ahotootoha
2022-09-08 00:02:57
1813文字
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司類版ワンドロワンライ お題:文化祭準備

勝手に来年度 モブ注意!

「天馬ー、樹出来たんだけど、そっちの崖とまとめて置いてていいんだっけ」
臨時の倉庫と化している多目的室、入口近くに立っていた男に俺は声をかけた。
「そうだな……って、一人で持ってきたのか⁈ オレにも手伝わせてくれ、ここは持っていいんだよな?」
「あぁ、助かる」
神代と天馬が居る今年度の神高三年生は、端的に言って勝ち確だと思う。別に勝負する訳でもないけど。
毎年恒例になっているらしい三年生合同の演劇。一クラス単位で活動する一年二年と違って役者の数はもちろん、大道具小道具衣装その他諸々、全部に対して割ける人員が段違いになる。『受験や就活が控える学年でもある分、一人あたりの負担が軽くなるように』……って学校側の配慮ではあるんだろうけど、正直『最後の文化祭くらいはっちゃけようぜ!』ってメンタルの奴の方が多いだろう。神高の風土的に。そんな中、年一文化祭どころかあのフェニランで年がら年中ショーをやってて、なんか今では宣伝大使として各地を飛び回ってるらしい二人がこの学年には居るときた。天馬がシュウ役兼座長、神代は総合演出担当として加わっているというのだから、ぶっちゃけ俺達大道具班とかの裏方が作る物を作りきりさえすれば、本番の舞台の上は何があってもなんとかなる気がしている。
「ってかさ、天馬ってバイトでもなんか劇やってる訳じゃん。こっちでも役やるの疲れねーの? あとセリフ混ざったりとか」
えっちらおっちら運びあげた樹を下ろして、俺は訊いてみた。
「いいや? むしろこうして同い年の同級生達と力を合わせて一つの劇を作り上げられる、というのは新鮮で楽しいぞ! セリフについては、まぁワンダーランズ×ショウタイムで演っているのとは役が、人が違うしな」
「ふ〜ん、そういうもんか」
俺の感覚だとバイトと同じ事やらされるのって大分嫌だけど、好きでやってるバイトだと違うみたいだ。っていうかもう、受け答えの雰囲気がバイトの域超えてる気がする。
残りの大道具の出来具合、スケジュールの確認を天馬としていたら、廊下の方から声が聞こえてきた。
……〜、という形で、できそうかい?」
「そだな、それならオレでもやれそう!」
(お、バイトの域超えてるもう一人)
神代とカジケンが、どうやら照明切り替えの動きの調整をしていたようだ。
……なぁなぁなぁ、ここだけの話さ、司がみゆちゃんとイチャイチャするところ見るのってどうなん? つーかアスミ役、実はお前がやりたかったりしねーの?」
(うわ出た、カジケンのグイグイムーブ)
あいつのやたら距離を近づけてくる会話運びは同じ部活で散々見てきてるものの、変人相手でもお構いなしらしい。
というかカジケンに限らず、なんとなくだけど、俺達旧2Bより旧2Aのやつらの方が神代に馴れ馴れしい気がするのはなんか納得がいかない。
(ってそうだ、今は大道具のスケジュールの方、を……
すっかり廊下側に持っていかれていた意識を室内に、戻したものの。
…………
天馬は天馬で廊下のやり取りに聞き耳を立てているところだったみたいだ。
(そりゃ恋人がどう返すか、気になるか……
んじゃ心置きなく俺も聞き耳立てとこう。
うーん、と曖昧な相槌の後に返された神代の答えは、こうだった。
「イチャイチャと言われても、付き合っているのはシュウとアスミであって、司くんとみゆくんではないからね。それに、役と混同して逐一羨んでいては、今にこの世の役者全員へ嫉妬する羽目になってしまうよ」
(よし、よく言った神代)
現在まで大して交流せずじまいだけど、昨年度を経て、神代を見守る空気をうっすらと漂わせるようになったのが旧2B一同だ。
そう動揺した様子もなさそうな声色に安心していると。
……好きだ」
ポロっと、目の前の男、天馬司は、廊下へと視線を向けながら、本当にポロっと。たしかにそう呟いた。
……そっかーマジかー」
「?! あッ、いや、いやーはっはっはっは! 今オレは何かを言ったか?!」
「イイエ何ニモ言ッテナイデス」
「そうか、そうだな! いや言っててもマズくはないはずだが……あぁ、気にしないでくれ、ただの独り言だ!!」
俺が演技がからっきしなのは言うまでもないが、天馬もアドリブの演技は苦手なのかもしれない。お互いギクシャクした応答をしている謎時間は、廊下の二人が多目的室に入って用件を伝えに来るまで続いた。