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usagipai
2025-04-21 05:47:38
3804文字
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幽世の縁【幻影ノ戦編】
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幽世の縁 幻影ノ戦編
【幽世の縁 幻影ノ戦編】
夜。
深く静まり返った幽世の空気を、轟音が切り裂いた。
ドォンッ! ドン!!
「
……
!? なんだ、この音
……
!」
カナメは目を見開いた。
耳をつんざくような破裂音が何度も響き渡り、地の底が揺れたような感覚に思わず飛び起きる。胸がざわつく。何かが起きている
——
ただならぬ異常を感じた。
居ても立ってもいられず、寝巻のまま準備を整えると、カナメは寮の中心部へと駆け出した。
月光を切り裂くように走るその先、いつもの庭に見慣れた二人の姿があった。
政府直轄・妖部隊六番隊隊長、安倍鬨宗(あべときむね)。そして、その隊員であり、カナメの先輩でもあるタカキ。
「おお、カナメくん。今ちょうど呼ぼう思ってたとこや、ええタイミングやわ」
安倍は、いつもと変わらぬ調子で振り返る。
だが、その言葉とは裏腹に、彼の背に流れる空気は張りつめていた。
「実はな
……
この幽世に、奇襲がかけられててな。隊も各所に動き出しとる。
……
せやけど、詳しいことは行動しながら説明する。とりあえず、出るで」
「はっ、はい!」
カナメは即座に返事をした。
その横で、タカキは険しい表情のまま無言で頷く。彼の顔にも緊迫が走っている。
かつてない異変の始まり
——
それは、幽世を巻き込んだ大戦の幕開けだった。
感じた事のない逼迫感を肌で感じながら、改めて周りを見渡す、街はすでに混沌としており
燃え上がる建物、響く悲鳴、うずくまる妖たちと駆け回る者たち。
――
ここが、本当にあの“笑って暮らしていた”街なのか?
「ひどい
………
」
カナメは立ち尽くす。
温もりの詰まった幽世の街が、まるで地獄のような様相を呈していた。その隣で、安倍は状況を確認しながら口を開いた。
「今は仕事に集中や、カナメくん。とりあえず春のエリアにはタマ、夏には三番隊隊長。秋には五番、そして二番が
……
冬のエリアはまだ確認取れてへんけど
――
僕らはとりあえず
……
ッッ!」
そこで言葉が切れた。
安倍の足が不自然に止まったからだ。
「
……
安倍さん?どうし
――
」
カナメが問いかけようとした瞬間、視線の先に見慣れた姿があった。
それは、かつて空腹で倒れて、数日共に過ごした妖
――
ロク。
驚いたここだっていつ崩壊するか、わからない
「ロクさん!?どうしてここに
……
!危険です、すぐに避難を
……
!」
そう言ったカナメの声に、ロクは何も言わず、ただ穏やかに微笑んでいた。
その優しい笑顔に、違和感が混じる。
なぜ、この修羅場で、こんな無防備に?
「はぁ〜
……
なるほど。僕を止めに来たんやろ、ジブン
……
ロク。いや
…
此度の奇襲仕掛けた人物かな
…
」
「さすが〜安倍鬨宗、そうだよ?君って部隊で最強だろ?足止め出来るの俺くらいだろうしね〜来ちゃった」
その言葉に、カナメの中で何かが大きく崩れた。
「
……
え?」
止めに来た?
ロクさんが?
動揺するカナメの肩を、タカキが強く掴んだ。
「くそ!しっかりしろ、あいつは敵の一員だ、今回の襲撃に加担してんだよ、馬鹿!」
「え
……
!?」
荒々しいタカキの言葉にハッとすると
ロクはその言葉に少しだけ眉を下げて、それでも優しげに笑った。
「ははは、你好、カナメくん。そしてごめんね。その子の言う通り。今の立場で言えば
――
敵対、してるってことになるのかな?」
その瞬間、空気が裂けたような緊張が走った。
安倍とロクの視線が交差する。
仲良しの振りをしていた日々は、もう遠くのように感じる。
「タカキくん、カナメくんを連れて先に行って。冬のエリアや、多分避難が完璧にでてへんひとまずは救助優先。
……
頼んだで。」
「はっ
……
!」
「安倍さん
……
!でも
……
!」
「ははは〜大丈夫や、君はやるべきことをやって、な?」
背中を押すように、安倍は微笑んだ。いつもの飄々とした安倍の笑顔
…
カナメ達は、後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にする上司の無事を切に願いながら
カナメとタカキは、妖たちを避難させながら息苦しさを抱えたまま冬のエリアへと向かっていた。情報を掴むため、ざわめく心を落ち着かせながら足を進める。
冬のエリアは、息を呑むほどに静かだった。
凍りついた家屋、軋む氷の橋、白銀に染まった道の上に、人影はない。
ただ冷たい風だけが、町全体を細く深く
――
まるで刃のように
――
吹き抜けていた。
その中心に着いた頃、違和感を覚えいた
「
……
やっぱ、静かすぎるな」
そう呟いた彼の隣で、タカキが周囲を見回す。
「火の回った他のエリアとは違いすぎる。何かがおかしい
……
いや、“整いすぎてる”って感じだな」
タカキの声は、やや低く、緊張を含んでいた。
この冬の町には確かに異変があった。
妖たちを襲う“何か”がいる。救助した妖を避難させるために動く中で、二人は確実にそれを感じ取っていた。
カナメはその背に感じる寒さが、ただの気温だけでないことに気づいていた。
妙な緊張。空気が張りつめている。
そして、突如。
――
空気が、軋んだ。
タカキが剣に手をかける。
「ッッ気をつけろ
……
来るぞ」
その言葉と同時に、空間がねじれるように歪んだ。次の瞬間、そこに“炎”が咲く。氷の町に、決して在るはずのない、赤く滾る火の花が、空から舞い降りた。
「やぁ、ちょうどいいとこ来たねー。カ・ナ・メ♡」
現れたのは、気の抜けた緩い声で、炎を纏った青年だった。その姿はどこか遊び人めいており、笑みは軽い。しかし、そこに漂う空気は、全く“軽くない”。
「
……
あなたは
…
どうして俺の名前を、というか誰ですか
…
」
カナメが身を引きながら問うと、その男は指をくるりと回しながら答えた。
「おぉ!あーごめんごめん、俺は晨焔(しんえん)。ま、君にとっては“兄貴候補その1”ってとこかな〜?」
「兄貴候補?
