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もりやま
2015-06-13 00:03:24
3585文字
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隣の条件 山坂
小野田くんの話。途中放棄してるので、キリ悪いところまで。
未来捏造・同じ大学に通う山坂。の、小野田くんとオタサー友達(モブ)木村くんの話
隣の条件
まさかだってそんな。ご本人登場だなんて誰も想像つくわけないじゃないか!
小野田坂道は路地裏で丸くなっていた。
休日に、サークルで仲良くしている人と、小野田は買いものに来ていた。
その人は随分とお洒落な男で、小野田はその男のファッションセンスを羨ましく思っていたのだ。
「凄いね、木村くん。全然オタクっぽくないや」
だからつい、先日にぽろっとそんな事を口走ってしまった。サークル活動中でしか会うことがない木村は、そんな小野田の発言にニカリと笑う。その笑顔は周りを照らすような笑顔で、小野田はウワッリア充オーラ! などと胸中で眩しがる。
「そりゃー、気を付けてるつもりだし?」
「あ、や、やっぱり
……
?」
「オレがダサいと、いつか次元の壁を越えてオレの隣に来たマイたんに申し訳ないじゃん? なーんつって」
「マイちゃんは中身が大事って言ってると思うけど
……
」
爽やかな笑顔に、自分を良く見せることのできるファッションセンス。それを持っていても、中身は「嫁命」と言ってしまうようなオタクである。マイたん、というのは先週から二期が放映されたアニメの主人公の名前である。アイドルアニメであるそのアニメは、作画が素晴らしいと評価を得ていて、小野田も毎週欠かさずに見て、録画して、また見るようなアニメである。
「中身はそりゃ、大事だけど、やっぱ良く見せられるなら全部良く見せたいだろー」
「
……
す、すごいや木村君」
マイが実現していなくても、そういう考えをするのは少し問題な気がするが、小野田はそういう考え方はしたことがなかったので素直に感心した。そうして、自分の服をとっくりと見つめて脳裏に浮かんだ人物のことを思う。
「
……
そっか、隣にいる人のことを考えて
……
か」
「お、なんだなんだ。「真波くん」の話?」
「っ! よ、よくわかったね!?」
にやにやと笑う木村に、小野田は驚く。一言も言っていないのに、なぜ。そんな風に驚く小野田に木村はぎしぎしと椅子を傾けながら口を開く。
「いやいや、小野田の隣に居るのって真波しかいねーじゃん」
「真波くんの隣には、ほかにもいっぱい人いるけどね
……
」
「アハハ、あいつ人気者って感じだよなー」
それはキミもでしょ。と小野田は思ったが、それは口にしない。代わりに、木村の服を上から下までじっくりと見て口を開いた。
「木村くんは、どこで服買ってるの?」
「え?」
きょとんとした木村に、小野田は椅子から飛び上がる。自分が発した言葉が恥ずかしく思えて、手をぶんぶんと振りまわす。
「あ、あああいや、その、あの、べ、別にボクには似合わないと思うんだけど、その、ええと
……
」
「なんなら明日一緒に服買いに行くか?」
「えっ! ほんと!?」
けれども木村はそんなことを思わなかったらしい。小野田の言葉を真剣に受け取って、提案してきた。服を買いに行く。小野田からすれば初めてのことだ。高校生時代の友人たちも、服に頓着のない人ばかりだった。だからそんな木村の誘いに、小野田はついつい嬉しいという気持ちを反射で返してしまった。
「いいぜいこーよ。オレもさー、高校ん時に友人捕まえて服見立ててもらったりしたんだよ。それまでパーカーTシャツが友達状態でさ」
「うん、うん! わかる! ボク今それ! お母さんが買った服だし!」
「わかるわー。じゃ、明日行こーぜ」
「ありがとう木村くん!」
がしっと二人の男は手を取り合う。それは、『脱・オタクファッション』を掲げた男たちの決意の儀式だった。
そんなこんなで、小野田は休日に山を登るでもなく、アニメグッズを買うわけでもなく、若者たちが集う街へと来ていた。
『明日はとりあえずふっつーの服装でいいよ。オレもラフに行くからさー』
なんて言われ、小野田の服装はいつも通りTシャツ一枚にジーンズである。その姿をショウウィンドウに映し出してみれば、小野田の眼には冴えないオタクにしか映らなかった。がっくりと肩を落として、本日服を買いに行くことになった原因を脳裏に浮かべる。
真波山岳。その人は小野田にとってかけがえのない友人だ。
