三毛田
2025-04-17 19:02:46
1089文字
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65 05. 襟首に落ちた雨粒

65日目
若干殺意が沸く

65 05. 襟首に落ちた雨粒
「ひょわっ」
「おかしな悲鳴を上げてどうした」
 俺の悲鳴に、丹恒は足を止めて振り向く。
「なんか今、首に垂れてきた」
「ああ。雨粒だな」
 彼につられて上を見ると、雫のついた葉っぱがたくさん。
 そしてそれらは、雫の重さに耐えきれず、どんどん傾いていき。
「ひょえっ」
 ギリギリ目で追える速度で落ちたそれではなく別のものが、また俺の首を濡らす。
「ふっ。穹、こっちへこい」
 丹恒は百面相している俺の手を引き、樹の下から連れ出して。
「フードを被ればいいだろう」
 少し呆れたように告げながら、上着のフードを被せてくれる。
「うう……ちべたい」
 苦笑しながら、優しくハンカチで拭いてくれる。優しい。
「なんでこんな目に……
「お前が無防備に立っているからだな」
「あうあう」
 フードを目深に被ると、ぽんぽんと優しく頭を撫でられて。
「お前が落ち着いたら、調査を再開しよう」
「ごめんな、丹恒」
「幸い、時間はまだある。万全でなければ、何か起きた時の対処が遅れる」
「はぁい」
 間延びした返事をしても、今は怒られない。
「少し待っていろ」
 と告げ、丹恒は俺を置いて何処かへ行ってしまう。
 初めての場所だから、あちこちフラフラしたら丹恒とはぐれてしまう。それに、宿泊場所への道もあまりはっきりと覚えていないから帰れない。
「待たせた」
「なにそれ?」
「この近辺で有名な飲み物だ。聞き込みは、屋台があれば屋台の店主。そうでなければ、食堂などですると効率的だ」
「へえ。甘くて美味しい」
「それは良かった」
「丹恒のも、同じ?」
「こちらは甘くないものだ」
「一啜り頂戴」
「ほら」
 ストローを差し出されたので、唇を付けてからゆっくり吸う。
「うーん……多分、美味しいんだと思う」
「つまり、お前の好みじゃないということだな」
「うん。貰っておいてなんだけど、ごめん」
「好みは人それぞれだ。謝ることじゃない」
 丹恒は、俺が口をつけたことなど気にする様子もなくストローを口へ運んで。
 どうしよう。
 急にドキドキしてきた。
 ドキドキが強くて、味がわからなくなってきたし。
「き、聞き込みでなんか情報あった?」
「特に変わったことはない様子だが、朝市の屋台の食事は新鮮で美味いと聞いた」
「ええ〜。気になるけど、起きられない」
「なら、俺が買ってくるから、お前は起きたら食べればいい」
「でも、丹恒と朝市に行きたいから頑張る」
「そうか。頑張れ」
 信用してないような声色。
 頭の中で、睡眠とデートを天秤に賭けるのだった。