天空殿の回廊に朝陽が金色の光を投げかけていた。磨き上げられた石畳に二つの影が映る。雷帝インドラと調和神ヴィシュヌが、並んで歩きながら会話を交わしていた。
「インドラ、最近の八部衆の活躍は素晴らしいですね。特に那羅王レンゲの成長は目覚ましいと聞きました」
ヴィシュヌの声は柔らかく、インドラは小さく笑い、応えた。
「はい、ヴィシュヌ様。那羅王はシャクティを受け継いで日も浅いですが、これからの成長が楽しみな神将です」
ヴィシュヌは頷きつつ、微笑みを浮かべる。
「インドラが巨岩兵から少女を助けた話が耳に入りました。その少女が今や八部衆の一人だなんて……時の流れは驚くほどですね」
インドラは少し驚いた様子でヴィシュヌを見つめた。
「ご存知でしたか。……その時、取り残された小さな子供がレンゲだったのです」
ヴィシュヌは目を細め、インドラの語りに耳を傾ける。
インドラは昔を思い出すように続ける。
「村を救った後、彼女が『どうすればまた会える?』と聞いてきたのですが、あまりに真剣な目だったので、『神将になれば、また会える』と答えました。それが、まさか本当にここまで来るとは……」
「レンゲは、インドラに助けられたことを今でも大切にしているのでしょうね」
ヴィシュヌは微笑むが、その声に微かな嫉妬が混じる。
「ふふ、あなたがそんな約束を交わしたなんて、少し羨ましいです。わたくしにはそんな可愛らしい記憶を残してくださったことはありませんわね」
インドラは苦笑し、ヴィシュヌをちらりと見る。
「少しだけ妬けますね。彼女、ずっと抱っこされていたとか?」
インドラは小さく笑い、懐かしそうに頷く。
「ええ、ずっと腕にしがみついて離れませんでしたよ。レンゲの姉が呆れていましたが、そのままにしておきました。あの小さな手が、意外と力強くて……今思えば、彼女の意志の片鱗だったのかもしれません」
ヴィシュヌは軽く目を細め、インドラをからかうように言う。
「インドラがそんな優しい一面を見せたなんて、わたくしには総司令官として振る舞う姿しか見せてくださいませんのに」
インドラは肩をすくめ、穏やかに返す。
「ヴィシュヌ様、貴女とはずっと共に歩んできたでしょう。それに、貴女だって昔は私に頼りきりだった時期がありましたでしょう?」
ヴィシュヌは頬を軽く膨らませる。
「それは遠い昔のお話です! インドラだって、わたくしがそばにいるのを喜んでいたじゃありませんか。でも、レンゲの話を聞くと、なんだか少し彼女に負けた気分になってしまいます」
インドラはヴィシュヌの嫉妬に気づきつつ、優しく笑う。
「負けるも何もありませんよ。貴女は私の最上の理解者です。あの日の約束を果たした一人の子供が今、立派な神将として成長した姿を見ると、少し感慨深いだけです」
ヴィシュヌは納得したように頷きつつ、目を輝かせる。
「そうですね。私も、彼女の活躍を近くで見てみたいものです。あなたの約束が、こんな素晴らしい結果を生んだのですから」
インドラは静かに微笑み、レンゲの成長を思い浮かべる。
「彼女のこれからに期待しましょう」
ヴィシュヌはインドラの横顔を見つめ、軽く笑う。
「本当にそうですね。しかし……あなたがそんな目でレンゲを見るなら、わたくしももっと記憶に残ることをした方が良いかしら?」
インドラはヴィシュヌの軽い挑発に笑い、明るい声で返す。
「お手柔らかにお願いします、ヴィシュヌ様」
朝陽がさらに輝きを増し、回廊は二人の穏やかで楽しげな笑い声に包まれた。
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