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望月 鏡翠
2025-04-18 23:57:43
862文字
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日課
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#1697 「ハイヒール」「煙草」「憧れ」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
憧れは憧れのままにしておいた方が良かったのかも知れない。少なくとも身の丈に合わせる努力をするべきだった。
初めての恋人も、パーティーも、思い出は最初から最後まで最悪だった。こんなつまらないパーティー抜け出してしまおうよを、こんな胸が踊らない文脈で使うことがあるのだと驚いた。
抜け出したというよりも、居場所がなくて逃げ出したのだ。履いて出かける前に足を慣らしておかなかったから、慣れないハイヒールでストッキングは破れていたし、更に血も滲んでいた。
少しも歩く速度を合わせてくれない男の背中を追いかけるのに必死で、絆創膏を貼る暇もなかった。
ヤニが切れて不機嫌になった彼が煙草を買いにコンビニとき、私はようやく自分の踵がどんな有様になっているのか見て、乾いた血が赤茶色に広がっているのを見て泣きたくなった。
私が泣きたくなっているのに、彼は不機嫌そうだった。
臭い煙を吐き出しながら、踵を気にする私を睨みつけた。吸いかけの煙草を握りつぶすと、さっさと歩き出そうとする。
慌てて追いかけようとした私は足がもつれて転んだが、手を差し伸べてはくれなかった。
「自分よりでかい女嫌いなんだよ。なんでそこで更にハイヒールとか履いちゃうのかね」
冷たい目で睨みながら、彼はそういった。
パーティーにおしゃれして何が悪いの。最初は背が高い子も好きなんて、調子がいいこと言ってたくせに。機嫌が悪いから八つ当たりしてるだけなんじゃない。
それを言うなら私だって、おしゃれしてるときに煙草を吸う男は嫌い。
脱げた靴を拾う。靴の形が崩れることも変な場所にシワが入ってしまうことも気にせずに力強く握りしめると、目の前の憎い男の顔面を、思い切り殴り飛ばした。
こんな歩きにくい靴履いてくるんじゃなかったという後悔は、その場で消えた。
やっぱりハイヒールって最高じゃない?
だってぶつけたときに、あんなに痛そうだ。
アスファルトを踏み締めて、私は裸足で駆け出した。何よりも、自由を感じられる夜風が頬を撫でていた。
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