haruka037
2025-04-17 21:12:17
10003文字
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堕落

 悪魔のリヴァイに快楽堕ちさせられるエレンのお話。
 R18。
書きかけです。

 堕落


 悪魔リヴァイ×人間エレンでリヴァエレ。
 R18。
 
 
 悪魔である俺にとって、人間はただの玩具であり獲物だった。
 力を、権力を、男か女、もしくはその両方を浅ましくも求める愚かな生き物。
 そんな人間と契約し、その魂を得る代わりに全ての望みを叶えてやった。
 時には俺自身を望まれる事もあった。
 望み通りに抱いてやれば、それらは容易く陥落する。
 人間の一生は、俺にとっては一瞬だ。
 どんなに美しい女も、整った顔立ちの男も、歳を取れば醜い老人に成り果てる。
 そうして死んで身体から抜き出た魂を喰らうのだ。
 俺に喰われる瞬間の、魂達の断末魔の叫びが心地良かった。
 その瞬間の為にこそ、俺は生きていると思えた。
 そんな俺が初めて欲しいと思った人間。
 それがエレン・イェーガーだった。
 初めてそれを見た時、強烈な欲望が湧き上がって来た。
 往来であるにも関わらず、押し倒してその身体を貪りたいと言う激しい欲求を抑えるのに必死だった。
 喉から手が出る程に欲しい。
 エレンの隣には一人の女がいた。
 手を繋いで幸せそうに微笑むその姿に、女を八つ裂きにしてやりたくなる。
 だが、それでは意味がない。
 あの女にも役に立って貰おう。
 エレンと手を振って別れた女の後を付ける。
 気配は決しているので相手に気付かれる事はない。
 タイミングを計って女に話しかけた。
「いきなりすまねぇ。こんな事言われても困るかも知れねぇが、お前に一目惚れしちまった。名前を教えてくれねぇか?」
「えっ……?なんですか、急に……。困ります。私には恋人がいるんです」
 そう言って立ち去ろうとする女の手首を掴んで目を合わせる。
「お前は必ず俺に惚れる」
 そう囁けば、女の顔が赤みを帯びた。
「そんな事、ある筈ないです!」
 そう言って女は去って行った。
 それからも何度も女に会いに行った。
 最初こそ頑なだった女も、次第に態度を軟化させて行った。
 ホテルに連れ込んでそれを抱けば、女はたちまち俺の虜になった。
「恋人と別れて俺と付き合ってくれ」
 その頬を撫でながら優しく囁けば、女はとろけた表情で頷いたのだった。
「エレンと別れて来ました。私を貴方の恋人にしてください」
 頬を赤らめながら言った女に背を背ける。
「そうか。お前はもう用済みだ」
 女を無視して歩き出すと、それが追い縋って来た。
「待ってください!エレンと別れたら付き合ってくれるんじゃなかったんですか!?」
「そんなもの、嘘に決まってるだろう。俺が興味があるのは最初からエレンだ。アイツに付け入る隙を作る為にお前を利用した。それだけの事だ」
 女の腕を振りほどいて歩き出す。
 背後ですすり泣く女の声が聞こえたが、すぐに俺の意識から消えた。
 ああ……、エレン。可哀想にな……
 俺に目を付けられなければあの女と幸せになれただろうに……
 だが、残念ながらそれは叶わない。
 お前は俺が手に入れる。
 必ず。
 必ずだ。
 傷心のエレンを優しく慰めてやろう。
 そうして蕩けるような熱い夜を過ごそう。
 そうすればもう、お前は俺から離れられなくなる。
 そうなったら死ぬまでお前を飼い殺してやる。
「ああ……、エレン。楽しみだ……
 早く俺の所まで堕ちて来い。
 黒い悪魔はそう呟いて愉しげに笑った。


 ◇◆◇

 神なんてもの、信じてはいなかった。
 ましてや天使や悪魔なんて、想像上の存在だと信じて疑ってはいなかった。
 だが、悪魔は本当にいるのだ。
 オレがそれを知った時、全ては手遅れだった。