もしかしたら友人、と真波には思われていないかもしれないが、小野田は友人というカテゴリであっているのではないかと思っている。
真波は高校生時代からの付き合いで、今は小野田と違う道を進んでいる同じ大学の男だ。
違う道を進んだのは、小野田の方だがそれでも真波は小野田と共に時間を過ごしている。出席する講義が被ったら、席は隣に座るし、学食でともに昼食をとることだって多い。休日は山へ登りに行かないか、と誘ってくることもある。そんな真波山岳という人は、男から見ても整った顔立ちをしていた。木村が服で自分を着飾るのならば、真波は服で着飾る必要がない。そんな人物だ。実際上半身裸でロードに乗っていても女性達は綺麗、などと騒いでいたくらいだ。そんな、不思議な美しさを持っている人物だった。
そんな真波の隣に、凡人三下ビジュアルに、服もダサい自分が立っている。今更そんなことを自覚して、小野田はショウウインドウに額をごつんとぶつけた。
「うう
……
身の程しらずってこういうことかなあ
……
!」
ごん、ごん。何度か頭をぶつける小野田に、ショウウインドウの向こう側の店員は奇異の目で見るが、小野田はそれに気づかず脱オタ臭。脱、オタ臭。などと呟くばかりだ。
「おっまたー」
そんな小野田の背中に、木村の声がかかる。ゆっくりと小野田が振り向けば、同じTシャツジーンズなのに爽やか好青年に見える木村が立っていた。
「
……
神様って不公平
……
」
「おお、なんだなんだ。『バカね、そんな風に思う暇があるのなら神様を惚れさせるくらい自分を磨いてみなさい』」
急にアニメのセリフで返してくる木村に、小野田は噴きだす。
「木村くんってほんと面白いよね!」
「小野田もおもしれーと思うけど
……
じゃ、『さっさと行くわよ、愚民!』」
「あはは、木村隊長待ってよ~」
おすすめの店、と言われるところまで二人はアニメトークをしながら歩く。暑すぎる気温に対して、今ならあのアニメキャラの気持ちがわかる。だのあの世界もこんだけ暑いんだろうか。などとオタク全開の話だ。脱オタ臭、はどこへやら。
「ここ、ここ。結構安くて、良いかんじ」
「へえー」
ショウウインドウ越しに見ても、小野田には『良いかんじ』がよくわからない。小野田が曖昧な返事をすれば、入れよと腕を引かれて自動ドアをくぐる。
「これとか、これとか、適当に合わせてみればなんとなーく、わかるだろ」
「ええ、な、なにが?」
「似合うっぽいやつとか、似合わないとか、着たくない感じ、とか?」
同じく語尾をあげて首を傾げられ、小野田は返答に困る。そういうものだろうか。そんな風に思いつつ渡された服を体に当てて、鏡を見る。
「
……
え、わかんないよ
……
」
「小野田って童顔だな」
木村に感想を求めようとすれば、嬉しくない感想が胸を貫いた。
「ひ、ひどい
……
気にしてるのにっ」
「あ、わり。わり。じゃ、こっち」
そんな風に何着か体に当てていれば、ふいに木村が零す。
「やっぱさー、服を選ばなきゃならんオレらは大変だよなあ」
「ええ、服を選ばないひとってどんな人?」
「真波とか、顔がいいやつは何でも似合いそうじゃん。服が真波を選んでるっていうかさあ」
かち、とハンガーを戻す木村。そんな木村の言葉に、そういえば真波くんってどんな服を着てたっけと小野田は記憶をたどる。が、うまいこと出てこない。
「この間なんかあいつ、アイラブ焼肉ってTシャツ着てたんだけどさー」
「や、焼き肉
……
」
「そ、焼き肉。女子みんなしてそれを話すきっかけに使ってて、だーれもダサいとか言わねーの。なんなんだろうなあれ。オレが着たらあんな風にはならねーぞ絶対」
笑いながら話す木村は遠い目をしていて、小野田は苦笑いをする。木村の言ったアイラブ焼肉Tシャツを脳内で浮かべて真波に着せれば、なるほど確かに着ていたかもしれないと小野田はひとり頷く。
「ああでも、真波くんって服無頓着っぽいよね」
「くそー、イケメンめ爆発しろー」
「えっ、ま、真波くんが爆発したら嫌だなあ」
「冗談だよ冗談」
からからと笑う木村。そんな木村に、小野田は尋ねる。
「ま、真波くんって実際どんな服着てた?」
「え? えー、あー
……
Tシャツ? 海パン」
小野田と同じく、記憶の中から上手く辿れなかったらしい木村が適当に答えれば、小野田は眉を寄せた。
「ちょ、ちょっと、おしゃれ番長、そこは思い出してよ
……
」
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