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らい
2025-04-21 21:00:25
5016文字
Public
レオいず
レオいず30days㉑「エンドレス・ロックオン」
パラレル・パロディ編① お題「怪盗」
※怪盗×警官
※モブが泉に触れるシーンがあります
怪盗集団『ナイツ・ファントムシーフ』を率いる神出鬼没の獅子・レオ───連日メディアを賑わせるこの男は、『執念の蛇』と呼ばれる警官の泉にとって、因縁のターゲットである。
生まれつきの美貌にくわえて、あらゆる事件をスマートに解決してきた実績。かつては「美と逮捕のプロフェッショナル」とさえ呼ばれていたのに、怪盗レオに出会ってしまったのが運の尽き。彼をはじめて逃がしたあの日から、泉の犯人検挙率は右肩下がり。予告状が届くたびに出動するも、逮捕寸前で逃げられる日々。現在では「怪盗の追っかけファン」と揶揄されるほどに、なんの功績も遺せていないのだ。
しかし今宵、踏んだり蹴ったりの泉にもチャンスが訪れた。追いかけては逃げられるイタチごっこを繰り返し、とうとう怪盗レオを追い詰めることに成功したのである。
苦節一年! 俺の努力が報われるときが来たよねえ! ───泉は高笑いしながら、手錠を取り出す。世紀の瞬間が、訪れたはずだった。
「
……
って、なぁ~んで俺まで一緒に捕まってるわけぇ~!?」
「わはは! 警察官のくせに、お縄になってやんの!」
「笑ってる場合じゃないでしょ~!?」
今夜、美しき宝石『アルタ・モーダ』をいただきに参上するぞ! ───全世界の大富豪が集結する、豪華客船のオークション会場。ご丁寧に警察本部にも届いた予告状は、泉にとって幸運のレターに他ならなかった。船内となれば逃げ場がなく、船上に飛び出そうものなら冷たい絶海が待っている。手錠をかけるには、絶好のチャンスに恵まれていたといっていい。
ところが泉の逮捕計画は、悲しくも頓挫した。船内の隅にレオを追い詰めて、ほくそ笑んだのも束の間。怪盗集団ナイツ・ファントムシーフとは別派閥の犯罪組織が、船内に潜んでいたのである。たまたま鉢合わせた泉とレオは銃口を向けられ、交渉の人質として機関室に閉じ込められてしまったのだった。
「んっ
……
くそっ、チョ~最悪ぅ!」
固く冷たい手錠をはめられ、天井から伸びるパイプにつるされてしまっては身動きがとれない。必死に腰を動かしながら破壊しようとしても、銀の鎖がじゃらじゃらと響き渡るだけで、なんの解決にもならなかった。
泉は重苦しい息を吐いて、同じく隣で繋がれている男を睨む。純白の衣装に身を包んだレオは、視線が絡むなりにっこりと八重歯を見せた。下手すれば殺され、救助が来ても逮捕されるという危機的な状況にあるというのに、随分と余裕めいている。狭い可動領域を最大限に動かして、泉はぐいっと顔を近づけた。
「ねえ! お得意のマジックとやらで、とっとと手錠を外してよ!」
「おおっ、美人が凄むとやっぱり怖いな~。やっぱりおまえの顔って綺麗! 何億、何兆、いやそれ以上に払って手に入れるダイヤモンドよりも価値がある!」
「当たり前でしょ。俺はね、美貌も検挙率もトップを目指すの
……
って、のんきに雑談してる場合~!?」
「いま正直ときめいただろ、おれに褒められて」
「馬鹿いわないで! 怪盗のあんたに口説かれたって、別になぁ~んにも嬉しくないんだけど!?」
「おおっ、『口説かれた』って認識はあるわけだ! おまえと出会って一年が経とうとしてるけど、ちょっとは前進してるってことか? わはは、おれの気持ちが伝わって嬉しい! 大好きだっ、愛してるよ!」
「うざいっうざいっ、チョ~うざぁいっ! とにかく、この状況をなんとかしてよねえ! あんた何年怪盗やってるわけっ、ええ~!?」
胸板を突きだして腰を揺らすが、暴れるほど手首がこすれる。さすがの怪盗も「無理やり抱っこされた猫みたいだな
……
」とたじろいだところで、機関室の扉が乱暴に開かれた。
犯罪集団のひとり───二の腕にタトゥーが入った屈強な男が近寄ってくる。手足の自由を奪われている以上、むやみに抵抗するのは得策ではない。泉はうろつく男を睨みつけながら、慎重に様子をうかがった。
