セキエイ学園。カントー地方セキエイ高原の近くにそびえ立つこの学園は、ポケモンリーグで活躍しそうな優秀な人材を集めている。その校門に、一人の女性が立っていた。紫のショートヘアーに青のデニムが特徴的だ。校舎を見上げ、その女性は口角を上げる。
「久しぶりだなあ…変わんないね」
女性の名はアン。かつてこのセキエイ学園に在籍して高い成績を収めたトレーナーで、現在もポケモンリーグで数々の活躍を残している。講演会の依頼を受け、アンは母校であるここセキエイ学園を再び訪れた。
「んー…待ち合わせには早いし…ちょっと中を覗いていこうかな」
アンはサングラスをかけて校門をくぐる。右へ左へ、顔を向ければ生徒たちがポケモンと技の練習をしたり、ご飯を食べたり、お昼寝をしたり、在学中と変わらない学園の姿が映った。バトルコートではやっぱりバトルが行われている。奇しくもバトルしているポケモンはミジュマルとニャオハ。初めてバトルした友人の顔が思い浮かぶ。掲示板を見ると、本日の講演会のポスターがあった。アンと、そしてもう一人。冒険者として有名になった友人の写真が貼られているのを見て、アンの口角がまた上がった。
しばらく歩いてふと空を見上げると、屋上の柵に寄りかかる女子生徒が目に入った。その思い詰めたような暗い顔をアンはしっかりと捉えた。すぐに校舎に入り、階段を駆け上がっていく。屋上の扉を開けると、まだその女子生徒はいた。グラサンが落ちるのも気にせず駆け寄っていく。
「ストップストーップ!!早まらないでえ!!」
「えっ?だ、だれ?なんですか?」
「ダメだよ!!人生これからなんだから!!」
「ほんとになんの…あ!あなたはアンさん!!きゃー!!」
「…あ、あれ?」
さっきまで見えていた人生を諦めた少女はどこに。アンが首を傾げていると、目の前の女子生徒は何か書くもの、書くものとポケットをまさぐっている。
「ええっと…君、飛び降りようとか思ってたわけじゃ…ないのかな?」
「飛び降りるなんてそんな…!私にそんな勇気ないですよ!!私はここの噂に期待して来てみたんです」
「噂?」
アンが聞き返すと、女子生徒はスマホロトムを開いて早速説明を始めた。
「えっと…昔ここである女子生徒が立っていたら、突然空から男の子が迎えに来たそうなんです!!そして女子生徒はその男の子と旅に出て、なんと結ばれたって…!!それ以来、ここで待っていれば運命の人と出会えるって噂なんですよ!!」
「…そう」
その女子生徒が誰なのか、アンにはすぐ分かった。あの日見送ってから、確かに二人のことは学園中の噂になっていたが、まさかここまでとは…もはや伝説と言っても差し支えないレベルの噂話にアンは少し呆れ気味だ。
「じゃあ君は運命の人を求めてここに…?」
「それもあるんですけど…最近、バトルが上手くいかなくて…ちょっと一人になりたかったんです。せっかくだからここに来てみたって感じで」
「そっか。バトルのことなら、私少し相談に乗ってあげるよ」
「いいんですか!?」
「うん。困っている後輩のためだもん。なんでも聞きなさい」
アンがそう言うと、女子生徒は大きな返事をした。バトルでやりたいこと、パートナーとの心の通わせ方、おすすめの特訓方法、色々と教えている間にチャイムが鳴った。
「ありがとうございました!私がんばります!!」
「うん。ポケモンリーグで会えるの、楽しみにしてるよ?」
「はい!…私、やっぱり今日ここに来てよかったです」
女子生徒を見送って手を振ると、ポケットの中のスマホロトムが鳴った。
『アン?今着いたけどどこにいるの?待ち合わせ場所校門だったよね?』
「あーごめんごめん。早く着きすぎてちょっと中見てたんだ」
『そっか。じゃあ私も中入るから職員室の前で合流でいい?』
「うん。にしても、すごい噂になってたよ」
『?え、なにが?』
「なんだろうね〜」
画面の向こうで首を傾げる友人を見て、アンはくすくすと笑っていた。
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