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キリカ
2015-03-29 03:53:00
1216文字
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とうらぶ
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江雪左文字&宗三左文字+情けは無用
地上に降る緋の雨とは裏腹に、空は晴天。
懐紙で拭われた白刃は、注ぐ輝きを強く反射した。
「一番、ですか」
刀を鞘に納めながら、彼は心なしか嬉しげに呟く。
薄紅の髪が風になびく、弟のその姿を見ても、兄の心は晴れず。
ただ瘴気を吐いて煙のように消えゆく敵の亡骸に、手を合わせた。
砕けた刃も、いずれ崩れて風に消えるだろう。
しかし、物量で以てなんとしても過去を変えようとする者の執念と力は相当なものらしく、今は自分たちの戦いの果てを知ることも出来ない。
知っていますか、宗三。
今しがた私たちが斬ったものの、本当の姿を。
あの太刀筋は、どう見ても
――
そう語り掛けることは、刃として戦いに赴くに喜びを覚えている弟には、酷な話だ。
時が流れ、刀が戦いの道具として使われなくなっても、人が争いをやめた訳ではない。
ただ武器を、手段を変えただけ。
そして再び訪れた自分たちに課せられたのは、刀剣を介した代理戦争。
だが、自分たちが比較的『まとも』な姿をしていることや、城に帰れば心休まる時が得られることはまだ僥倖なのかも知れない。
恐らく遡行軍にはそれも許されないだろうと、敵の本陣に踏み込んだ時感じた血に塗れ、死を貪るような気配を思い出す。
物量に任せた粗製濫造がもたらしたのか、歴史改変主義者たちの趣向なのかはわからないが、あちらの刀剣たちは異形と成り果て、血を求め続ける。
常日頃呟きながら、それが成されないことを、彼は
――
江雪左文字はとうに気付いていた。
それでもと願ってしまうのは、罪になるだろうか。
いくら斬っても終わらない、不毛な輪廻に囚われて。
己が『何』を斬ってきたかを、振り返って。
「
……
さん、どうしました、兄さん」
柔らかな声に、彼の思考は現実に引き戻された。
傍らを見れば、心配そうな弟の顔。
「顔色が優れないようですが
……
」
「大儀ありません」
体調が悪ければ隊の者にも伝えようか、という様子の弟に、兄はゆるりとかぶりを振る。
少し離れたところにいる仲間たちも、既に次の戦場に赴く用意は出来ているようだ。
中天を過ぎた太陽は、後は傾いていくだけ。
「行きましょう。日が暮れるまでに、本陣を制さなければなりませんからね
……
」
告げた兄は、頷く弟と連れ立って仲間の許へ歩き出す。
――
それでも、戦の最中に情けを掛けることは出来ない。
一握りの安らぎと、一抹の希望を手放さぬためにも。
悲しいことだ。
救いようのないことだ。
そう、彼らの主も業の深さを心のうちに澱ませ呟いていた。
妖怪ともとられる付喪神といえど、曲がりなりにも『神』と名の付くものを人の都合で貶め、戦わせているのだ。
人はいずれ、その報いを受けるだろう。
勿論、自らも例外なく。
それを思い出した江雪は天を仰ぎ、想った。
『せめて祈りましょう、主(あなた)のために
……
』
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