「警察ってのは、大したことねぇんだな」
物騒に舌なめずりする男は、泉の顎に銃口を押し付けた。泉はぐうう、と唇を嚙みしめて、身をよじる。どうにかして銃を奪えないかと腰を揺らしたが、手錠で拘束されているので成す術がない。
「だが、殺すのも勿体ねえ」
泉の反抗的な態度を察したのか、男は太い指を伸ばす。そうして泉の顎を持ち上げた。まるで愛猫を甘やかすように輪郭をなぞるものだから、泉はぴくんと肩を震わせる。こんな気色の悪いスキンシップがあってたまるか。男と距離を取ろうとするが、腰が揺れるだけでなんの意味も成さなかった。
「んっ
……
ちょっとぉ、ベタベタ触らないでよねえ!」
「警官さまは、ボディータッチにも慣れてんだろ?」
脇腹から腰にかけて、いかつい手が這いつくばる。肉体の曲線を確かめるようにいやらしく触れるので、泉の意思に反して全身が研ぎ澄まされてしまう。後輩の友也から「瀬名先輩のキック、気高くてカッコいいです~!」と褒めちぎられた体術で蹴っ飛ばしてやりたいけれど、今は手足を縛られている。大人しく屈服することしかできなかった。
胸の谷間から腹にかけて人差し指でなぞられて、泉は「あっ」と首を振る。
「ふざけないでよねえっ
……
く
……
っ
……
。んっ
……
駄目、だってばぁ
……
っ」
「このままヤらせてくれたら、お前だけは生かしてやってもいいかもなぁ」
男が下卑た笑いをこぼしながら、泉の白い首筋に呼吸を浴びせる。汚い鼻息を吹きかけられて、泉は美しい眉をしかめた。
「はあ? お前だけは生かしてやる、って何!?」
そんなの、警察官のプライドに賭けて許せない。世紀の大怪盗だって生かしてもらわなきゃ困る。だって俺は、絶対にこいつを捕まえるんだから!
本来のターゲットである怪盗を振り向いて───泉は愕然とする。同じく手錠をはめられているはずのレオが、忽然と姿を消していたのである。
「
……
へ?」
泉が間の抜けた声を上げると、妙に重たい音ががちゃりと響き渡る。とっさに床を見やれば、綺麗さっぱり外れた手錠が落ちていた。
怪盗レオが、自由の身になっていたのだ。
「なんだよ、ヤらせてくれたらって。下ネタ反対!」
「テメェ、いつの間に
……
ひっ!」
「片方だけ交渉ってのは、フェアじゃないよな~?
……
ってなわけで、おれもおまえに提案していい?」
手錠と足枷をあっという間に外したレオは、無邪気に笑って───どこからともなく奪った銃を、狼狽する男の眉間に押し当てた。
「セナには手を出さないと約束してくれたら、おれはおまえに一切の危害を加えない。
……
どう?」
「なっ
……
!」
「『なっ』じゃなくってさ。『はい』か『いいえ』で答えて!」
「テメェ
……
!」
「おまえが誓ってくれないなら、おれは勝手にカウントダウンを始めちゃうけど。ただし待つのは苦手な性分だから、三秒だけな。
……
いっくぞ~、すり~♪」
「ふざけんじゃねえ!」
「つぅ~♪」
「やめろ!」
「
……
わぁ~ん♪」
「れおくん! 本当に撃つのは
……
!」
悠然と銃を構えるレオ、恐怖に怯えて鼻水を垂らす男。ふたりを交互に見比べて、泉は声を荒げる。しかしながらレオは、表情ひとつ変えずに引き金に指を掛けた。
「ゼロ」
うっちゅ~、と無邪気に笑うと、風船の割れるような音がパンッと響き渡る。泉がおそるおそる目を開くと、汗ばんだ額に向日葵を咲かせた男が、泡を吹いて倒れていた。
本物の銃弾ではなく、得意のマジックを使ったのだ。泉は「もぉ~
……
」と脱力して、背後の壁に寄りかかる。
「わはは~! おれは大富豪のお宝は盗んでも、尊いいのちは決して奪わない主義だから! 安心してっ!」
屈託のない笑みをぶら下げたレオが、親指をぱちんと鳴らす。忌まわしい手錠がいとも簡単に外れて、バランスを崩した泉はタイルに突っ伏した。「ふぎゃっ」と間抜けな声を漏らしたが、すぐさま視線を上げる。
美と逮捕のプロフェッショナルは、そう容易く動じていられないのだ。泉はレオの胸倉に掴んで、ありったけの文句を並べた。
