の続き。
それから二人は毎日同じ路線で待ち合わせて登校した。👁にとって初めてできたかけがえのない友達。他愛の無い話でもしっかり聞いて面白おかしく受け答えしてくれる💧の事を、👁は大好きでたまらなくなった。
毎朝💧と過ごす短い時間が👁の生きがいになっていく。家のことを知られたくない思いから名前を告げられずにいた👁に💧が付けてくれた「げげろう」というアダ名も、四角張った本名よりずっと大切な言葉になった。
しかし二人の時間も一年で終わりを迎える。
💧の学校の中等部では同校の高等部に進む三年生は全員一年間のイギリス留学が義務付けられていた。内部進学を選んだ💧は当然渡英して一年戻って来る事はできない。
👁にとっては絶望に近い年月。
「いやじゃ
…っ、いやじゃ!行かないで
…………!わしとずっと一緒におって!みずきおにいさん!」
「げげろう
……ごめん、ごめんな
……。住所を教えてくれたら毎日手紙を書くから
……。」
「
………っ、家はダメじゃ
……。家族に知られとうない
……!
……おねがいじゃ、みずきおにいさん、みずき、おねがいします
…………わしから離れないで
……っ!わしを捨てないで!!みずきまで無くしたら、わしは、わしは
……生きてゆけぬ
…………っ」
普段は大人しく我儘ひとつ言わない👁が鬼気迫る勢いで💧にすがりつく。
地獄に垂らされた最後の希望にしがみ付く亡者のように。
しかし無情にも美しい糸は絶たれてしまう。
「ごめん、ごめんげげろう
……!帰国したら必ず会おう!高等部は通学時間が違うけど
……絶対に会う時間を作るから
……!」
そう言った数週間後💧は遥か遠い海の向こうへ渡ってしまった。
💧を失った👁の毎日は地獄に逆戻りした。
むしろ楽しい日々や夢を見た分だけ辛苦が重くのしかかる。一年耐えても恐らく高校生になった💧と小学生の自分では通学の時間が変わってくるだろう。ほとんど会えないはずだ。
終わりなく続く絶望の生活と💧に会えない寂しさが幼い心をジクジクと蝕んでいく。
そしてふと思い出した。💧が将来の夢を語っていた時のことを。
学校の先生になるのが夢だと言っていた。いつの日か母校である中学で教鞭をとってみたいと。そのためにも系列大学に進んで教育学部に行きたいと。
進路相談を装って小学校の先生に💧の中学校について聞いてみればおよそ七割が系列大学に進むらしい。
それを聞いて👁はある決心をした。
血を吐くような努力をして幼稚舎から入学したこの学校を出て、💧の中学校に外部進学しようと考えたのだ。
もちろん親からは大反対され恐ろしい折檻を受けた。それでも👁の意思はかたく、最終的に必ず予定の大学にストレートで進学することを条件に外部入試の許可を貰う。
同じ地獄を歩くなら自分で選んだ地獄が良かった。
予定になかった再受験でますます勉強が忙しくなり、気がつけば💧と別れてから二年が経っていた。あれ以来💧とは会っていない。通学の時間がズレたのもあるがもし久しぶりに顔を合わせた💧がもしも自分を忘れていたら、と考えたら途端に怖気付いてしまった。
💧に限ってそんなことはあるはず無いと何度も懐かしい時間の電車に乗ろうとしたが、もしも💧が居なかったらと思うと足が動かなかった。
そしてついに一度も会えないまま中学受験を成功させ、彼の母校である中学に通うことになる。この頃の👁はよしんば当てが外れて💧が赴任してこなくても、彼が好きだと言った学校で新生活を送れるだけでも構わないと考えていた。しかし💧に会いたい心と、会って拒絶された時の恐怖というジレンマは常にあった。
だが幸運にも教職に進んだ💧と教育実習という形で再び出会うことになる。
久しぶりに会う💧は相変わらず美しくて精悍な青年になっており、👁はいても立ってもいられずフラフラと💧のところに向かった。
久しぶりだと、元気にしていたかと、たった一人の友達に言って欲しかった👁に💧が与えたのは「きみは
……〇〇〇〇君だね?初めまして!」という無慈悲な現実だった。
この世でたった一人の希望であり友人だった💧を失った👁は絶望の底に落とされた。結局自分の一人芝居だったのだと。💧は悲しい子供に憐れみをかけただけなのだと。
深く深く嘆き、そして憎しみにも似た執着を抱いた。
もうなんだっていい、覚えていなくたっていい、とにかく💧が欲しい、この地獄の伴がほしい、自分だけを刻みつけたい。
その想いはとっくに友人の範疇を超えたものだった。
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