 その日、オレは付き合っていた彼女に振られてバーでヤケ酒を飲んでいた。
「他に好きな奴が出来たってなんだよ……。まだ付き合って三ヶ月だろ……
 そんなに簡単に他の男に靡くのなら最初から付き合わなければ良かっただろう。
 ああ、イライラする。
「ごめんね」と言って泣いていたあいつの顔を思い出して更に苛立ちが募る。
 なんで泣くんだ。
 悪いのは全部お前だろう。
 被害者ぶるな。
 そう怒鳴りつけたい気持ちを必死に我慢したオレは偉かったと思う。
 どれだけ飲んでも気持ちは晴れない。
 寧ろ虚しくなるばかりだ。
 オレはなにやってんだ。
 もう帰ろうか。
 そう思って立ち上がろうとした時に、ふと声がかけられた。
「荒れてるな。何か嫌な事でもあったのか?」
 声のした方を見れば、黒髪の男がこちらを見ていた。
 穏やかな笑みを湛えた男は自然な所作で隣に座った。
「良かったら一緒に飲まねぇか?一人で飲むのも味気ねぇと思ってた所だ」
「良いけど、あんたに愚痴っちまいそうだ……
 そう言えば男はフッと笑った。
「良いじゃねぇか。嫌な事は吐き出しちまえよ。気が楽になる」
「あんた、良い奴だな」
 そう言えば男の笑みが深くなる。
「いや、俺はそんなに良い奴じゃねぇよ」
 そう言って男は自分の分の酒を頼んだ。
 身も知らぬ相手のヤケ酒に付き合ってやろうとする辺り、相当なお人好しだ。
 男の酒が出て来るのを待って、ポツリポツリと話をした。
 付き合っていた恋人に、他に好きな奴が出来て別れ話を切り出された事。
 何とか相手を罵るのは我慢したが、それでもモヤモヤしてしまう。
 名も知らぬ会ったばかりの男に何故こんな事を話しているんだろう。
 でも、この男の隣は不思議と落ち着いた。
 何でも話してしまいたくなるような、そんな気持ちになってしまう。
 オレの話を聞き終わると、グラスを傾けた男はポツリと「そうか」と言った。
「人の気持ちってのは自分の意思でどうにか出来るもんじゃねぇからな。悔しいだろうが諦めるしかねぇだろうな……
「そうだよな……。でもやっぱり納得行かねぇ……
 そう言って一気にグラスをあおった。
「マスター。おかわり」
「飲みすぎだ。その辺にしとけ」
 やんわりと男が制止して来るのを無視して新しい酒を飲む。
「そんなペースで飲んでたら潰れちまうぞ」
「今日は飲みたい気分なんだよ。付き合ってくれよ」
「仕方ねぇな」
 そう言って男は苦笑する。
 男もまた酒を頼んで、そうしてツマミを幾つか頼んだ。
「酒だけ飲んでたら悪酔いしちまうぞ。ツマミも食えよ」
 そう言って出て来たツマミを食べるように促される。
 オレは黙って従った。
「なぁ、あんたって仕事は何してるんだ?」
 そう言えば男は懐から名刺入れを取り出してオレに見せた。
 そこには有名な会社の名前が書いてある。
 役職は部長と来た。
 歳は知らないがまだ若く見える。
 若いのに部長とは、結構やり手なんだろうな。
 平凡な会社の平社員であるオレからしたら眩しくて目が潰れてしまいそうだ。
「リヴァイ・アッカーマン……
 名刺に書かれた名前を読み上げる。
 この男の名前はリヴァイと言うのか……
「俺もお前の名前を聞いて良いか?」
 そう言われてオレもまた男に名刺を渡す。
「エレン・イェーガー……。良い名前だな」
 ドクン。
 リヴァイに名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
「なぁ、エレン……。場所を変えねぇか?もっと良い店を知ってる」
 そう言ってリヴァイがオレの手をスルリと撫でた。
 思ったより熱いその手と、熱を帯びた瞳に誘われているのだと気付く。
 オレは男と関係を持った事はない。
 でも、リヴァイなら良い気がした。
 この男になら、抱かれても良いと、そう思えてしまったのだった。


