sevenssumeragi
2025-04-17 23:36:46
1818文字
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毒夜




夜の山村に、重たい空気が漂っていた。遠くでカエルの声が不気味に響き、囲炉裏の火が、揺らぐ影を壁に投げかける。木造の古びた集会所に、八人の仲間が集まっていた。

「ははっ、面白えことになってきたな!」

口火を切ったのは、ハチだった。笑いながらもその目は笑っておらず、どこか焦りのようなものが滲んでいた。

「どうしてこんなことになったのか、わかっているのか?」

鋭く言い放ったのはキオ。彼は腕を組み、壁にもたれている。その眼差しは全員を見下ろすように冷たく光っていた。

「うるさいなぁ.

コウが眠たげな目を擦りながら言う。けれど、その手は震えていた。

テーブルの上には八つの盃。その中に、一つだけ“毒”が混じっているという。

「ルールは単純ですな」

マルタンが口を開いた。

「順番にひとつ選んで、飲むだけ。外れを引いた者から.冥府へ旅立つ」

「ふざけんなよ……誰が考えた、こんな狂ったゲーム……!」

麻衣が拳を机に叩きつける。けれど誰も返事をしない。誰が始めたのかも分からない。ただ、誰かが「やらなければ、全員が死ぬ」と言い出しただけだった。

そして、それを誰も否定しなかった。ただ、全員が黙って、盃を見つめた。

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「先にいただきますわ」

恵梨香が優雅に手を伸ばし、盃をひとつ選んだ。細い指が震えているのを隠すように、無理に微笑む。

「どなたか、乾杯の音頭を?」

「俺がやるよ。……命に、乾杯ってな」

ハチが言って、皆の盃が上がる。ごくり、ごくりと、それぞれが飲んだ。

最初の一人は――ユウだった。

静かに、けれど確かに、彼は血を吐いて崩れ落ちた。

……死んだ、のか……

コウが震えながら見下ろす。

恵梨香は目を伏せた。――自分の盃と、ユウのものをすり替えたことを、誰にも悟られないように。

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二巡目。七人。

また一つ盃が選ばれ、また一人が倒れる。次は幼いトウキだった。

「ママぁ……さみしい……

彼の最期の言葉が、胸に刺さるようだった。

「やめよう……もうやめようよ……!」

コウが叫ぶが、キオが冷たく言い捨てる。

「やめれば、全員が死ぬ。それが分かっていて言っているのか、貴様は」

三巡目。ハチが、血反吐を吐いて崩れた。彼は最後に笑っていた。

……なあ、誰か、すり替えたか……?」

そう呟いて。

恵梨香は冷静を装ったまま、また別の盃を他人のものとすり替える。そして、それは麻衣のものとなる。

四巡目、麻衣が倒れる。目を見開き、恵梨香を見ていた。

(気づいた……?)

だが、その視線もやがて、光を失った。

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残ったのは、恵梨香、キオ、コウ、マルタン。

恵梨香の目は冷たい。コウを見つめる瞳だけが、優しさを含んでいた。

……恵梨香、怖いよぉ……僕、もう嫌だぁ……

「ご安心ください、コウ。私が……あなたを守ります」

恵梨香は、今度はマルタンの盃に、自分の毒入りのものをすり替えた。

マルタンは祈りながら盃を飲み――静かに崩れた。

……主よ、罪深き私を……赦し給え……

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最後の三人。

キオがじっと恵梨香を見た。

「貴様、最初から怪しかった……盃を選ぶ前に、何度も視線が動いていたな」

「冗談を。私がそんな卑劣なことをするはずがありません」

「いいや……次で分かる」

ネオは盃を取った。だが、それを口に運ぶ前に――恵梨香が止めた。

「いけません、それは……!」

その一瞬の動揺が、キオに真実を悟らせた。

……貴様だな」

……ふふ。ようやく、気づかれましたか」

恵梨香は微笑む。もはや隠す気もなかった。

「私は、生き残らなければなりません。何があっても、コウのために」

恵梨香は残った最後の盃を手に取り、飲み干す――毒ではなかった。

キオが、怒りに満ちた表情で自らの盃を飲み、地面に崩れた。

「くっ……クソッ…………!」

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静寂。

そして、静かに泣くコウの声。

「みんな、死んじゃったの……? なんで……

恵梨香はコウの肩をそっと抱いた。

「もう、大丈夫です。私たちは、生き残ったのですから」

だが、恵梨香のその腕の震えは止まらなかった。

どんなに罪を重ねても、彼はコウと共に生きたかったのだ――たとえその手が血に染まろうとも。