ortensia
2025-04-23 00:20:08
1603文字
Public 傭リ
 

ナワデレラとフェアリーノッポマザー

は?←

 むかしむかしあるところに、家族がお邸で暮らしていました。
 しかし、夫人は子供を産んで亡くなってしまい、主人は軍に所属していて家を空けることが多かったので、再婚して、お邸には継母として、新しい夫人がやって来ました。
 しかし、またしかし、主人は殉職してしまい、お邸では継母が我が物顔で生活するように成りました。
 継母は子供を傭兵のように扱い、危険な仕事もさせました。
「だからおれが舞踏会に行くのを邪魔しないほうが良いぜ、妖精さん?」
 成長した子供は、すっかり立派な傭兵に成って居ました。
「邪魔なんてしませんとも。ただわたしはおまえのドレスがあまりにもクソダサだったから、思わずズタズタに引き裂いてしまっただけです。」
「ならおまえを今ここで素っ裸にしてそのドレスを貰おうか、おまえが私有地とは言え外でおれの衣服を風通し良くしたみたいに?」
「確かにわたしのセンスを剥ぎ取りたい気持ちも分かりますが、妖精のドレスだからと言って、着たらたちまち、おまえのチビた体にフィットするわけじゃないんですよ。」
 傭兵が問答無用で手を伸ばそうとします。
「まあご心配なさらないで、チビでも似合うドレスをちゃんとわたしのセンスを活かした魔法で仕立てて差し上げますよ。」
 それを躱して、切り裂き魔は左手を伸ばし、魔法の指先を傭兵に向けました。
 Bibbidi-Bobbidi-Boo!
「舐めてんのか?」
「おっと。妖精の粉を舐めるのはおよしなさい。」
「そう言う意味じゃ無えが……美味いのか?」
「媚薬です。」
「は……?」
「ウソ。」
「は?」
 くだらない応酬に傭兵が呆れて両手を勢い良く脚の前に振り下ろすと、叩いた感触は、上等な生地でした。
 驚いた傭兵が自分のみてくれを確認すると、ボロい衣装は見る影も無く、正しく全く別の、素晴らしいドレスを着て居ました。
「どうです?ずっと良いでしょう?」
 切り裂き魔は得意気です。
「動きにくい。」
 傭兵はばっさり切り捨てましたが、切り裂き魔のように、ドレスを引き裂いたりはしませんでした。
「舞踏会でブレイクダンスでも踊るつもりですか?」
「それも良いな。ただし、仕事が終わったらな。」
 切り裂き魔は顔を顰めます。
……行き先は本当に王子様主催の舞踏会で有っます?」
「ああ、勿論。ターゲットが主催してるんだからな。」
 切り裂き魔が益々顔を顰めるのに背を向け、傭兵は事前に繋いでいた馬の手綱をほどくと、代も無しに飛び乗りました。
……綺麗な靴ですね。」
 切り裂き魔が魔法で用意したのはドレスだけでした。
 小さな傭兵でも、馬に乗れば、切り裂き魔の視線の先に、靴が見えるのでした。
「けど当然王子は守られて居る筈です。そのために、会場内は許可無く危険物持ち込み禁止。」
「おまえみたいな、存在が危険物の奴はそもそも立ち入り禁止だな?」
……だから、国中に配られた招待状は、わたしの元には来ませんでした。」
 切り裂き魔は俯き、傭兵はそんな相手を見詰めました。
「壊れなければ危険物じゃ無くて、おまえが言ってくれたように、ただの綺麗な靴なんだよ。」
 切り裂き魔は傭兵を見上げて、思わず笑いました。
「おれの仕事が終わったら、おまえも踊りに来れば良い。招待状の確認どころじゃ無く成って、みんな逃げ出して会場はもぬけの殻さ。」
「そんな、国軍が黙って無いでしょう……。」
「今の軍は疲弊してる……雇い主が派手好きでな、女王の座を狙ってるんだ。」
……成る程、軍も王も働きは期待出来そうに無いですね。……わたしが舞踏会に着いたら、ブレイクダンスを見せてよね。」
 傭兵は切り裂き魔に笑い掛けると、颯爽と馬を走らせて、駆けて行きました。
 魔法のドレスはきらきらと軌跡を描くようで、妖精の粉を散りばめて進む流星のようだと、切り裂き魔は思いました。


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