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キリカ
2015-06-01 02:44:01
2459文字
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とうらぶ
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花の散るらむ
右んば版お絵描き文字書き60分一本勝負 ・お題:輪廻転生
人も世界もこれからだというのに、あなたはどうして散ってしまうのだろう。
※みかんばで故・病弱さにわちゃんが出てきます(変な表現)
色々端折ってる。
===============
桜の花が、はらはらと舞い散っていた。
ここに在れるのも、あとどれくらいだろう。
主が遺していった霊力は、刀剣たちに別れを惜しむだけの猶予をくれたけれど、もう練度の低い短刀から順に、人としての現身を失いつつあった。
戦いは終わった。
刀剣男士たちが過去の改変を食い止めている間に、その根源は絶たれた。
その時まで持たないかも知れないと、佳境へ向かうにつれ不安を零していた主は、安心したように息を引き取った。
くだんの猶予の話は、その亡骸が家族の許に引き取られていった後、こんのすけから聞かされた。
主が時折掛けていた縁側に腰を下ろすと、彼女が好きだった庭の風景が一望出来る。
『私ね、今度生まれてくるとしたら桜の木になりたいな。桜は散っても、また春になれば咲くでしょう? だから、そんな風に何度も咲いて、みんなを見守っていたい』
霊力は高くとも、それに自らの身が耐えられないと知った頃から、彼女は時折口癖のようにそう言っていた。
戦いが終わって、自分たち刀剣男士が消えていくのは受け入れられる。
全てが元通りの、平穏な時代に戻るのならばそれは自明の理だからだ。
山姥切は、知らぬうちに強く拳を握り締めていた。
『私はいい主だった?』
彼女の最期の言葉に、当たり前じゃないか、と呟いた。
自分の生きる小さな世界の為に、家族の為に戦って。
きっと、健常な身体だったらそこへ帰っていく筈だったのに。
まだ生まれてやっと十数年の命は、散ってしまった。
「隣、いいか?」
降る声に、山姥切ははっと顔を上げる。
言葉を掛けられて、初めて三日月がすぐ側まで来ていたことに気付いた。
「やはり中庭は、ここから見るのが一番だな」
答えるまでもなく横に腰を下ろした彼が、景色を眺めながら山姥切の手の甲をぽんぽんと宥めるように撫でる。
それだけで、籠っていた力が解けていった。
にこにこといつもの笑みを向けてくる三日月から、そっと視線を外して桜を眺める。
この心地良い時間を過ごす機会も、あと幾許もないのだろう。
順番から言えば、きっと自分の方が先に消える。彼は最後の方まで残るだろう。
依代に降りただけの自分たちが消えた後どうなるかなんて、わからないけれど。
山姥切が手をひっくり返して、三日月が重ねていたそれを握り返すと、彼はちょっと目を丸くした後嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そう寂しがらずとも、縁があればまたまみえることもあるだろう」
だったらいいなと、山姥切は口には出さず枝から零れ落ちる薄紅の花を目で追った。
ここで過ごした時を、忘れないようにと。
懐かしい夢を見た気がした。
けれど、知った声に揺り起こされて、周囲の状況を把握する頃にはその内容も霧が晴れるように忘れてしまっていた。
自分は何をしていたのか
――
そうだ、後輩たちを秋の試合が行われる施設の下見に連れて行って、解散の号を出した後だ。
一緒に来た後輩たちはもう殆ど残っておらず、目につくのは彼のようにバスを待つ数人と、進学して同じ部に入った弟と、その友人くらいだった。
「疲れちゃったかな。主将になってからは自分の練習だけやってればいい訳じゃないもんね」
弟が気遣うように言う。
「今年の新入部員はやんちゃなのが多いから」
「世話掛けてすいませんね~」
後輩はふてくされたようにそっぽを向く。
「でも一年で次の試合出られるの君だけなんだから、頑張ってよ」
「へぇへぇ、精々派手にぶちかませるよう精進するさ」
やる気はあるらしい後輩の返事を聞いて、弟は振り返る。
「僕は和泉くんの家で宿題してくから、兄さんも気を付けて帰ってね」
彼が頷き、弟が後輩の自転車の荷台に乗ったところに、丁度バスがやって来る音が聞こえた。
「本当にありがとうねぇ、荷物が多くて困ってたんだよ」
「礼には及ばんさ。祖父母に育てられたようなものだから、お年寄りが困っていると手を貸さずにはいられんたちでな」
「若いのに感心だねぇ」
バスの中、目の前で繰り広げられている会話を、彼は目を丸くしていた。
正しくは会話をしている一方の、男性の方に。
初めて見る顔の筈なのに、ひどく懐かしい。
後輩が進学前、初めて弟を訪ねて家に遊びに来た時も、何処かで会ったような気がしたものだったが、こういうことはよくあるのだろうか。
思わず穴の開きそうなほど注視してしまったせいか、男性と目が合った。
長い睫毛に縁取られた目が、ぱちぱちと瞬く。
何をやっているんだと、彼は急に気恥ずかしくなって、何気ない振りをして視線を流した。
けれど、男性がバスを降りる段になって急に胸が騒ぎ出す。
今を逃したらもう会えないんじゃないかと。
停車したバスが走り出す寸前、彼は慌てて席を立った。
……
のはよかったものの、降車してから急に冷静になる。
見ず知らずの相手にどう声を掛ければいいのやら。
もし声を掛けたとして、おかしな奴だとおもわれるかも知れない。
遠ざかっていく背を途方に暮れたように眺めていると、さわさわと涼しげな音が彼の耳をくすぐった。
道の脇に目を向けると、そこには大きな桜の木が生えている。
何度も通った道の筈なのに、こんな木があったのには気付かなかった。
「立派な桜だろう。特に春に咲く花は見事なものだぞ」
懸けられた声に、肩が跳ねた。
道の先を歩いて行った筈の男性が、何故かここまで戻ってきていたのだ。
男性は何処か困ったように笑って彼を見た。
「いやぁ、なんと言ったらいいか
……
お前さん、何処かで会ったことはないか?」
夏にたっぷりと陽光を浴びた桜は、その葉を色付かせながら彼らの姿を見守っていた。
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