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もりやま
2017-08-01 19:01:34
4205文字
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どうも私はあなたの恋人 トガデク
本誌読んだカッとなって書いたトガデク。未来捏造。ストーカートガちゃん。
絶対の絶対に、世界が反転してもそんなことにはならないぞ。
どうも私はあなたの恋人
くたびれた。なにがってそりゃあもう念願のプロヒーローになって早一年、相変わらず街を騒がせるヴィランの対応に疲れたのだ。早くお風呂入って寝たい。頭のなかはそれでいっぱいだ。まとわりつく嫌な匂いのおかげで目を開けて歩いていられるのかもしれない。あのヴィランを運んで行った障子くんの鼻はひん曲がってないだろうか。
友人の心配をすこししつつ、慣れた様子で自宅への鍵を差し込み回せば新居が僕を明るく出迎えた。
……
明るい?
嫌な予感がして視線を下げれば、見慣れたブーツ。
「おかえり出久くん!」
「なんで居るんだよ!?」
引き返そうと思ったら、何故か背中にのしかかられる。どこから出て来たんだ!?
「はぁ〜出久くんまた傷だらけだね、かっこいいよ!」
コアラのようにしがみつく彼女を引き剥がすべく肘を使って奮闘していれば彼女の方から離れた。
「お風呂もう沸かしてあるんです、ご飯もありますよ」
「
……
あのさ
……
」
プロになってからほぼ日常茶飯事になってしまったこのやり取り。正直わけがわからない。だって彼女はヴィランだったんだ。いや、正直今不法侵入されてる現状もヴィランではないかと訴えたいが個性を使っていないのでただの犯罪者。いや、犯罪者なら警察に相談してもいいのか。考えを巡らせていれば、彼女は不思議そうに顔を傾ける。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃなくて
……
もう一度聞くけど、なんで君はここに居るの?」
「出久くんに会いに来ました」
いやだからなんで、と問えばきっとまたあの言葉が飛んで来る。出久くんが好きだからだよ、なんて言葉だ。僕は君が好きではないとかれこれ10回は言っているのになぜか未だにこうして家にくる。
それよりも何よりも、なぜ引っ越して2日目でもう彼女に家がバレているんだ。今度こそと思ってここのネームプレートや、契約人の名義をこっそり変えてもらったのに、何故彼女にバレてしまうんだろう。気が遠くなっていれば出久くんと赤い彼女が僕を呼ぶ。
「ごはん、冷めちゃいますよ?」
「
…………
」
要らない。と突き放したことはある。今回だって別に要らないと言って食べなくてもいいのだ。なにが入ってるかわからないし、ストーカーのご飯を食べたらそれこそ私たち付き合ってるんですねなんて都合のいいように解釈されてしまう可能性だってある。けれども何故だか、ある日をきっかけに僕は食卓に着いてしまうようになった。
この人は毎回二人ぶん、用意しているのだ。
断らない理由にならないかもしれないけれど、僕にとってはそれが断れない理由になってしまった。なんせ彼女の作るご飯は手が込んでいて普通に美味しいのだ。なんてこった。せめて美味しくなければ断る理由になったのに。
「んふふ、今日はフレンチ風です」
ニマニマと笑いながら彼女は席に案内する。正直お腹も空いているし頭が働いていない。のろのろと背中を押されながら、彼女は毎回こう尋ねる。
「今日はどっちに座りますか?」
「はあ
……
じゃあ窓際」
「ずいぶんお疲れなんだね」
「そりゃあね」
大きく息を吐いてから席に着けば、向かい側で彼女もいそいそと席に着く。
「出久くん、へっとへとだと窓際選ぶんです知ってました?」
こりゃ大変だ。毒を盛られたりしたら僕は瞬殺かな。知らなかったと言うかすこし悩み、へえーとだけ返せば彼女はやはり赤い顔で薔薇色のため息を吐く。
「はあ
……
出久くん今日は誰に血まみれにされちゃったの?」
「
……
ニュースに出てるんじゃないかな」
「わたしも出久くんを刺したいです」
ほらこれだ。彼女の思考はあまりにも危険すぎる。未成年だからという理由で釈放されたの、早かったんじゃないだろうか。
「いただきます」
「めしあがれ」
ああ、本当に。彼女の作るご飯は何故こんなにも美味しいのか。
フォークとナイフで切り刻んだ肉の柔らかさは思わず笑顔になってしまいそう。あわてて口をへの字にすれば、向かいの彼女は僕を見ながら食べている。
「いっつも思うけど、なんでこっち見て食べるのさ」
「だって出久くんを食べてる気分になるじゃないですか。柔ぁらかいね、出久くん」
わけがわからない。全くわけがわからないよ。傷だらけの僕がかっこいいと言ったり、僕を食べてるみたいだと蕩けた顔で肉片を齧る彼女。カニバリズムの気もあったのかよと突っ込みたくなるがあまり会話をしたくない。
彼女の視線を浴びながら、悔しくも美味しいご飯を平らげる。フレンチ風と言っていただけあって、前菜、サラダ、スープ、肉料理に魚料理、そしてデザート。その全てが美味しいのはさすがに卑怯と言ってもいいだろうか。
「
……
ごちそうさまでした」
「はぁい」
にへらと笑いながら、彼女はいそいそとやってくる。気づけば彼女の皿も空だ。
「お風呂どうぞ。わたし先に入っておきました」
もう一回湯を溜め直そうかな。なんだよおきましたって。やっぱり彼女はよくわからない。着替えを持っていこうとして、寝室の部屋を開ける。綺麗に折り畳まれた布団は僕が最後に見た姿と違う。思わず顔から表情が消えてしまった。なんだ、盗聴器でも着けられたのだろうか。部屋はすこし綺麗になってるけど。気にしないふりをして、着替えをひっつかむ。この奇妙な時間がもう終わりだと知ってるからだ。
鼻歌を歌いながら皿を洗う彼女の後ろをそっと通りすぎる。風呂場に向かえば確かに暖かいお風呂が僕を待っていて、シャワーで軽く体を洗って湯船に沈む。
「はぁ
……
」
お湯に浸かればどっと疲れが出てきた。もう何もかも疲れた。このまま寝てしまいたい。そんなことを思いつつ、しばらく浸かっていればがちゃんと音がした。
それを聞いてから僕はゆっくりと湯船からあがった。タオルで体を拭けばすこし血がついてしまって、ため息とともに洗濯機へとタオルを放り込む。
リビングに戻ればやはりというか、彼女の姿はなかった。なんとなく、席について先ほどまで二人で座っていた時間を思い返す。
「
……
ほんとに、何しにきてるんだか」
だいぶ僕は疲れているらしい。その日、僕は食卓で幸せそうに笑う彼女の夢を見た。
ストーカー、現る
【今日泊まっていい?】
友人からの連絡に、轟焦凍は首をかしげる。珍しいことがあるものだ。差出人は緑谷出久。彼は新居に引っ越したと最近嬉々として報告してきたはずなのに。現場が近いのだろうか?
