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もりやま
2015-02-26 22:11:19
3029文字
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時と場合によって異なる場合がございます(山坂)
大学生な山坂の話(付き合ってない)
モブ先輩が居ます。
なにへらへら笑ってるんだよ。
そう言われることは多いかもしれない。
時と場合によって異なる場合がございます
「別に面白くて笑ってるわけじゃないですよ」
怒って言っているわけではない先輩に、そう言えばアァ!? と柄悪く絡まれる。うーんやっぱり怒ってるかもしれない。
その間もオレの瞼はぴたりとくっついている。
「じゃあへらへらすんな。気分ワリィんだよ」
「あ。これ、多分視界閉じてるだけですよ」
こうすると、声しか聞こえないですから。
適当な事を言えば、先輩にデコを突かれる。先輩爪伸びてる、痛い。
「ちょ、ちょっと、もー
……
痛いです」
慌てて手を掴んで、先輩の顔を見れば先輩の怖い顔。荒北さんよりこの先輩の眼光は鋭いのだ。
「で、部活サボりまくった挙句に、レース出させてくださいとか言うのはこの口か?」
「
……
じゃあ、レース出る予定の人達と勝負して全員に勝ったら出てもいいですか?」
オレが、誰よりも速ければ文句ないでしょう?
山でのろのろと、苦しそうに走ってる人の隣でなんか走りたくなかった。
そういう人達は全部才能のせいにするんですよ。お前は才能があるからって。
苦しそうに、しかも遅く山登るくらいならスプリンターにでもなればいいのに。
別に見下すわけではないけど、そゆ人には乾いた笑いしかでない。
オレの提案に、部長はぴくりと青筋を立てる。
なんでだろ、この提案だったら普通じゃない?
箱根学園だってそんな感じの決め方だったんですけど。
「お前ほんと嫌な奴だな」
「なんでですか? だって、優勝狙うなら強い人を入れるのがふつうでしょう? クライマーの枠に入ってる人全員で山登りましょうよ。レース出場権かけて」
オレ、多分一位ですよ。
部長はものすごく嫌そうな顔をする。あ、これ知ってる。呆れも入ってる奴だ。
「ほんと、嫌な奴」
「あはは、やだなあどの辺がですか」
あ、わかった。
なんでオレがへらへら笑うのか。
期待してないんだ。多分。
この人には多分、最初から期待してないからだ。
現に、オレはこのレースに一般参加しようかななんて考えてたくらいだし。
ヒルクライムレースには彼が出る。
どんな山だろうと、オレの隣で楽しそうに走る彼が、だ。
出ないワケにはいかないし、自分の所属してるところが出場するって言うなら出るしかない。
そう思ってこんな話をしているわけだけど、部長はなかなか首を縦に振らない。
いっか、一般参加で。規約にはそういうの書いてないし。
「オレを出したくないっていうなら、もういいです」
扉に向かえば、あのさあと声を掛けられた。
「お前、なんでここの部入ったの? つかなんでこの学校?」
今更の質問だ。本当に、今更。あ、でも入部した時にも言われた気がする?
「んー、部活はあると思わなかったんで、嬉しい予想外で入りました。なんで自転車強い所に入らなかったかっていう意味の質問でしたら、そこは全部落ちたんです。これでいいですか?」
「
……
お前ほんと遅刻癖直せよ
……
」
あ、ばれてる。
「あはは、直さないとやばいとは思ってるんですけどねー。それじゃ失礼しました」
「あー、真波。待て、お前が部活の態度を改めるっていうなら
……
」
結局、オレはレースに出る事になった。
誰だろうなぁ、大学は自由な方だって言ったの。あ、確か荒北さんだ。
自由じゃないですよ。自由にやってますけど。全然、窮屈で退屈だ。
結局オレが提案したように、全員で山登りをした。
のろのろと登るクライマーの人達を抜かしていけば、あっという間にオレは山頂に。
孤独なんて感じなかった。
だって誰も追いついてくる筈がないから。
だってこの山道は、彼と共に山頂を走る為の通り道なのだから!
