煩悩
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無題

肩甲骨にお揃いのタトゥー入れてるサムホア エモい

ずっとホァたそ視点

サムに「お揃いのタトゥーを入れないか?」と言われた時、俺は天にも昇る心地だった。

空を自由に翔けるファルコンに憧れマイアミを出て数年、まさか自分がここまで登りつめるとは思ってもみなかった。
成功したオタクという表現があるそうだが、それはまさに俺のことを言うのではないか?と踊り出しそうになったのを今でも覚えている。

「もちろん!でもどうしてタトゥーを?」

なんとか興奮抑えこみ、俺はサムに理由を問うた。
すると彼はニヤリとして俺にこう言った。

「俺とお前にしか分からない秘密が欲しくて」

あぁ、この人はどれだけ俺を喜ばせれば気が済むのだろうか?

***

サムの様子が変わったのはタトゥーを入れた数ヶ月後のことだった。
普段はしないような甘い行為をするようになったのだ。
具体例を挙げよう。例えば、夜寝る前に必ず「愛してる」と言う、朝起きた時タトゥーにキスをする。この他にも色々あるが、挙げればキリがないのでこの辺で止めておく。とりわけこの2つにおいては毎日のルーティンにする程にこだわっており、特に、このタトゥーにキスをするというルーティンには異常な執着をみせることがあった。

「おはよう、サム」

「おはよう」

午前7時。洗面所で顔を洗っていると、俺の後ろに立つサムの姿が鏡に映った。
昨晩仕事が長引いたサムは、少し遅めに起床したようだ。いつもであれば俺よりも10分早く起きて洗面台を占領しているので、こういった朝はとても珍しい。

「よく眠れた?昨日大変だったでしょ」

「あぁ、まあ」

タオルで顔を拭きながらサムに声をかけるが、腑抜けた返事しか返ってこなかった。なんだよ「あぁ、まあ」って。
俺の話を聞いているんだか聞いていないんだか、上の空で返事をするサムに俺はこっそりと苦笑いをした。
サムは全てが完璧だと思っていたけれど、朝は少し苦手なのだ。
そんな折、背中に柔らかいものが触れた。
「ああ、いつものか」と思い振り返ると、サムが俺の肩甲骨に口付けをしているのが目に入った。サムがキスをしているその場所は、2人だけの秘密が彫られた大切な場所だ。俺は左の肩甲骨に左翼のタトゥーを、サムは右の肩甲骨に右翼のタトゥーを入れている。お揃いの翼だ。同じファルコンの名を背負ったもの同士がお揃いとして入れるのなら、やはり翼がふさわしい。(と勝手に思っている)

……今日も無事を祈ってる」

少しの間を空けて、ようやくサムが口を開いた。そして俺も同じようにサムの翼に口付けをして、こう言ってやる。

「サムもちゃんと帰ってきてよね!」と。

***

タトゥーを入れて様子が変わったサムを心配していないわけではない。むしろサムの仕事に支障が出るのではないかと、日々戦々恐々としている。
俺たちは恋人である以前に祖国を守護するヒーローなのだ。国民がそう望んでいることも理解している。

•••とは言うものの、そんなの綺麗言でしかないし、正直もうどうだっていい。正直に懺悔をしようと思う。

“2人だけの秘密”に溺れているサムを愛おしく思ってしまう瞬間がある。
あのサムがタトゥー1つに振り回されているのを見ると、言葉に言い表せない高揚感を抱き、喜んでいる自分がそこにいる。不安、恐怖、心配、喜び、全ての感情がごちゃ混ぜになった表情で背中のタトゥーを見つめるサムをどうしようもなく愛おしく思ってしまうのだ。
誰がサムを狂わせてしまったのか?かつての相棒か、政府か、国民か、その他大勢のヒーローか、はたまたサム自身が勝手に狂ってしまったのか?そういった疑問が今も頭の中をぐるぐると駆け巡っている。一時も休まる時間がない。
ただ、それと同時にうっすらと理解し始めていることもある。
それは「サムをこんな風にしてしまったのは他の誰でもなく、俺なのではないか?」ということだ。
もしそれが脳内の疑問への答えになるのだとしたら俺はその状況を甘んじて受け入れようと思う。

***

「ホアキン!!」

サムの叫び声と共にドアが「バン!」と開いた。任務を抜け出してきたのかだろうか、戦闘スーツを着たままである事などおかまいなしに、ドスドスと足音を立ててベッドに近づくサムに、俺はへらっと笑って見せた。

「大丈夫、生きてるよ」

***

↓以下書きたい部分だけ

肩甲骨に彫られた俺のタトゥーを指でなぞりながら、サムは静かに呟いた。

「このタトゥーを見ていないとお前が生きてるって実感できないんだ」

サムはそう言った後口を閉ざしてしまった。背後に感じる気配だけがサムの存在を示してくれる。

「ねえ、どうしたの、」

何も喋らないサムに不安を募らせ振り返ると、そこには何かに耐えるように下唇を噛むサムの姿があった。

「大丈夫、大丈夫だよ。ここにいる」

思わずサムの背中に腕を伸ばし、ゆっくりと撫でてやる。サムの耳元で「大丈夫」と囁きながらユラユラと揺れると、強ばっていた体が段々と緩んでいった。母親が子どもを安心させている時って、こういう気分なんだろうか。


ああ、可愛い可愛い俺のサム。
あなたの翼を守るのも、剥ぐのも全部俺がやってあげるから。だから、俺の翼を守るのも、剥ぐのも全部ぜーんぶあなたにやってほしいんだ。
2人だけの秘密を抱えることになったあの日、俺の胸の内にはドス黒い何かが住み着いた。そしてソイツは未だ消えずに俺の胸の中でくすぶっている。