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柚子子
2025-04-18 22:47:33
7579文字
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ベリーベリー
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緑谷と爆豪と焼肉(+8)
爆豪長編『ベリーベリー』の番外編。本編最終話および掲載済の他番外編のネタバレを含みます。
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※出茶要素あります
苗字
さんとかっちゃんと三人で食事をすることになったのは、冬の寒さもゆるみ始めた三月なかばのことだった。
三月の教員職というのは、文字通り目が回るように忙しい。けれど僕の場合、今年は学外での活動との兼ね合いもあって、比較的ゆとりを持ったスケジュール管理をしていた。そのおかげで、珍しくこの時期でも余裕がある。僕とかっちゃん、
苗字
さんのなかで今一番忙しいのはかっちゃんだったから、かっちゃんが「この日ならいける」と日程を決め、僕と
苗字
さんはその決定に粛々と従った。
三月某日、駅前で僕は
苗字
さんと落ち合った。冬物のコートをまだきっちり着込んだ
苗字
さんは「夜はまだまだ冬の気温だねぇ」と、挨拶もそこそこに当たり障りない天気の話を口にして笑った。
「
苗字
さん、久しぶり」
「ね、本当に。緑谷くんのご活躍の噂はかねがね」
少しだけ鼻の頭を赤くした
苗字
さんは、やけに意味ありげな視線を寄越す。なんとなく気恥ずかしくて、僕はついつい頬をかいた。
学生の引率で学外に出ていたタイミングで強盗事件とはちあわせ、犯人確保に僕が一役買うことになったというニュースが、ちょうど一昨日に出たばかりだ。
苗字
さんが言っているのは、おそらくそのニュースについてだろう。
「
苗字
さんに会うたび、そんな感じのことを言われてる気がするんだけど」
「いいことなんじゃない? つねに世間の口の端にのぼるっていうのは、ヒーローとしてはむしろ歓迎される状況なんだろうし。閑古鳥が鳴いて廃業するよりは」
「それはそうなんだけど、今回は本当にたまたま居合わせただけだよ。それに僕の場合は、本職ヒーローでもないからね」
「でもさ、デクの活躍がニュースになって、大喜びする人間がいっぱいいるわけでしょ。だったらもう、本業でも兼業でもそんな変わんない気がするけど」
「そう言われると、そうなのかな
……
?」
「デクの活躍を
肴
さかな
に飲むお茶はうまい、っていう人間が、我が家にもひとりいるからね。本人はそんなこと言わないけど。だからデクにはこれからも、がんがん活躍していただいて」
「はは
……
」
にこにこ言う
苗字
さんに、僕は追従するように乾いた笑いを返した。
かっちゃんが僕の活躍、というか活動を注視していることは知っている。彼はアーマー出資の代表のようなものだから、実際の稼働状況について注目するのも当然といえば当然だ。くわえてかっちゃんは折に触れて僕を、それこそ本職として、同業に引っ張ろうとしている節がある。
と、
苗字
さんが、ぱんと手のひらを合わせた。
「そういえば、その本人からさっき、仕事で遅れるから先に店に行っとけって連絡きてたよ」
「あ、そうなんだ。やっぱりかっちゃん忙しいんだなぁ」
「サイドキックいないから大変なんじゃない?」
「結局まだ採ってないんだよね。雄英からもちょこちょこ希望者は出てるんだけど」
「もう意地になってる感あるよね」
そんな話をしつつ、僕と
苗字
さんは店に向かい歩き始めた。
