日頃の忙しさにかまけてか手入れの行き届いているとは言いがたい髪を緩やかに木のブラシですいていく。ほつれを解いていく中で、ふと髪の先に見つけたものを手にとって重岳は口を開いた。
「おや。枝毛があるぞドクター」
「え、嘘。君に見つけられるのは恥ずかしいな……」
君の髪は綺麗だから比べられるとね、と鏡台の前に備え付けられた椅子に座るドクターが鏡越しにはにかむ。その顔が愛らしくてつむじに口付ければ淡く頬を染めるのもまた。
「わわ、重岳!」
「貴公に褒められるのはやぶさかではないがな、私は貴公の髪も綺麗だと思うぞ」
枝毛は切り揃えて、保湿をせねばな。なに、手入れと時を重ねれば髪は整うものだ。
それまでずっと傍にいさせてくれるのだろうと見つめる瞳に返ってくるのは優しい声。
「髪が綺麗になるまでなんて言わないで。綺麗になってもずっと傍にいて欲しい」
後で私にも君の髪を触らせてね、と笑う愛しい人の髪に重岳は触れる。いつも傍にある髪と同じように歳月をあなたと重ねられるならこれ程嬉しいことはないのだと。
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