カウンセラーを名乗ったりしている。
仕事、と称してやることは『一方的に自分の話を聞かせること』だ。
占いを求めてやってくる客には、当たり障りのない耳障りのいい説教じみたことを話す。
癒やしを求めてやってくる客には、自己啓発本に乗っていそうなことを偉そうな態度でつらつらと語る。
そうやって弱者を騙し、小金を稼いでいた。
そんな暮らしをしていれば、もちろんそれを良い風に思わない者たちもいる。
被害者が訴える可能性だってある。
しかし、彼女には用心棒がいたのだ。
ひとつは武具。
涼しげな顔には微笑がある。口数は少なく、だが日野剣銃郎のことは一番に理解しており、忠実なしもべであった。
残すは呪い。
筋骨隆々のビスクドール。おしゃべりで声が大きい、日野剣銃郎の利益を増やすための最強の手の一つであった。

「そうだよねえ!?お前らってヒノチャンの最高のしもべなわけだよねえ!?」

日野剣銃郎は逃げている。
全力疾走である。スタートの前に草履は脱いでおり、足袋の汚れるがままに路地裏を駆けていた。
『しかし主殿、そうはいっても我々にも生活というものがあるのござるよ』
「ござる口調の侍が令和の時代を生きるのでーって言い訳するの変だよ!!!なんでそのワンレン前髪ポニテ長髪で役場務め出来てるんだよ!休んでこいよジジババのお話の相手はさぁ!?」
電話口からは何も返ってこない。
日野剣銃郎の話すターンだから、好きに話させておけばいいと思って、おそらく受話器をそのまま机の上に置いて別のことをしているだろう。
「そもそもお休みはあるじゃん!!!日曜が役場休みじゃん!!!!なんでそれとは別に休みを欲しがるわけ!?てゆーか休みって言っても家でゴロゴロしてるだけじゃんさ!小次郎が畑って言い張ってるベランダのプランターの手入れくらいじゃんさ!!やることと言ったら!」
『いいえ?まいますたぁ、拙僧らはお休みの日にぱんけぇきを食べに行ったりしますぞ』
電話口は別の男の声に切り替わる。混線。故意の。
「は!?道満おまえさっき電話したのに出なかっただろ!なんで今出た!?」
『小次郎殿がおれば貴女様は割と分別のついた大人になりますゆえに』
「ぐぬぬ甘えてもらえる幸せをお前に感じて欲しくだな!」
『ところで。そちらの角は右に曲がられなさいませ』
言うの遅い。
日野剣銃郎は舌打ちをした、体ごとひねってなんとか右に曲がったものの、追手との差を縮めてしまうことになった。
『ンンンン??いやはや間違えました拙僧うっかり!左でございました、ますたぁ!ははははは!』
「はははは、じゃなーーーい!いいからお前らさっさと現場に来い!!召喚だ召喚!!!」

その手にもはや令呪はない。
だが、ふたつは日野剣銃郎のサーヴァントだ。
「来いアサシン、アルターエゴ!メンヘラ女に彼氏と別れろってアドバイスしたら本当に別れちゃって金づるが減ってお怒りのホストたちをボコれー!」
『『本日の業務は終了しております』』
「あーーーーーん!!こじろーーーーーー!どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーまーーーーーーーーーん!!!!」

日野剣銃郎の、むなしい声が夕暮れに響いた。