金曜夜の繁華街はにぎわっている。このところ外食といえば、もっぱら雄英の近所で済ませていたから、こうして足を伸ばすこと自体、少し久しぶりだった。
大声で話しながら歩く会社員たちや、学生らしきグループをよけながら、目的の店を目指す。僕ははじめて行く店だったけれど、
苗字
さんは以前にも行ったことがあるらしい。スマホの画面にマップを開きつつも、ほとんど画面を見ることなく、ずんずん迷いない足取りで歩いていく。頼もしい。
吹き付ける夜風の寒さが凍みて、コートのポケットに手をつっこむ。
「それにしても、緑谷くんとふたりでちゃんと話すのって、本当に結構久しぶりじゃない?」
「大学のとき以来だよね」
「お互いあれからいろいろあったよねぇ」
「本当に」
同じ大学に一年差で入学したので、大学時代の僕と
苗字
さんはそれなりに親しくしていた。当時はときどき、ふたりで食事にいったりもしたものだ。
もちろんそこに、下心のようなものは一切なかった。むしろ下心の対極にあるような事情があったりもしたのだけれど、まさかそんな事情を
苗字
さんが知るよしもない。
当時の事情に思いを馳せ、僕はしみじみ呟いた。
「本当に
苗字
さんとかっちゃんが結婚するんだもんな
……
」
「それはもういいんだって」
苗字
さんが照れたように、顔のまわりで手をはたはた振る。そういう表情の
苗字
さんを見るのは珍しかった。僕は続ける。
「ふたり、もう結婚して一年くらい経った?」
「とっくにだよ。まだ一年半は経ってないかな、ってくらい」
「じゃあもうすっかり
……
」
「すっかりって何」
照れ笑いを街灯に照らされた
苗字
さんを、僕は微笑ましい気分で見た。
苗字
さんの左手の薬指には、結婚指輪と聞いて連想するよりはずいぶんと幅太の、しっかりとしたリングがはまっている。
苗字
さんの女性らしい指先には、ともすれば不似合いになりかねないような太さの指輪は、けれど不思議なことに、
苗字
さんの印象にしっくりきていた。
僕の視線が指輪に向いていることに気付いたのだろう、
苗字
さんが少しはにかんだように眉を下げて、右手の指先でつるりと指輪を撫でた。
「というか、たしかに結婚はしたけども、本当に別に、全然昔と変わらないからね
……
。さすがに中学のときみたいなギスギスはないけど、高校生のときとは本当に、そんなに変わんないよ」
「そういうもの?」
「相手が爆豪くんだからなぁ
……
」
苗字
さんの言葉には実感がこもっている。実際、
苗字
さんがかっちゃんを呼ぶ『爆豪くん』という呼び方にも、その事実は表れているような気がした。
あいつら未だに苗字で呼び合ってるぞ、と事前に相澤先生から聞いてはいた。夫婦のかたちだっていろいろあるのだろうし、
苗字
さんとかっちゃんの場合は、こういう感じなのだろう。
そんなことを呑気に考えていたところで、
「むしろ緑谷くんの最近の話の方が聞きたいんだけど」
「えっ!?」
苗字
さんが反攻に転じた。完全に油断していた僕は不意をつかれ、裏返った声で返事をしてしまう。
「緑谷くんこそ、その後どうなってるの? 麗日さんとはさぁ」
「いや、その、麗日さんとはその、いい友人関係というか」
「というか?」
追撃の手をゆるめない
苗字
さんに、僕はしばらく、口の中でもごもごと応答していた。とはいえ、この手の話題で女子を相手に誤魔化し逃げ切ることができるはずもなく、
「おかげさまで、順調にお付き合いを
……
しています
……
」
「よかったよねぇ」
やはりもごもごと、しかしはっきり言質を引き出された僕に、
苗字
さんは満足そうにうなずいた。てっきり
苗字
さんはそういう話に興味がないタイプかと思っていたけれど、意外にもそういうわけではないらしい。
「ちなみに