 ギシギシとベッドが鳴る。
 リヴァイは優しく優しくオレに触れた。
 初めての男とのセックスも、全く怖くはなかった。
「痛くねぇか?」
 そっと頬を撫でて、リヴァイが訊ねて来た。
 その手に指を絡めて微笑む。
「平気だ……。だからもっと……
 お前が欲しい。
 そう言えばリヴァイはギラ付いた目でオレを見た。
「あまり煽るな。優しくしてやれなくなる」
「それでも良い……。嫌な事全部、忘れさせてくれよ、リヴァイ……
 そう言って自ら口付ければ、リヴァイがオレの腰を掴んで激しく打ち付けて来た。
「ああっ!そこぉ!はぁっ!あっ、あ……!ひぁん!」
 自分の喉から甘ったるい嬌声がこぼれ落ちる。
 女みたいなその声が恥ずかしくて唇を噛めば、それを見咎めたリヴァイがねっとりとした口付けを仕掛けて来た。
「んっ……、ふ……、はふ……、んぅっ……、ふぁ……、りばい……
 そっとリヴァイの背中に腕を回す。
 リヴァイが目を細めてオレを見下ろした。
「声は抑えるな。お前の可愛い声、もっと聞かせろ」
 そう言ってまた激しく攻められる。
 オレはリヴァイの背中に抱き着いてあられもない声を上げた。
 イイトコロばかりを突かれて気持ちが良い。
「女を抱くよりずっと良いだろう?」
 耳元で囁かれてコクコクと頷いた。
「あんっ、あ……、きもちいいっ、りばいにだかれるの、すきっ……、はぁっ、ああっ、あ、そこばっかり、だめぇ……、ひぁ、あ、ああっ……!」
 男に抱かれるのがこんなに気持ちがいい事だとは知らなかった。
 癖になりそうだ。
「エレン……。エレン……。好きだ……
 そう言って指を絡めてキスされて、堪らない気持ちになる。
「おれも、すき……、はあっ……、あっ……、ひぁ……、はぁん……、そこばっかり、だめぇ!ああっ!」
 奥まで突き入れたかと思うと一気に引き抜かれる。
 バチュンバチュンといやらしい水音が部屋中に響いた。
 だらしなく開いた口の中に侵入して来た舌に、口内を蹂躙される。
「んぅ……、ふ……、はふ……、っふ……、ん……、あ、やだ……、くる……、きちゃうっ、あ、やっ、あ、あ~~~~~~~っ!!」
 キスをしながら激しく突き上げられて、オレは悲鳴を上げて達した。
 ビクビクと跳ねる身体に、リヴァイが激しく腰を打ち付ける。
 身体を痙攣させながら求められる喜びに歓喜した。
 もう女なんていらない。
 リヴァイが居てくれたらそれで良い。
「りばい、おれのおとこになって!あっ!んっ!ひぁん!」
 その言葉に、リヴァイが嬉しそうに目を細めた。
「ああ、エレン。お前の恋人になってやるよ」
 そう言ってリヴァイは激しくオレを抱いたのだった。


 目を開くと、リヴァイが目の前にいた。
 リヴァイはオレと目が合うと微笑んで優しい手付きで頭を撫でてくれる。
「おはよう、エレン」
「おはよう、リヴァイ……
 自分の喉から掠れた声が漏れた。
 昨日散々鳴いたせいで喉が枯れているのだ。
「身体は平気か?」
「色んなとこが痛いけど、平気だ。お前とひとつになれて嬉しかった……
 そう言えばリヴァイは笑う。
「そうか。俺もお前が手に入って嬉しい」
 そう言ってリヴァイはオレの手の甲に口付けを落とす。
「実は一目惚れでな。今まで男と関係を持った事はなかったんだが、どうしてもお前を落としたくて必死だった」
「そうなのか?余裕そうに見えたけどな」
「昔から感情が表情に出ねぇ質なだけだ」
「そうなんだな。俺を口説く時、緊張とかしてたのか?」
「当たり前だろう。断られたらどうするか、何通りも脳内でシュミレーションしてたくらいだ」
「じゃあ、もしオレが誘いを断ったらどうしてた?」
「攫って閉じ込めて飼い殺してただろうな」
 笑顔で言われて怖くなる。
「そういう冗談やめろよ」
「本気だ。それぐらいお前に惚れてる」
 そっとリヴァイが口付けて来る。
「だから、エレン。お前は何があっても俺を拒むな」
 優しく頬を撫でられながら囁かれて、オレは「分かった」と返したのだった。