……
」
晨焔と名乗る妖の発言が意味不明すぎて一瞬フリーズしてしまう、この状況で何を言っているんだと不思議に思っていると晨焔の前にタカキが出た。
「何わけわかんねぇこと言ってやがる、ていうかその感じ、今回の襲撃の首謀格かお前」
「そんな堅苦しい言い方、やだなあ。僕はただ、弟もどきに会いに来ただけだよー?」
晨焔の笑みは壊れかけの硝子細工のように繊細で、どこか底知れなかった。その視線は一切タカキに向かない。ただひたすら、カナメを見ていた。
「
……
俺のこと、知ってる
…
?」
「もちろん。知ってるし、ずっと見てたよカナメ。俺と黎昊(れいこう)そして“あの方”にとって
――
君はとっても特別だからね?」
「弟分って
……
さっきから何言って
……
!」
言葉を交わせば交わすほど、掴みどころのない会話に、カナメはモヤモヤとした冷や汗をにじませている、
――
その瞬間、爆ぜた。
先程とは打って変わり、地面が破裂し、火柱が突き上がる。タカキが剣を抜き、カナメを庇うように飛び込んだ。
「下がれッ!!」
「うわッ!」
晨焔は斬りかかるタカキを、舞うように躱す。
その動きは軽やかでありながら、計算され尽くしていた。ただの狂人ではない、技を知っている者の動きだった。
「(今の避けた??
…
それにさっきの身のこなし、只者じゃない)」
カナメは息を呑む
「うわぁ、急に切りつけてこないでよねー危ないッッ」
晨焔は途中で言葉を遮り、何かに気付いた、後ろを振り返ると、その隙を突くように、遠方から氷の刃が走る。霧が巻き、氷の斬撃が晨焔の足元を凍らせた。
「
……
おや?今の気づかれてしまったのか、ふふ私の腕も鈍りましたね」
霧の中からゆらゆらと姿を現したのは、味方の1人──第四番隊隊長・朧宮 零(おぼろみや れい)だった、その瞳は優しげで、いつものように言葉遣いも柔らかい。だがその全身からは、張り詰めた“凍気”が滲んでいた。
「!!朧宮さん」
「あぁ、お待たせしてすみません、ここら一体の敵は殲滅していたら、遅れてしまいましてね」
「うわー。だから危ないって〜てかこっちに送った奴ら全員やっちゃったの〜?はぁー遊んであげたいけど、ごめんね? 今日はちょっと
…
都合が悪いナー」
晨焔は朧宮から目を逸らすことなく、カナメの方をちらりと見る。
「だって、今日は目的があるから」
「
……
目的?」
「そう。君だよ、カナメ」
そう言う晨焔の瞳は心臓を抉られるような深い不愉快感を与えてくる
「っ
……
!」
こんなの自分が倒してきた妖怪の比じゃない、それを肌でビリビリと感じる、そうこうしてるうちに、晨焔が手を差し伸べる。火の輪を描くように。その掌は、まるで捕まえるための網のようだった。
「ついてきて? ね? 痛いことはしないからさ。
俺たちのところに──遊びに、おいで?」
「ふざけんな!! そんな誘いコイツが受けるわけねぇだろう!!」
タカキが激昂し、再び斬撃を叩き込む。
金属が火花を散らし、晨焔がひらりと後方へ跳ねる。
「
……
俺、お前みたいな熱血、無理だわ〜。じゃあ
―
少し、力ずくでいこうか。」
その瞳に宿る炎が、一気に燃え上がる。
次の瞬間、戦場は地獄と化した。
紅蓮の炎と白銀の氷がぶつかり合い、晨焔の蛇腹剣と鋼の刃が激しく交錯する。
静まり返っていた町は、もはや“静寂”ではいられなかった。
まだこの時、彼は知らなかった。
この戦いが、自身の運命を大きく変える“引き金”になることを──。
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