苗字
さんは、その
……
どこまで何を聞いて知ってる?」
「ざっくりとは聞いてる、って程度かな」
満足げな顔のまま、
苗字
さんが答える。
「この間ちょうど、芦戸さんとか麗日さんとか、雄英の女子何人かと私でごはんに行ったんだよね。そのときちょっとだけ聞いて、でも麗日さんが照れ照れで深くは聞けなかったから、緑谷くんから聞こうかなと思って」
「
苗字
さんってそういう話するんだ」
「そりゃあまあ、昔よりはね」
そんな話をしているあいだに、店の前に到着した。
あとから連れが来る旨を伝え、僕と
苗字
さんだけ先に席に通される。個室の中央におかれた焼き肉用の網をはさんで、僕と
苗字
さんは向かい合って座った。ちなみに焼き肉を指定したのはかっちゃんだ。
席に腰を落ち着けると、
苗字
さんはスマホを確認した。
「爆豪くんから連絡きてる」
「かっちゃんなんだって?」
「あと十分くらいでつくって。注文のリクエストも来てる。上ハラミとビビンバ、あとは適当にとのこと」
「仕事上がりだろうし、かっちゃんお腹空かせてきてるだろうな」
「食べても食べても太らないんだよね、爆豪くん
……
」
そうしてさくっと注文を済ませたところで、ほどなく、店員に先導されたかっちゃんが個室のドアを開け姿を現した。
「おつかれ、待たせた」
「かっちゃんこそお疲れ様」
かっちゃんは僕と
苗字
さんに素早く視線をやって、
苗字
さんの隣の座布団に腰をおろした。上着は着ていない。車で来たのだろう。
シャツの襟もとから、ヒーロースーツのインナーが覗いていた。キャップを外してそばに置くと、かっちゃんはおしぼりで手をぬぐった。
苗字
さんが「適当に頼んどいたよ」と言いながら、かっちゃんにメニューを手渡す。
僕が最後にかっちゃんと会ったのは、つい一か月ほど前。かっちゃんを特別講師に招聘したとき、たまにはご飯でも、という話になり、今日に至っている。
苗字
さんも誘ったら、と言ったのは僕だ。却下されるかもしれないと思ったけれど、案外すんなりそれじゃあ三人でということになった。
「かっちゃん、今日の現場遠かった?」
尋ねると、かっちゃんはメニューに向けていた視線をこちらに寄越した。
「そうでもねえ。けど来る途中で緊急入って、対応してたら遅れた」
「じゃあ爆豪くん、行きがかり上というか、なりゆきで、退勤後にもうひと仕事してきたんだ」
苗字
さんが苦笑した。ヒーロー業はほとんど年中無休のようなものなので、退勤が『事務所に詰めていない』くらいの意味しか持たないことは、
苗字
さんだってよく知っているはずだ。
かっちゃんが返事の代わりとでもいうように、ハン、と鼻を鳴らした。
「俺の移動経路でバカやりやがって、運もセンスもクソもねえ」
「たしかに、偶然近くに居合わせたかっちゃんに出てこられるって、犯人側からしてみれば不運としか言いようがないかも」
「向こうにしてみたら事故みたいなものだろうね」
苗字
さんのコメントに、かっちゃんが今度は舌打ちをした。
「事故りたくなきゃ悪事なんざ働くなって話だろ」
「正論だ」
「正論だね」
ちょうど話が一段落したところで、第一陣の肉とサンチュがテーブルに届いた。かっちゃんが手際よく、網に食材を並べていく。
「焼肉食べるの久しぶりかも。嬉しい」
タン塩が炎にあぶられ縮んでいくのを嬉しそうに眺め、
苗字
さんが言う。すかさずかっちゃんが「あ?」と切り返した。
「んな言うほど久々でもねえだろ」
「え? そう?」
「そうだろ。だってお前この間、実家で」
「えー、そうだっけ? ええと
……
あ、ああ、そうだ。そういえば、たしかに。そうかも。たしかに爆豪くんちで食べたね、焼肉を」
「まじかお前。記憶力がボウフラ以下か?」
「ひど、どういう暴言
……
