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roku
2025-04-22 21:18:03
2754文字
Public
🌳🌟
年の瀬【森諸】
・多忙でクリスマスに会えなかったことが実は寂しかった諸星の話
pixivからお引越ししました
『酒は飲んでも飲まれるな』
付き合いの多い職場で、それは常に念頭においていたはずだったのに。
オレは、クリスマスと仕事納めの鬱憤を晴らすために立ち寄った呑み屋で、浴びるように酒を飲んでいた。いよいよ頭がふわふわしてきて、そろそろやばいかも
…
と思ったところで隣にやってきたひとりの女の子。辺りを見回すも連れはいないようで、気づけば「話聞いてくんねぇ?」と声をかけていた。絡んでいる自覚はあったし、怪訝な顔であしらわれて当然だったはずが、彼女はビールのジョッキを掲げて、「いいよ〜。じゃあとりあえずかんぱーい!」と、中身が半分以上減ったオレのグラスにカチャンと合わせた。
それが引き金となり話が止まらなくなった。
「今週全部残業で、クリスマスも何もあったもんじゃなくてよ
…
」
「それで?」
「遠征から帰ってきたアイツと、会うことすらできなかった
…
」
「恋人?」
「おー」
こっちは繁忙期、あっちは遠征。会う約束をしていたわけじゃなかったけど、本音を言えばクリスマスにデート
…
とまではいかなくともメシぐらい食べたかった。
「今日は恋人さんお仕事?」
「そう。年末年始とか関係ねぇから」
「そっか。それで仕事納めにひとり寂しく飲んだくれ?」
「まぁ、そういうこった」
彼女は「同士だね〜」と笑いながら、味噌で煮込まれたおでんを口にして「美味しけどやっぱ違うな」とこぼした。
そうなんだよ。それはおでんであっておでんじゃねーんだ
…
。おでん
……
食いてぇな
……
アイツの、森重の作ったやつ。すげぇ懐かしくて、すげぇうまいんだ。あぁ、会いたい
…
。でもアイツも忙しいのに、んなこと言えねぇし
…
。
「お兄さん大丈夫!?」
彼女に声をかけられ頬が濡れていることに気づく。
やべ。どんだけ弱ってんだよ。恥ずかしいにもほどがある
…
。手のひらで顔を拭って大丈夫だと告げる。
「会いたいなら行けばいいのに」
「何しに来たって言われたら立ち直れる気がしねぇ」
「えー!そんなこと言う恋人なの?」
「言わない!とは言えねぇな
……
言うかも
…
」
「でもさ、好きな人が会いに来てくれたら普通は嬉しいよ?違う?」
小首を傾げる彼女。女の子としては随分可愛い方だろう。オレの好みじゃねーけど。
「
……
まぁ」
「あ!それかお迎えきてもらったら?」
「は?それこそ怒られるに決まってんだろ!」
「怒るわけないじゃん!だって恋人だよ?」
彼女に後押しされる形で、スマホを手に取った。
『もしもし』
「おー」
『なに?』
「家?」
『そうだけど』
「何してんの?」
『アンタを待ってる』
「
……
は?」
『仕事納めだから来ると思ってたけど来ないなら別にいいよ』
「待て!」
『なに?』
「えっと
…
その、」
たったひとことなのに、年上というプライドと、断られたらという不安が邪魔をして素直に言えない。
『用がないなら切るよ』
「
………
いよ」
『ん?』
「迎えに来いよ!!」
『は?ちょ、
―――
』
何か言おうとした森重を無視して通話を一方的に終わらせた。はぁ
…
と大きくため息をついてテーブルに突っ伏せば、隣でけたけたと笑う彼女の声。
「素直じゃないな〜。まぁわかるけど。私も彼氏忙しいとなかなか言えないんだよね。こっちが我慢すればいいかなーって思っちゃって。で、寂しさ爆発して酒に溺れて、怒られる。の繰り返し」
それすげぇわかる。
今日はさすがに来てくんねーだろうな。でももしかしたら
…
なんてどっかで期待してるオレもいる。
どんくらい会ってねぇだろ
…
。2ヶ月?いや、もっとか
…
。アイツはオレがいなくても平気なんだろうか。
やべ、また泣きそう
…
。
「ひろし
……
」
「やっと見つけた」
「おー飲み過ぎて幻覚まで見えたのは初めてだ」
「この人が絡んですんません」
「いえいえ」
「何もされてないすか?」
「もちろん。少しお話しただけです」
森重と彼女の声を遠くに聞きながら、ふわふわとした世界で意識を手放した。
◇◇◇
「頭いてぇ!!」
「あれだけ飲めば普通そうなる」
呆れた顔を向けているのは紛れもない、森重だ。
「うわっ!も、も、も、森重!?」
「なに?」
「な、な、何で
……
」
ここにいる?そう訊ねるよりも先に「アンタが迎えに来いって言った」とため息を吐く。
「
………
言った、ような気もする
…
」
酒のせいで記憶が曖昧だ。
「場所わかんなくて結構探した」
「
………
すまん」
「女の子に絡んでた」
「あ、いや、えっと、それは
……
」
それは記憶にある。けどその子とやましいことは何一つない。ただ少し話をしただけだ。
「あの子とは何もねぇよ!」
「ふーん。まぁ大さんオレのこと大好きだから別に疑ってないけど」
「なっ!はぁ!?」
そりゃそーだけどよ。今日だってあの子がおでん食ってたせいで森重が恋しくなったんだ。
「人に迷惑かけるのは違うと思う」
「
………
すまん」
森重の言うことはもっともだ。だからあれほど飲まれないように気をつけていたのに。クリスマスもそれ以前も以降も会えなかったからこうなったんだ。
「でも」
「?」
「お前のせいなんだよ!」
これは完全に八つ当たりだ。こいつが試合だったのも事実だが、会えなかったのはオレの仕事が立て込んでいたせいだから。加えて約束してたわけでもねーし。
「は?」
「お前はオレがいなくたって別に平気なんだろうけどな!」
吐き捨てるように言えば、起こしたはずの上体が一瞬にして元へ戻る。ベッドが軋む音がして、力強く縫い付けられた手首。天井を背負った森重は、怒りと悲しみが混ざりあった瞳でオレを見下ろしている。
「ふざけてんの?」
「あ?」
「誰が平気だって?」
「お前だよ!」
「アンタ何にもわかってないね」
森重がため息混じりでぽつりと漏らすと同時にはぎ取られた衣服。身体がくるりと回転しうつ伏せにさせられたところで冷静さを取り戻したが、もう手遅れで、オレは森重のなすがままだった。
壊れそうになるほど激しくされはしたけれど、そこに愛を感じたのもまた確かだった。
「
……
ごめ、んな」
喉がカラカラしてうまく声が出せない。
「会えなくて、平気なわけ、ねーよな」
「
……
わかってくれたならいい。オレも酷くしてごめん」
「ははっ。そんなやわじゃねーし」
「んじゃ、仲直りのセックスする?」
「は?しねーわ!壊れるっつーの!あと、別に喧嘩してねーから仲直りも何もねーんだよ!」
「じゃあ普通のセックス」
「ちょ、待て!もう無理だって!おい!」
オレの抵抗虚しく、「やわじゃないんだろ?」と不敵に笑った依然衰えることのない森重に意識を手放すまで抱かれ、次に目を覚ました時、頭痛を超える痛みが全身を包んでいた。
もう酒は絶対飲まねぇ!
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