「ちょっとぉ! 手錠を外せるなら、最初っからそうしてよねえ!」
「だってさあ。簡単にミッションコンプリートできたら、つまんないだろ~?」
「面白いもつまらないもあるか! 命こそ奪われなかったから良かったけど、結果的に俺こいつにセクハラされたし!」
無様に気絶している男を蹴り飛ばして、レオの肩を揺らし続ける。レオは降参のポーズで両手を上げると、眉をハの字にして笑った。
「う~ん、美しすぎるのも考えものだよな~。正直おまえの魔性にはびっくりしてる。オークションに賭けられたのがおまえじゃなくて、本当によかった!」
「はあ? とにかくっ、あんたがとっとと手錠を外してくれたら万事解決だったわけ! 無駄に遠回りしちゃってさ、馬っ鹿じゃないのぉ!?」
「ごめん、ごめんってば。
……
だってわざと捕まったら、おまえと」
いっしょに居られるから。
レオはシルクハットを脱ぐと、泉にそっと近づいた。柔らかな肉感を味わうように唇を吸い上げて、リップ音をいやらしく響かせる。
「んっ。んっ
……
」
憎たらしい敵にくちづけられているはずなのに。甘ったるい蜜を注ぎ込まれているような感覚が、泉の腰を揺らした。エメラルドのとろける瞳に、泉の艶やかなくちびるが震えて───「ぎえ~っ!」と野太い断末魔が炸裂する。拳銃を構えた後輩の友也が、勢いよくドアを蹴り飛ばしてやってきた。
「瀬名先輩、大丈夫ですか~!? こいつら大体やっつけちゃったんで、あとはボスの居場所を見つけて
……
って、あ~っ! 怪盗集団ナイツ・ファントムシーフの親分っ、神出鬼没の獅子~っ!?」
「やべっ、見つかった! わはは~、さすがのおれも大ピンチ! というわけで逃げるが勝ちっ、じゃあな~セナ!」
「ちょっとぉ! 逃げるつもりぃ!?」
「大丈夫、そのうちまた会えるよ。
……
今度こそおまえのくちびるを、いただきに参ります」
泉の耳元にちゅっと囁くと、レオは煙玉を発動する。部屋じゅうを埋め尽くす白煙の彼方に消えていく影。泉はごほごほと咳き込みながら、警察官の使命を思い出す。
せっかく手錠をはめるチャンスだったのに、俺の馬鹿! ───すっかり気絶している男の背中を踏んづけて、泉は必死に追いかける。
「待てぇ、こらぁ~!」
「え!? 瀬名先輩っ、こいつどうしたらいいんですかぁ~っ!?」
「手柄は友也くんにあげるから、適当に処理しといて!
……
そんなことより、絶対に逃がさないよぉ~!」
機関室を飛び出して、甲板に駆ける。ヘリコプターの下でたなびくロープに足をかけ、逃亡を試みるレオの姿が見えた。余裕たっぷりに八重歯をきらめかせる怪盗に、警官のプライドが燃え上がる。絶対に逃がさないよぉ! ───ヘリコプターが浮上すると同時に、泉はレオの両脚に飛びついた。
そこまでして追いかけてくるとは想像していなかったのか、レオは「ぎゃ~っ!?」と猛獣に噛みつかれたかのような叫びをとどろかせる。
「えっ、ちょっと待てセナ! おれを情熱的に求めてくれるのは嬉しいけどっ、さすがに落っこちるぅ~っ!」
「いいよぉその顔っ、ゾクゾクするぅ! あんたを逮捕するまで、俺は絶対に諦めないんだからねぇ! 一生あんたを追いかけまわしてやるっ! 俺とっ、出会ったのがっ、運のツキぃっ!」
「怖いっ、血に飢えたゾンビみたいに這い上がってくる! 絶世の美人警官に逆プロポーズされて嬉しいはずなのに、底知れぬ恐怖が勝るぅ! ああ~っ、リッツ助けて~っ! っつうかよく考えろセナっ、このままだとおれもおまえも海に落っこちることになるけど、いいのか~っ!」
「人工呼吸をしてでも捕まえてやるよぉ! 観念しなよねえ~!」
「それはちょっと、されてみたいかも
……
あっ」
気の抜けたレオがロープから手を離したことで、ふたり仲良く海に落ちていく。水柱がドボンとそびえたつ海面を見下ろしながら、ヘリコプターの運転手が「俺の仕事を増やさないでよねえ
……
ふあぁぁふ」と欠伸をした。
神出鬼没の獅子と執念の蛇の追いかけっこは、夜が明けるまで終わらない。
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