」
苗字
さんが顔をしかめる。しらけた顔をするかっちゃんは、網の上の焼肉をチェックしながら、
苗字
さんに「んな雑魚記憶力でよく日常ままなってんな」と暴言を重ねた。
「でもさぁ、言い訳するわけじゃないけど、家で焼肉するのとお店の焼肉とは、やっぱり別カウントなんじゃない?」
「ババアに『焼き肉食わすなら店くらい予約しとけ』ってぼやいとったっつっとくか」
「ねえなんでそんな嫌な言い方するの。曲解もいいところなんだけど
……
」
推察するに、ごく最近かっちゃんの実家に帰省したふたりが、かっちゃんの家で焼き肉を食べた、という話だろうか。これみよがしにいちゃついているわけではないのに、なんだか非常に仲睦まじい会話を展開されているようで、口を挟もうという気も起きない。ふたりは今や夫婦なのだから、かっちゃんの実家にふたりで帰省するのも、何らおかしなことではないのだけれど。
と、
苗字
さんが、
「家焼肉と店焼肉は違うよねぇ、緑谷くん」
同意を求めるように僕に話題を振ってくる。かっちゃんはもくもくとトングで肉を裏返している。僕は別に焼肉に一家言あるわけでもないので、ひとまず
苗字
さんに話を合わせた。
「そうだね。家だと野菜が多いし」
「そうだよね、やっぱ違うよね」
「そりゃ肉ばっか食ってると胃もたれするからだろ。野菜も食え」
「そういえば野菜注文してないね」
「は? ガキの焼肉じゃねンだぞ」
かっちゃんが「注文もまともにできねえのか」とぼやく。話をしながらもトングを握った手は、肉をぽいぽいと
苗字
さんの取り皿にのせていった。「ありがとね」と言いながら、
苗字
さんは素直に放り込まれた肉を口に運んでいる。
なんとなく、僕にはその光景が意外なもののように思えた。束の間ぼんやりふたりを見ていると、かっちゃんは今度は僕の取り皿に焼けたタンをのせてくれた。
「ぼさっとしてんな。肉焼けてんぞ」
「あ、うん」
「さっさと食わねえと肉が渋滞する」
トングを替え、網の上のあいたスペースに、かっちゃんはまたどんどん肉を置いていく。
苗字
さんが呼んだ店員に、野菜と肉を何種類か追加で注文してからようやく、かっちゃんはトングから自分の箸に持ち替えた。
なんというか、びっくりするほど面倒見がいい。そして今、隣に
苗字
さんを置いた状態のかっちゃんは、その面倒見の良さを遺憾なく発揮していた。
たしかに、かっちゃんは昔から面倒見がいいタイプだ。あの尖っていた中学時代や高校一年のときですら、かっちゃんの周囲には友人が絶えなかった。それはつまり、そういうある種の人の好さみたいなものが、かっちゃんにはあるからなのだろう。
だから、おかしな言い方ではあるけれど、恋人に対する態度としてのかっちゃんのこの甲斐甲斐しさは、僕から見てわりと納得できるものだ。
僕にとって意外なのは、
苗字
さんがかっちゃんのその面倒見の良さみたいなものを、素直に受け入れているということだった。そのことの方が、よほど驚くべきことに感じられる。
昔の
苗字
さんであれば、焼肉一枚焼くにしたって「自分でやるからいいよ」くらいのことは言いそうだ。というか絶対言う。
良くも悪くも、
苗字
さんは自分のことは自分でという、自助自立の人なのだ。それは恋人に甘えるとか頼るとか、そういうものとは別の、もっと深い部分での話であって、
苗字
さんの行動全体を貫く絶対の指針のようなものでもあった。
「そういやデク、お前のアーマーの前言ってた部品の話だけど」
かっちゃんに呼びかけられ、僕は現実に引き戻された。「あ、うん」とあやしい相槌でかっちゃんの話に応じる。
話題が仕事の話に及んだためか、今度は
苗字
さんが口を閉じた。食事に集中するように、
苗字
さんはテールスープのお椀を口元に運ぶ。
と、
