倉木
2025-04-20 14:18:23
2088文字
Public 他🐢
 

tot レオドン

お互い無自覚矢印未満な感じ


先頭を歩くレオナルドの足取りは軽快だった。
いつもなら背負っているのナップサックを振り回し、近くを通った女性が引き気味に距離を取る程に豪快だ。
少し後ろから歩いている兄弟たちの冷めた眼はまったく気付いていない。
他人の振りでもしたいくらいの奇行ふりだが何せ有名人、この世界に四匹しかいない生物で知らない振りは無理がある。

「リーダーは朝でも元気がいいね」

ふたりの兄弟に挟まれたドナテロはげんなりとした調子で言った。
嫌味たっぷりなはずの言葉を、振り返ったレオナルドは満面の意味で受け止める。

「当然だろ!俺はかっこいいからな!!!」

元気溌剌、そんな言葉が良く似合う。
笑顔と元気が何より大事だと豪語する教師からは花丸満点をもらいそうなレオナルドを疲弊した様子で見やり、昨晩の寝不足もあってあくびをひとつ。
決してつい出来心で夜更しをしたことだけが原因というわけではない。
寝れずについ趣味にいそしむことになったのは、夜の見回り中に起こった戦闘によるアドレナリンがうまく消化できなかったせいだ。
学校に行ったら行ったで友人たちに会えば眠気も覚めよう、今のこの道中だけが気だるい気分を享受する時間だった。
それなのにそんな緩やかな朝を壊して家からずっとこの調子のレオナルドには正直辟易する。
隣から小突かれた、その力は強くドナテロの身体が少し傾ぐくらいの強さで遠慮がない。
この1カ月で更にドナテロより一回り大きくなったラファエロは行動に反し小声で囁いた。

「おいドニー、アイツなんとかしろよ」

「僕のせいなの!?」

視線を向けたミケランジェロも肩を竦めながら頷く。

「レオは確かに自意識過剰なところあるけど、ああなったのは昨日ドニーが褒めたからでしょ」

的を得た正論にドナテロは唸ることしかできない。
その答えはとっくにドナテロの中で出ていて、でもそれを認めたくなかっただけなのだ。
昨晩の戦闘でレオナルドは大活躍だった。
落下物で視界を遮られたドナテロを救出し、敵をさばきつつ通りがかりの人に降りかかる瓦礫すら綺麗に処理してみせた。
地面に着地したレオナルドは胸に手を当てて大きく肩で息をしている。
硬い表情である彼の背中を強く叩き、ドナテロは興奮したままで言ったのだ。

「すごい、さすがリーダー!かっこよかったよ!」

大立ち回りに対する称賛は行動として実に正しい。
だって本当にかっこよかったし、まるで漫画に出てくるヒーローみたいなアクションを目の前で見せられていつになく興奮したのだ。
問題だったのは、責任重大な場面で緊張度マックスで乗り切ったレオナルドにその言葉がクリティカルヒットした。
その些細なズレでこんなことになっている。

「時と場所を考えないとダメだろ」

よりによってラファエロからそんな事言われて言い返すこともできない。
大きな壁を共に超えたレオナルドは確かに前に比べて率先して前に出るようになったし、指示することも大分様になってきた。
でもこれがあるとせっかく行ったプラスポイントが一気にマイナスまで逆戻りだ。

「もうちょっとときめきポイントがあれば僕だって、」

ドナテロの口から零れ落ちた言葉は、思考の海に沈んだ彼にとって無意識のものだったのだろう。
その直後辺り一面に響き渡った大声で、完全に夢散してしまった。

「うわぁぁぁぁっ!!」

飛び出してきたリスの集団がレオナルドの足元を駆け抜ける。
近くの公園で派閥争いでもあったのだろうか、後ろにいたせいで被害にあっているのがレオナルドだけというのもまたシュールな絵面だった。
踏みつけないように足元をばたつかせたレオナルドの振り回していた鞄が見事に水道菅に引っ掛かり、勢いのまま後ろに倒れこむ。
転ぶ直前で受け止めたのは、一歩前に出たドナテロだった。
驚きで目を大きく開いたレオナルドの視界には、満面の笑みのドナテロが映っていたことだろう。

「ごめんね僕も間違うことがあるみたい、レオは可愛いよ」

リスの大群という嵐の去った小路はしばし呆然とした静寂に包まれていたが、たくましい街の人々は何事もなかったかのように日々の生活に戻っている。
巨大なミュータントが街を踏み倒した経験をしてしまえば小動物の小競り合いなんて些細なことなのかもしれない。
ただひとり巻き込まれたレオナルドだけはそっと地面に下ろされ鼻歌交じりに先に行くドナテロを見送り数秒、はっとしたように立ち上がる。

「ドニーの方が可愛いだろ!おい無視するなよ!」

近付く前に走り出したドナテロを追いかけながら聞こえる声は既に遠く。
先程の騒ぎよりもずっと注目を集めていることにふたりは気付いていないだろう。
ドナテロの呟きを唯一拾ってしまったミケランジェロは腕を組み首を傾げた。

「で、あれは本気なの?どうなの?」

「一番かっこいいのは俺だぞ!!!」

「うーん、前途多難」

通り抜ける車の大きなクラクション。
朝のこの道は車通りも多く往来が激しい。
大小様々、毎日がトラブル続きだ。