三毛田
2025-04-21 11:18:20
1083文字
Public 1000字3
 

69 09. 冷たい爪先

69日目
触れても、君のなら耐えられる

69 09. 冷たい爪先
「ひょわっ」
「すまない。そんなに冷たかったか」
 そっと触れた爪先が、思っていたより冷たくて悲鳴を上げる。と、丹恒は済まなそうに眉を下げ。
 俺が彼を驚かそうとしたことなのだから、そんな済まなそうな顔をしなくていいのに。
「俺が勝手に驚いただけだから、気にしなくていいよ」
「だが、俺の足が冷たいからお前を」
「丹恒は、俺より体温が低いから仕方ない。でも、あんまりくっついてると、苦しいだろ?」
 そっと頬を撫でる。やっぱり、そこは俺の指よりも冷たく。
「お前にくっついていて、窒息するのなら……俺は本望だ」
「んっ」
 照れることもなく告げられた言葉に、嬉しくて恥ずかしくてまともに言葉が紡げない。
 なんでこう、男前なんだよこいつ。
「爪先から温めてやるっ」
 両足で、まず片方の爪先を包む。ひんやり冷たいそこに、また悲鳴を上げそうになったけど、我慢して。
 しばらくすると体温が混ざり合ったのか、そんなに温度差を感じることはなくなり。
 それと同時に、眠気が押し寄せて。
 ただ、それは丹恒も同じだったらしく。
 目は半分しか開いていない。
 そんな貴重な姿を目に焼き付けているうちに、眠ってしまった。
 互いの体温を分かち合うように眠るのは、思っていたよりも効いたようで。
 丹恒が目を覚ましたタイミングで、俺も目を覚ます。
「おはよう、丹恒」
「ああ、おはよう。今日は、駄々をこねないのだな」
「うん。スッキリしてる」
「俺も同じだ。お前と一緒に眠ったからかもしれないな」
「ふふん。流石俺」
 胸を張ると、愛しそうに目を細め。それから、頭を撫でてくれる。
 足と足を絡ませ、寝起きの熱を分かち合う。
「ご飯食べに行く?」
「本音を言えば、もう少しお前とくっついていたい。が」
「が?」
「三月がうるさい。それと、食べたいものがなくなりそうだ」
「うん。そうしようか」
 ゆっくり絡めた足を解くと、名残惜しそうな顔。
 多分、俺も同じ顔をしている。
「依頼ないから、一緒にいよう」
「いや。アーカイブの整理をしていた時に、興味深い論文を見つけたから読みたい」
「タブレットに落として、俺の部屋で読むんでもいいだろ」
「そんなに俺といたいのか」
「逆に聞くけど、丹恒は俺といたくないの?」
 問いかけると、少しだけ目を丸くして。それから
「いたくない、わけではない」
 とボソボソ。
 これは、もう少し押したら頷いてくれそう。
「俺は、丹恒と一緒にいたいな。駄目?」
「駄目じゃない」
「じゃあ、お願い」
「ああ、わかった」