もりやま
2016-03-13 17:11:06
1074文字
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かいゆま

パラレルかいゆま。の導入

そのひとはいつも弟と一緒にいて、逆に言えば弟以外の人と居ることはなかった。名前は全く知らないけれど、弟の方の名前は知っている。遊馬は彼の友達だからだ。弟の名前は天城ハルト。彼もまた、兄以外の人の隣に居ることはなかった。
だからといって、遊馬は別にそんな兄弟に深く関わるつもりはなかった。兄の方がそれを望んでいるように見えたからだ。ひょんなことから知り合いになったハルトと遊馬だったが、その時以来話すことはあまりない。幸せそうに見えたのだ、あの兄弟は。
「あ」
だから思わず声が出てしまった。月の細い夜、遊馬はとんでもないものを見てしまったのだ。
「ちょ、ちょっとあんた!なにしてんだよ!?」
遊馬の目の前に居るのは、ハルトが兄さんと慕うその人で、その人は公園のベンチに寝そべっていた。
「酔っ払いじゃないんだからっていうか、どうしたんだほんとに」
ハルトの兄は遠くから見ていることばかりだが、それだけでも公園のベンチに寝そべるような人ではない事は知っている。見かける時はいつも、ピシッとしているのだ。
だからとても信じられなかった。スーツのまま、公園のベンチに寝そべるその人が。そっくりさんかとも思ったが、そんな筈はない。
「生憎、酔っ払いだ」
そんな声を聞いてしまえば、本人だと認めざるをえない。初めて会った時と同じ声だ。
「いやだからってベンチで寝るなよ」
ぐい、と背広を引っ張り起きろと促す遊馬。彼はとても気だるそうに、ゆっくりと身を起こす。
………お前、どうしたんだよその怪我」
驚いたことにこの酔っ払い、頬が腫れていた。明らかに誰かに殴られました。というような顔をしている。
慌てて遊馬がハンカチを濡らして、彼の頬に当てる。
「いらん」
手を払いながら顔を顰める男に、構わず遊馬はハンカチをぐいと押し付けた。その際男の顔が歪んだが、おかまいなしである。
「どうしたんだよその怪我。ハルトと喧嘩か?」
「ハルトは関係ない」
じろりと睨む男は、やはり酔っているようには見えない。心配そうに遊馬が覗き込めば、ついと顔を背けられてしまう。
「お前には関係ない」
「それはそうかもしれねぇけど!……でも、その怪我のせいで家に帰れないんじゃないのか?」
ぱちりと男がまばたきをひとつ。
それからちっ、と小さく舌打ちが聞こえて、遊馬は確信した。
「あー、でも、帰りが遅い方がハルトは心配するんじゃねえか?」
「貴様にハルトの何がわかる」
「わかるさ!友達だからな!」
胸を張る遊馬に、男は盛大にため息を吐いた。
「貴様がハルトの友人だと?」