三毛田
2025-04-22 12:33:09
1062文字
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70 10. 雨に閉じ込められて

70日目
新しい出会いを君とともに

「う〜……すごい雨」
 フードを外すと、軒下の乾いていた地面が色濃くなっていく。
「これはしばらく止みそうにないな」
 一度軒下から出て、空の色を確認してから俺の隣に戻り。
 同じように、ビショビショのフードを脱いで頭を振る。
 シャッターが下りた店が多く並ぶ、あまり広くない通り。
 いくつか開いている店はあるものの、突然の豪雨に店主も困っている様子が伺える。
「弱くなるまでしばらく時間を潰そう」
「買い物前でよかったって思いと、せめてご飯と飲み物は買いたかったって思いがある」
「俺も同じだ。飲食店に入れればよかったが、初めての土地だ。仕方ないだろう」
 濡れた上着を脱いで、絞りながら。俺も上着を脱いで絞る。指先に何か硬いものが触れ、出してみたらキャンディ。
「あ。キャンディならある」
「お前が舐めてればいい」
「二個あったから、一個あげる」
 一つを丹恒の手に握らせると、仕方ないやつだな。という表情で受け取って封を切る。
 俺も開けて口へ放る。甘くて美味しいけれど、水が欲しくなってきちゃった。
 どんよりとした空は、しばらく雨であることを示しているようで。
「入るかい?」
「え?」
 振り返ると、シャッターが開いておばあさんが。
「入って大丈夫? 今、お店の時間じゃないだろ?」
「うちの店は夕方からだからね。この雨じゃ客も少ないから、開けるかどうか迷っていたんだ。店を開けない場合、食材が無駄になるから食べてくれると嬉しいねえ」
「お金は払うよ! 持ち帰りもする!」
「そうかいそうかい。濡れたままでもいいよ。入りなさい」
 丹恒と目配せし、ありがたく中へ。
「ほら。タオルを使いなさい」
「ありがとう。一人で大変なら、手伝うよ」
「お客さんに手伝わせるわけにはいかないよ」
「タオルを使わせてもらう礼だ。レシピがあれば、教えて欲しい」
 二人で頼み込むと、すぐ折れてくれて。
 レシピを見ながら少し多めに作り、三人で食べる。
「おばあさん、ありがとう。これ、代金」
「こちらこそありがとう」
 また来てね。という言葉をのみ込んだように思えた。
 この格好から、外から来た人間だとわかっているのだろう。手を振りながら店を出る。
「機会があれば、またこの星にも寄れるはずだ」
「うん」
 少し寂しくなって、チラチラ店の方を見ていたら、隣から穏やかな声で告げられた。
「郷土料理のようなものを食べられたのは、僥倖だ」
「パムも喜んでくれたらいいな」
 持ち帰りのご飯を食べたパムの反応が、少し気になる。