苗字
さんが耳にかけていた髪が、はらりとひと房落ちた。僕があっと思うより早く、
苗字
さんの隣のかっちゃんが、ほんの一瞬だけ
苗字
さんに視線を向けた。かっちゃんは伸ばした指先でその髪をすくうと、
苗字
さんの耳にかけなおす。
視線はまたすぐ、僕の方へと向けられた。
まるで何事もなかったかのように。
「国内でパーツ製造可能なとこ探しとけっつったの、忘れてねえだろうな」
かっちゃんの言葉が、僕の耳を素通りした。かっちゃんはもちろん、
苗字
さんも何事もなかったかのように、スープをぐびぐび飲んでいる。
何事もなかったかのようにというか、事実何事もなかったのかもしれない。かっちゃんと
苗字
さんにとっては、この程度のことはもはやわざわざ照れたりすることもない、そのくらい日常のなかに溢れるふれあいなのだ。
そう気付いた瞬間、僕のほうが照れて、狼狽えたしまった。かっちゃんの話にどうにかこうにか返事をしつつも、視線がどうしても泳いでしまう。
そのとき、僕の目がテーブルの上のかっちゃんの手に吸い寄せられた。かっちゃんの左手、その薬指にはめられた指輪に。
『個性』柄、かっちゃんは仕事中には指輪をつけない。それでも慣例として、結婚指輪を購入したことは以前に聞いて知っていた。そういうところで、かっちゃんはかなりきっちりしている。
聞いたところによると、かっちゃんが『個性』を使用しても傷がつかないような特注品をオーダーしたらしい。その実物を拝むのは、今日がはじめてのことだった。
かっちゃんの指の付け根におさまった指輪は、同じ薬指の指輪でも、無骨なデザインの
苗字
さんのものとは違う、シンプルなデザインの指輪だった。大きくて固いかっちゃんの手に飾られることで、華奢なつくりにすら見える。
もちろん見た目と違ってその頑丈さは折り紙つきなのだろう。
ほっそりした指にごつい指輪をはめる
苗字
さんと、自身の最大の武器にもなる手に細い指輪を飾るかっちゃん。デザイン違いとはいえ、
苗字
さんの指輪とかっちゃんの指輪は、ぱっと見にもペアリングだと分かる意匠が凝らされていた。
ふたりが結婚しているのだということは分かっていた。分かっていたけれど、僕は今はじめて、かっちゃんと
苗字
さんというともに旧知のふたりが、本当に生涯の伴侶として相手を選んだのだという事実を、目の当たりにしているような心持ちになっていた。
「あ? おい、デク。聞いてんのかよ」
「え!? あ、ああ、うん! 聞いてる!」
「ったく、頼むぞまじで。開発資金の余剰分でやってる投資と運用でメンテ費まかなってるとはいえ、毎度毎度取り寄せてちゃもたねえからな。お前ただでさえアーマーの使い方が荒ェし」
耳が痛くなるかっちゃんの小言に、スープのお椀を置いた
苗字
さんが苦笑した。
「勝己くんに使い方荒いって言われるの、よっぽどじゃない?」
「よっぽどなんだよ、こいつ」
さらりと交わされた会話のなかの『勝己くん』というワードに、いよいよ僕はこみあげてくる照れと謎の興奮を抑えきれなくなりつつあった。
どこが「全然昔と変わらないからね」なんだ、
苗字
さん
……
。
全然昔とは違うじゃないか
……
!
「ったく、ちったァ自分の持ちもん大事にしろや」
本気のお説教の気配を感じつつも、すでに僕はそれどころではなくなっていた。いや、もちろん大切なアーマーは大事に扱おうと思うし、そのためにも僕にできることはすべてしようとは思っているけれど。
「うん、本当にね
……
。かっちゃんを見習うよ」
こと自分のものを大切に扱うという点においては、僕は生涯かっちゃんに勝てる気がしないような気がしていた。
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