 リヴァイは優しかった。
 いつも俺を気にかけてくれる。
 休憩時間には、必ずラインをくれた。
『今日もお前が好きだ』
 そんな事を言われて喜ばない方が無理だろう。
『オレもお前が好きだよ』
 そう送って帰って来た返事に、頬が緩んでしまうのを止められなかった。
『早くお前に会いてぇ』
 その言葉が嬉しくて堪らない。
『早く会って抱き締めてくれよ』
 そう送るとすぐに返事が帰って来た。
『抱き締めるだけでいいのか?』
 意地悪な質問に苦笑しながら文字を打つ。『それだけじゃ足りない。抱いてくれよ、リヴァイ……
 するとすぐに返事が来る。
『今すぐお前を抱きてぇ……
 仕事を放り出して今すぐリヴァイに会いたい。
 でも、それはしてはいけない事だ。
 だからグッと我慢した。
『オレも抱いて欲しいよ……。あと二時間で仕事が終わるから、そうしたらお前に会いに行くよ』
 リヴァイの会社は名刺を貰ったから知っている。
 ここからそんなに遠くないから歩いて行けるだろう。
『いや、俺が迎えに行くから待ってろ。そろそろ休憩時間も終わりだ。またな』
 それで短いやり取りは終わった。
 仕事が終わればリヴァイが迎えに来てくれる。
 それが嬉しくて堪らない。
 自然と頬が緩んでしまう。
 二時間なんてあっという間だった。
 仕事を終えて会社の近くで待っていると、やがてリヴァイがやって来た。
「リヴァイ!」
 名前を呼んで駆け寄ると、リヴァイが柔らかい笑みを浮かべる。
「エレン……。会いたかった……
 そう言って抱き締められて心臓が跳ねた。
 嬉しい。
 でも、この場面を会社の誰かに見られたら困る。
 だからそっとリヴァイの背中を撫でながら言った。
「リヴァイ……。会社のやつに見られたら恥ずかしいから場所を変えよう」
「ああ、そうだな。なら、今からホテルに行くか?」
 身体を離したリヴァイは、そっと指を絡めて来る。
 これじゃあ離れた意味がないのだけれど、触れ合っていられて嬉しいので文句は言えない。
 リヴァイの誘いに乗らない筈がなかった。
「良いよ……
 小さく呟いた言葉は、ちゃんとリヴァイに伝わっていたらしい。
 リヴァイは笑ってオレの手を引いた。
 オレは黙って一緒に歩く。
 指を絡めたオレ達を、皆驚いた顔で見るけれど、その手を振り解く事は出来なかった。
 リヴァイに触れていられて嬉しくて堪らない。
 これから肌を重ね合わせるのだと思うと、心臓が煩く音を立てる。
 緊張してじわりと手汗が滲み出た。
 それに気付いたリヴァイがフッと笑う。
「緊張してるのか?」
「そりゃあな。緊張もするだろ。今からお前に抱かれるんだから……
「お前を抱くのは、これが初めてじゃねぇだろ」
「そうだけど、好きな奴とするのは緊張するんだよ……
 そう言えばリヴァイは優しく目を細めた。
「お前は本当に可愛いな」
 そう言ってオレの手の甲に口付けて来る。
 たったそれだけの事で心臓が跳ねた。
「やめろよ……。誰が見てるかも分からないのに……
「周りの目を気にする必要ねぇだろ。俺は俺のやりたいようにやる」
 そう言って堂々と歩くリヴァイを凄いと思った。
 同性同士の恋愛は、嫌悪の対象になる事もある。
 それなのにリヴァイは全く動じていない。
 誰に何を言われても気にならないのだろう。
 そんなリヴァイにますます惹かれていく自分がいる。
「カッコイイな……
 思わず呟くと、リヴァイはオレを見て笑った。
「惚れ直してくれたようで何よりだ」
「まずいな。お前の事、どんどん好きになっていく……
「何も悪い事じゃねぇだろ。もっと俺に惚れて、離れられなくなっちまえば良い」
「そうしたら別れる時困るだろ」
「別れねぇよ」
 そう返したリヴァイが握る手に力を込める。
「お前が嫌だと、別れたいと泣き喚いても手放してやらねぇ……
 リヴァイはギラつく瞳でオレを見た。
 その目にリヴァイのオレへの執着が垣間見えた気がした。
 ゾクリ。
 何故か背筋が粟立つのを感じる。
 こんなにも想われて嬉しい筈なのに、何故かそれを恐ろしいと感じる自分がいる。
 掴まれたその手を振り解いて逃げ出したい衝動に駆られた。
 何故なのだろう?
 こんなにも幸せなのに、その幸福がとても恐ろしいものに感じられて怖くて堪らなかった。
 オレはリヴァイを恐れている。
 どうしてなのかは分からない。
 でも、オレの本能が逃げろと告げて来るのだ。
 自分でもよく分からない衝動を必死に抑えていると、やがてホテルに着いた。
 リヴァイにそっと腕を引かれてホテルの中に入る。
 その入口が、何故だかオレには地獄の門に思えてならなかったのだった。