こうしてヒルクライムレースの参加権を取ったオレは、会場に来ている。
「真波くん!」
全く変わらないハイトーン。
それが聞こえて、反射で振り返る。
「やあ、坂道くん」
久しぶりだ。高校三年生の、春休み以来かな。
電話は全く時間合わなくなっちゃって、掛けるのやめちゃったんだよね。
「久しぶりだね!」
二人で同じタイミングで再会を喜ぶ。
「ふふ、はもった」
「はもっちゃったね」
くすくすと笑い合う。
ああ、坂道くんのこの顔見るのすげー久しぶり。
全然変わっていない坂道くんに少し安心した。
髭とか生やしてたらどうしよう、ってちょっと心配してたから。
「なんか、お互い高校の時と色が逆だね」
「あはは、ほんとだ」
成程、言われてみれば自分が今着ているジャージは黄色の面積が多い。
坂道くんは黒と、青を基調にしているジャージで少し大人っぽく見える。
それでも、童顔のままだからなんともアンバランスな気がするけど。
そう思うと自然と頬の筋肉が少し動いた。なんだこれ、にやけてる。
「久しぶりだね」
「
……
うん、久しぶりの勝負だ」
二人で目的の山を見る。
「あそこ、登ったことある?」
「ないよ!」
「うん、オレもない」
「楽しみだね」
坂道くんは、にこにこと笑う。
坂道くんはいつも、幸せそうに笑うのだ。
「坂道くんってさ、よく笑うよね」
柔らかそうな頬を指先で摘まめば、想像通り柔らかい。
「ひゃ、ひょほ?」
「うん、楽しそうって感じする」
ぱ、と頬から手を離せば、彼は照れくさそうに頬を掻く。
「それは、ですね
……
ま、真波くんと居ると楽しいから、つい笑っちゃうんだと思うよ」
少し予想外のことを言われる。
ぱちぱちと瞬きをしながら、言葉を探していれば坂道くんはオレの頬を引っ張った。
「ま、真波くんだって! よく笑ってるよ」
すぐに離された手を目で追いかけて、眼鏡の奥へ視線を戻す。
「うん、よく言われる」
「ふふ。真波くんの笑顔ってね、素敵なんだよ。つられちゃうくらい」
そう言って坂道くんはまた笑う。
つられてしまう、その言葉を聞いて自分の顔がまた緩んでいる事に気づく。
いつもへらへらと言われる笑い方とは違う。
どっちかっていうと、坂を登ってる時に近い気がする。
多分、『つい笑っちまう』の笑い方だ。
「坂道くんってすごいよ」
つられてるのはこっちの方だ。
キミがまとうその柔らかな空気に、つい頬が緩んじゃうんだよ。
「え? え? すごいって何が?」
困惑してる坂道くんが可愛くて、その顔に穴が開くほど見つめたくなる。
「キミの笑顔が素敵だなって話だよ」
「え!? な、何言ってるの真波くん!?」
そう言って、真っ赤になる坂道くんがやっぱり可愛くて仕方がない。
一人百面相をする坂道君にたまらず噴きだす。
「あっ、からかったの!? もー、変なこと言うと思ったら
……
」
ふにゃりと顔を赤くしながら破顔する坂道くん。
あーあ。同じ大学に行ってたら毎日この笑顔見放題だったのかなあ。
なんて今更のことを思ったりして。
「ううん。やっぱりキミの笑顔はいいと思う」
目に焼きつくほどの、眩しいその笑顔。
瞳の中に閉じ込めるように、オレはゆっくりと目を細めた。
多分、今のオレはふにゃりと笑ってると想う。
2015.02/26山坂ワンドロ(山坂テロ)お題[笑顔]
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