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らい
2025-04-26 21:00:25
2281文字
Public
レオいず
レオいず30days㉖「星屑のワルツ」
パラレル・パロディ編⑥ お題「宇宙」
※あん〇んぶるSTARSパロディ
※元ネタ作品の性質上、明るい話ではありません
ニューディメンション基地奪還作戦に成功した機体が、次々に宇宙港に到着する。愛機キング・オブ・ナイツを着陸させると、レオはコックピットから勢いよく飛び降りた。居住区に辿り着くまでは無重力区域であるから、パイロットスーツを纏った肉体は、たんぽぽの綿毛のように浮いている。
開戦から一年と十一ヶ月。レオの所属するES連合軍は劣勢を極めていたが、敵軍の拠点攻略に必要な基地をようやく取り返すことができた。くだらない戦争を終わらせるための勝機にもなりうる今日は、きっとめでたい日に違いない。レオは宙を回転しながら、高笑いする。
「わはは~っ、今日は美味しい酒が飲めそうだ~っ! Barユメノサキに集合! 祝杯をあげたいやつ、この指と~まれっ」
勝利のステップを披露して、背後を振り返る。出発時には見慣れた顔が、片手で数えられるほどに減っていた。レオは宙に掲げた拳をゆっくりと降ろして、肩を落としながら去るパイロットたちに詫びる。
「
……
ごめん」
本当はわかっている。敵軍の機体を破壊し、学び舎を共にした仲間を犠牲にしてまで得た勝利が、微塵もおめでたいものではないことぐらいは。
地球の平和のために、故郷に残してきた愛する妹のために───そう思わなければ、やっていけなかった。レオは拳を握り締めて、機体の到着音が虚しく響き渡る宇宙港を素早く通り抜ける。
会いたい。いますぐ会いたい。赤黒い血で穢れたおれを、清らかな水で洗い流してくれるあいつに───無機質なオートドアが開けば、宇宙を全望できるアンサンブル・スクエアが広がった。小隕石が浮遊する巨大な窓のそばに、美しい男が浮いている。作戦から帰還するたびにかならず待っていてくれる、愛しの恋人。レオはぱぁっと顔を綻ばせると、泉をめがけて浮遊した。
「セ~ナっ。ただいまっ」
「わっ!
……
ちょっとぉ、急に抱きつかないでよねえ」
紺の軍服に頬ずりをすると、仏頂面の泉は腕を組みながらそっぽを向く。そのわりには、宇宙港に繋がるアンサンブルスクエアまで毎回迎えに来てくれるくせに。レオは唇を尖らせて、むう、と不満をこぼした。
「なんだよ~。天才ニュータイプの月永レオさまが帰還したっていうのに、『おかえりなさい』の一言もないのか~? ン~?」
あぐらの姿勢で浮きながら問い詰めると、泉はペットを愛でるようにして、レオの頬を優しくなぞる。そうして柔らかく微笑んで、「
……
おかえり、れおくん」と触れるだけのキスをした。
戦争が始まったばかりのころは、「なんで俺があんたを労わなきゃいけないわけぇ」とか「むしろ出迎えてやってるんだから、あんたがお礼を言うべきだよねえ」とか、悪態をついていたのに。最近では妙に素直だ。レオにはそれが嬉しくもあり、寂しくもある。
開戦から二年近くが経過しようとしているが、戦況は日に日に悪化している。明日も五体満足で生きられる保証など、この世のどこにもありはしない。死して肉体を失うか、偽りのコピーに成り代わられるか───きっと泉は、いかなる瞬間のどこを切り取っても、レオの記憶に美しい思い出を残したいのだ。
今日が最後みたいに笑うなよ。
急に悲しくなって、レオは泉の肩を抱き寄せる。透明な硝子の向こうには、淡い輝きを放つ星が広がっている。きっと戦争でもなければ、ロマンチックな流れ星を鑑賞できるデートスポットなんだろう。しかし残念ながら、今日もどこかで誰かの命が散っている。宇宙の墓場だ。
「
……
ねえ、れおくん」
肩に乗せた手の甲に指を絡めて、泉が振り返る。昔みたいに「暑苦しいから、くっつかないでよねえ」とは、もう言わなかった。
「ニューディ基地を奪還できて、俺もちょっぴり機嫌がいいから
……
れおくんに、ご褒美あげる」
「えっ! なんだなんだ?」
髪のしっぽを浮かせながら、レオは前のめりになった。勢いあまって上半身が宙に浮く。レオの身体に密着するように寄り添って、泉は軽快に笑った。
「こないだの、あんたのお誘い。『セナ! 戦争が終わったら、おれと一緒に世界じゅうを旅しよう!』だっけ?
……
俺、受けてやってもいいよ」
「えっ!」
戦争が始まって間もないころ。プロポーズのつもりで告げたそれは、「はあ? そんな暇ないっての」と一蹴されて玉砕に終わったが、泉は今もあの約束を覚えていたらしい。レオは五秒ほど硬直して、すぐさま泉の肩を揺さぶった。
まっくらな宇宙でまぶたを閉じるより、まぶしい朝陽に照らされるおまえと目覚めたい。そんな、ありふれた些細な夢。叶いそうもない夢。
「ほんと!?」
「うん。
……
ゆっくり羽を伸ばすのも、いいかもね」
「やった~!」
たとえ夢物語であっても、おまえが頷いてくれるなら───真っ黒な宇宙にも、きっと流れ星が光る気がした。レオは両手をいっぱい広げて回転する。目尻からぽつりとこぼれる涙の粒が、銀河の星屑に溶けていく。
「なぁに。そんなに泣くほど嬉しいの?」
なきむしれおくん、と優しい声色で笑って、泉は濡れた目尻にキスをした。
夜が明けたら、泉は出撃する。気高き機体アイロニック・ブルーに乗って。
宇宙を漂う無数の星。こんなにもお星さまが散らばっているのなら、ありふれた夢のひとつぐらいは叶えてくれるだろうか。レオは宇宙の果てに捧げた祈りごと、泉をぎゅっと抱き締めた。
例えこの世界でなくとも、遠いとおい別の世界でいいから。
幾億の宇宙を巡り歩いても、きっとまたおまえに会いたい。
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