三毛田
2025-04-16 20:38:51
1073文字
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64 04. ぽつりぽつりと

64日目
雨が傘を叩き

 ぽつりぽつり。
 傘の表面を叩く音。
 それは地面を濃く染めて、水の匂いを漂わせ。
 くるくる、きゅうきゅう。
 何処からか、生き物の鳴き声。
 今この場には、俺と丹恒しか居ないはず。
「丹恒。今の聞こえた?」
「お前には何が聞こえたんだ」
 振り返り問いかけるけど、傘越しなので、声は少々くぐもっている。
「う〜ん……なんだか嬉しそうな、生き物の声。結構近くから聞こえたんだけどな……
「そうか。すぐに姿を消したんじゃないのか」
「あー……
 その痕跡がないかと地面を見るけれど、気づけば強くなった雨足により、何も見つけられない。
「わかんない」
「疲れて幻聴が聞こえたのかもしれないな。そこの店で、雨が止むか弱くなるまで休もう」
「いいの?」
「雨で足止めされたと伝えたら、ゆっくり帰ってこいと連絡が来たからな」
「じゃあ、美味しいもの食べたい。お土産があれば、買って帰ろう」
「そうだな」
 店先で傘を折りたたみ、二人で中へ。
 柔らかな色のランプに照らされた店内は、華やかとまではいかないものの、落ち着いた装飾に彩られており。
 この雰囲気、結構好きだなと思って眺めていると
「俺はこの雰囲気が好きだと思う」
「俺も」
 丹恒がボソッと告げたので、同意する。
 断言しない所は彼らしいが、珍しく己の好みを口にしている。それが嬉しくて、そっと指を絡め席まで向かう。
「ガッツリじゃなくて、軽食が多いな」
「あまりガッツリ食べると、夕飯が食べられなくなるだろう」
「わかってるって。でも、このケーキセットならいいだろ?」
 今日のケーキと、紅茶かコーヒーかを選べるメニューを指すと
「構わない。俺は、カフェオレのアイスとピザトーストにしよう」
 頷いて受け入れてくれて。というか、もうメニューが決めたんだ。
 丹恒が店員を呼んで注文している間、外を眺める。
 さっきよりも、雨が強くなっていて、さらには風も吹いているみたいだ。
「って。丹恒の方ががっつりじゃん」
 拗ねたように唇を曲げて彼を見ると、ふっと笑みを浮かべ。
「今気づいたか」
 と。
「じゃあ、俺の頼んだケーキ食べてよ。一口だけ」
「そうだな。考えておこう」
 むすっとしてると、しばらくしたら頼んだものが運ばれてきて。
「あーん」
「ほら、お前にも」
 俺が差し出すと、丹恒もピザトーストを切り分けて差し出してくる。
「ピザソース美味しい」
「甘いが、悪くないな」
 と、互いの注文したものを褒め合う。
 雨が止むまで、ゆったりとした時間を丹恒と過ごしたのだった。