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青
2025-04-26 22:17:07
1807文字
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綻ぶ花
いちいち訊くなや!!だって言わないから!!のライシュロ。
ナチュラルにお付き合いをしています。
どうしても好きなんだ、と言われた。
「
……
きみと恋人同士になりたい」
こんな気持ちは忘れた方がいいのかもしれないけれど、でも諦めきれない、と。その必死さに絆された、という気持ちも少しはあるかもしれない。けれども彼は自分だって、以前よりは自分の感情に正直でいようと思って生きてきたつもりだ。特にこの男には、曖昧な態度を取れば誤解させてしまうのは解っているし、はっきり口に出さなければ後々余計に傷つける事になる。
とはいえ、相手が勘違いしている可能性もある。例えば遠くにいる相手を思うあまり、恋焦がれる気持ちと混同しているのではないか。そう彼が問うと、男は正面からじっと、激しい感情を宿した目で彼を見つめた。
「違う。
……
キスしたいと思うよ。それでも勘違いだと思う?」
「そ、れは
……
」
「ここで言えないような事もいっぱい想像した。
……
きみが許すなら言ってもいいけど、言おうか?」
「いや、いい
……
」
彼は面食らって、そのまま暫く何も言えなかった。
そうして気まずい沈黙の後で、やっと言った。お前がそうしたいのならしてもいい、と。
彼としてはそれで精一杯だったが、決して押し切られてやった訳ではない。しっかりと考えた末の、正直な応えだったと思っている。ここで自分の心に嘘をついたとして、彼には何の得もない。受け入れてもいいと、いつの間にか憎からず思っていたのだと、その時に彼も初めて自覚した。
二人はその後、本当に唇を交わした。やっぱり勘違いじゃなかった、と呟くのが聞こえて、彼は恐る恐る目を開けた。
「だって
……
もっとしたい」
いいかと問われたので、彼はそれを断ったりはしなかった。
考えてみれば、自分も、良くなかったと彼は思っている。
その後も、いつも触れてくるのは向こうからだった。紆余曲折はあっても今やそういう間柄になったのだし、触りたいと、近くに寄りたいと思わない訳ではない。どうしても気恥ずかしくて、行動に移せないだけだ。触れられれば心地良い。首筋に手が回り顔が近寄って、相手の体温を感じると、胸が高鳴る。早くして欲しいとさえ思うのだが、毎回そうはいかないのだ。
「
……
していい?」
手を握るにしても口付けをするにしても、いちいち許可を取りたがるこの男に、彼はいつでも答えを返してやらねばならなかった。
「
……
っ」
抵抗しないのだから、嫌がっているか否かくらいは解るだろうと思いはすれど、黙っていては伝わらない。
「いい
……
」
から、早く、とまではとてもはしたなくて口に出来ない。頷くだけでも首の後ろが熱くなる。しかしこれは、元を辿れば彼のせいでもある。
本当は嫌だった事、言いたかった事を、以前の彼は口に出来なかった。全て許されたと思い込んでいたのは自分だけかと、男は内心酷く傷付いたのに違いない。自分が今ひとつ鈍感な事はもう解っているから、せめて口に出して答えて欲しいと、そういう事だろう。
それにしても頻度が高い。
少し指を絡めるくらい、傷付く訳でもなし、人目が無ければいつしても良さそうなものだ。それでもこの男は、今や一国の主となった男はまだ彼に訊ねるのである。触れてもいいか、と。
一度なぞ、他人と話している時に急に手を引かれて、柱の陰に連れ込まれた。キスしたい、してもいいかと急に問われたので、彼は驚きここでは誰か通りかかるかもしれないから後で、と言った。
すると、こうだ。
「じゃ
……
いつならいい?」
彼はお陰で、それなら今夜部屋に行くからその時ならいいと、はっきりと口にする羽目になってしまった。そんなつもりは無かったのに、まるで逢瀬の約束のようで、死ぬほど恥ずかしかった。
けれどそれを聞いた時の相手の顔ときたら、ありもしない耳がぴんと天を指し、尻尾がぶんぶん振られているのが見えるようだった。拒絶される事を恐れるあまり、臆病になっている。その代わり、彼が自ら与えるものには大袈裟なくらい喜ぶ。
我ながら妙な事になってしまったと彼は思う。
果たしてこのままで良いものか。彼は溜息を吐く。
「シュロー
……
」
今も彼の手を取り、許して欲しいと問う、蜜色の瞳。最早振り解く気は毛頭ないのに、きっとそれも伝わっていない。ならばこれ以上進めない。全く互いに生殺しもいい所だ。
口にする事を放棄してはいけないと、彼は改めて思うのだった。
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