 選んだ部屋に入って、優しくベッドに促される。
 やけに足が重い。
 オレはどうしてしまったのだろう。
 その変化に、リヴァイはすぐに気付いた。
「どうした?浮かない顔だな」
 顔を覗き込まれて、笑顔を作ろうとして失敗する。
 きっと今のオレは情けない顔をしているのだろう。
「気が向かねぇなら出るか?今からでも飲みに行くか?」
 それに首を振った。
「いや、良い……。なんか今日のオレはおかしいんだ。リヴァイと一緒に居られて幸せなのに、どこか怖いんだ。なんでだろうな……。今も逃げたくて堪らないんだ」
 リヴァイが怖い。
 怖くて怖くて堪らない。
 何故なのだろう。
 リヴァイはオレに酷い事なんて何一つしていないのに。
 こんなにも優しいのに……
「ここに座れ」
 手を離したリヴァイが、ベッドの端に座ってポンポンと傍らを叩いた。
 オレは言われた通りにリヴァイの隣に座る。
 リヴァイはそっとオレの頭を撫でて来た。
「お前はきっと、無意識に幸せになる事を恐れてるんだな。だから俺に優しくされたら逃げ出したくなるんじゃねぇか?」
「そう、なのか……?分からないんだ。自分の事なのに……
 俯くと、そっと手を握られた。
「大丈夫だ。ゆっくり慣れて行けば良い。怖くなったら俺に言え。不安になったら幾らでも話を聞いてやる」
 リヴァイを見ると、優しい眼差しを向けられた。
 ああ、オレはリヴァイにこんなにも愛されているんだ。
 嬉しい。
 じわりと胸が温かくなる。
「リヴァイは、オレが好きか?」
「当たり前だろう。お前は俺の特別だ」
 そう言ってリヴァイはオレの頬を優しく撫でた。
「お前を愛している」
 そう言ってリヴァイはオレをベッドに押し倒した。
 もう不安も恐怖も湧かなかった。
 感じるのはリヴァイに対する愛しさだけ。
「オレも愛してるよ……
 そう呟いてリヴァイに身を委ねた。


 それからも変わらず日々は続いて行った。
 リヴァイはいつも優しかった。
 身体を重ねながら愛していると言われる度に、幸せでどうにかなってしまいそうだった。
 リヴァイと居ればこの幸福がいつまでも続くのだと信じて疑わなかった。
 でも、オレのその信頼は容易く裏切られる。
 優しい恋人の皮を被った化け物は、唐突にその正体を現したのだった。