【構わねえ】
短い返事を返せばすぐに返事が来た。
【泊まりません】
「
……
は?」
差出人は緑谷出久。前言撤回早すぎんだろと冗談を言いつつ轟はスマートフォンを耳に当てる。進めた足は駅の方向だ。
「今、デクがどこ居るか知ってるか?」
連絡先はデクの事務所である。
「デクはもう家に居るはずですよ」
「わかった」
そこから轟は駆け足で緑谷の部屋まで向かうことになる。親友のピンチだ。たぶん、確証はねえけど。わけがわからないまま走り、電車に乗り、たまにスマートフォンを見てみるがあれ以降返事はない。
「
……
しまった。合鍵とか持ってねえぞ」
エレベーターから鍵が必要なマンションのエントラスで轟は立ち尽くす。親友に何かがあったかもしれないのに、こんなところで足止めを食らうとは。慌てて外に出て氷を足場に壁を登れば意外と目的の5階にたどり着くのはあっという間であった。
緑谷というプレートを探して、轟が廊下を歩けば悲鳴が聞こえた。緑谷の声である。
「くそ!」
駆け出せば扉が開いている部屋が見つかり、ためらいもなく轟は部屋の中へと入りそこで目を見開く。
「な、なんでこんなことするんだ!?」
「刺したら、また出久くんに会えなくなると聞きましたので」
緑谷が裸の女に押し倒されている。自分は聞いたことがないが、恋人でもいたのだろうか。たらりと汗を垂らし、ためらう轟を押し倒されている緑谷が見つける。
「轟くん!」
「わ、悪ぃ緑谷
……
邪魔したか?」
念のために尋ねてみれば、緑谷はグイグイと女を押し退けようとしつつ口を開く。
「助けて!」
「
……
邪魔
……
」
低い声でそう呟きつつ、くるりと振り返った女はどこか見覚えのある女だった。緑谷から引き剥がすべく駆け寄り、女の腕を掴もうとすれば女の方から離れた。
「またね、出久くん、今度は鍵ちゃんとかけるね」
「来なくていい!」
そう言って彼女はするりとベランダから逃げてしまう。しかも全裸のままだ。
「追うか?」
「
……
いや、彼女、君を刺さなかった。もうあのまま露出狂として捕まってくれないかな
……
」
刺さなかったからといって、お前が押し倒されていい理由にはならないだろう。と言いたい気持ちだったが明らかに疲弊している友人の介抱が先だろう。そう結論づけて轟はゆっくりと緑谷の肩を担ぐ。
「はぁ
……
ありがとう轟くん
……
今日泊まらせてって言ってたんだけど轟くんが泊まってくれる方が嬉しいかも」
「そうする」
緑谷を風呂に入れ、ふたりでレトルトのご飯をつついている間、先ほどの女の話を聞くことになる。どうやらヴィラン連合のひとり、渡我被身子らしい。なんか雰囲気変わってたなと轟が言えば、釈放されてイメチェンしたんだってと緑谷。ごくごくわずかな可能性として、轟は唇を小さく動かす。
「恋人ってことは」
「ないよありえない」
思いの外きっぱりと返されて、轟はすこし驚く。口調のきつい彼はヴィラン相手でしか見たことがなかったからだ
……
が、あれもヴィランかとすぐ納得する。
「おまえ、これからどうすんだ?」
レトルトカレーを掬いつつたずねる轟に、緑谷はご飯を頬張りながら眉をしかめる。
「引っ越す」
「早えな」
「ほんとだよ!まだ1週間しか住んでないのに!」
「なら次の引越し先決まるまで、うちに泊まるか?」
ありがとうと泣きながら喜ぶ緑谷に、轟はなら今日荷造りするかと提案する。
そんなこんなで、緑谷出久が落ち着ける家に住めるまで、緑谷は何度も轟の家に厄介になり続けたのであった。
*******
どうしても轟くんの話入れたくてむりやり下に入れてしまった。
めちゃくちゃ駆け足だったからそのうちちゃんと書きたい。
本誌が本誌でトガデクすぎてトガデク
………
ってなりました
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