 その日はリヴァイとデートをしていた。
 買い物をしていた時に、唐突に声が聞こえた。
「見つけた!」
 振り返ると、そこには数ヶ月前に別れた恋人がいた。
「やっと見つけた。リヴァイさんっ!」
 それはオレに見向きもせずに、リヴァイに駆け寄って行く。
「ずっと探してたんですよ。どうして電話に出てくれないんです?」
 そんな相手をリヴァイは興味なさげに見つめた。
「言った筈だ。お前は用済みだ。もう必要ねぇ」
 普段のリヴァイからは想像出来ない冷たい声だった。
「愛してるって言ってくれたじゃないですか!あれは全部嘘だったんですか!?」
「そうだと言っている」
 平坦な声でリヴァイは返す。
 冷たいその表情は、まるで別人だ。
 それよりも気になる事がある。
「リヴァイ……、こいつと知り合いなのか?」
 問い掛けると、リヴァイはオレに目を向けた。
 リヴァイは、オレを見た途端にいつもの柔らかい表情になる。
 だが、先程の冷たい表情を目にした後ではどちらがリヴァイの本性なのか分からなくて戸惑ってしまう。
「少し話した事がある程度だ。どうやらこいつは妄想癖があるらしくてな。俺を恋人だと勘違いしているらしい」
「そんなの嘘よ!妄想なんかじゃない!私は本当にこの人とホテルに行ったの!エレンと別れて付き合って欲しいって言われた!嘘じゃない!」
 その言葉を聞いた瞬間に、頭から冷水を浴びせられたような心地になった。
……それじゃあ、お前が言ってた好きな人って言うのは……
「リヴァイさんよ!」
 ガラガラと足元が崩れ落ちて行くような感覚を覚える。
 目の前が真っ暗になった。
 騙されていたのだ。
 あろうことか、オレの幸せをぶち壊した張本人に惚れてしまっていたのだ。
 考えるより先に口が動いていた。
「この卑怯者!オレを騙して裏で笑ってたんだろう!」
「エレン……。信じてくれ。俺は本当にお前を愛している」
 リヴァイが歩み寄って来るが、それを睨み付けて後退る。
「近寄るな!お前の顔なんて見たくない!どっかに行っちまえ!」
「エレン……。それはお前の本心か……?」
 静かな声音でリヴァイが問い掛ける。
 その口元は笑っていたが、目は笑ってなどいなかった。
 ゾクリとまた背筋が寒くなる。
『お前は何があっても俺を拒むな』
 以前、リヴァイが言った台詞が思い出された。
 だが、それも今のオレにとっては怒りを煽るものでしかなかった。
「お前なんか嫌いだ!もう別れる!」
 そう叫んだ瞬間、辺りが暗闇に覆われた。
 真っ黒な空間に、オレとリヴァイだけが立っている。
「な、なんだこれ……!」
 カツン。
 リヴァイの靴が、床を蹴る音がした。
 ハッとしてリヴァイから離れようとするものの、上手く身体が動かない。
 まるで身体が石になってしまったかのようだった。
「エレン……。言った筈だ。俺を拒むなと……
 リヴァイがゆっくりと歩み寄って来る。
 一気に距離を詰められて、顎を掴まれた。
 背けようとした顔を、無理矢理リヴァイの方に向けられる。
「お前は特別だ。だから無理強いはしたくなかったんだがな……
 残念だ。
 そう呟いたリヴァイがオレを背後に突き飛ばす。
 その身に受ける筈だった衝撃は、背中に当たった柔らかいものに受け止められた。
 真っ暗な空間に突如としてキングサイズのベッドが現れたのだ。
 普通なら有り得ない状況に、叫び出したい恐怖に駆られる。
「なんなんだ……。なんなんだよ、お前……!」
 怯えを隠しもせずにリヴァイを見上げれば、それは唇を歪めて笑った。
「俺はな、エレン……。本気でお前を愛してる。優しくしてやりてぇとも思ってる。だがな、お前が俺を拒絶するなら話は別だ」
 ベッドに横たわったオレの上に跨って、リヴァイは愛おしげにオレの頬を撫でた。
「この俺が、人間ごとき下等生物に拒絶されるなんざ、プライドが許さねぇ。だからな、エレン……。もう二度と俺を拒絶出来なくなるように、お前の心も身体も魂も、全て俺が貰う」
 そう言ってリヴァイはオレの唇に喰らいついた。
 その胸板を押しやろうとすると、指を絡めてベッドに押さえ付けられる。
「抵抗するな、〝エレン〟」
 リヴァイに名前を呼ばれた。
 それだけで、ドクンと心臓が大きく脈打った。
 リヴァイの胸を押しやっていた手が、パタリとベッドに落ちる。
 どうして。
 なんで。
 混乱するオレの頭を、リヴァイが優しく撫でる。
「良い子だ」
「なんでだよ……。なんで動かないんだ……!」
 自分のいう事を聞かない身体を必死に動かそうとしていると、リヴァイはそんなオレをせせら笑う。
「無駄だ。名前を知られた時点で、お前は俺の傀儡だ。悪魔に名前を呼ばれれば命令には逆らえねぇ」
「悪魔だって……?そんなもの居るわけないだろ!」
 そう叫ぶと、リヴァイは笑った。
「ああ、そうだろうな……。お前には到底信じられねぇだろう……。だが、悪魔は実在する。それを今から教えてやるよ」
 余裕の笑みを浮かべるリヴァイに、さっきから悪寒が止まらない。
 震えていると、リヴァイはそっとオレの頭を撫でた。
「そんなに怯えるな。取って喰いやしねぇよ」
「ここは、どこなんだ?元の場所に返してくれ……
 怯えながら口を開くと、リヴァイは笑顔のままに言った。
「駄目だ。お前は一生ここにいろ。ここなら誰の邪魔も入らねぇ。お前を独占していられる……
 リヴァイの顔が近付く。
 唇が重なった。
 

 続く