Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
3i2su
2025-04-16 20:07:14
2422文字
Public
Clear cache
Give Some, Get Back.
全年齢┊バキサム┊BNW後に二人が会う話
サディアス・ロスへの報告を済ませてラフトからホテルの一室へ移動したサムは扉の前で頬を緩めた。この先にいる男がどんな顔をしているのか想像できたからだ。きっと餌を心待ちにした獣のような顔をしているに違いない。もっとも、それを隠そうと余裕の笑みを浮かべるまでがセットだ。
ノックの後、扉から覗かせた顔はサムが思っていた通りで、勝負ごとでもないのになぜか勝った気になる。俺の勝ちだ、頭の中で言って促されるより先に中へ入った。
「どうしてる?」
「ホアキンなら今頃ゲームでもして看護師を困らせてるよ」
「なら安心だな」
ほら、と渡されたグラスを反射的に受け取り、男の顔を見る。
「酒か?」
「そうだ」
「本気?」
見つめ合って約十秒、先に折れたのはバッキーの方だった。
「冗談、水だ。俺がいつ必要になるかもしれないキャプテン・アメリカに酒を飲ませるわけがないだろ」
ヒーローにだって休みは必要だ。心や体を休めてこそ、最高の仕事ができる。しかし、国を、世界を、人々の期待を背負ったサムは、たとえ自由の国とはいえいつでも危険に立ち向かえるようにしていたかった。バッキーはそんなサムのことをサムが思うよりもよく理解してくれていた。
「乾杯」
バッキーの合図で喉を潤したサムは、無駄に広い部屋を見わたして男に向き直る。
「これはまた大胆な手だな」
「なにが言いたい」
分かっているけど聞こうか、とでも言いたげに口端がきゅっと上がっている。楽しそうな彼を見るのはむず痒いが嫌いじゃない。
「スイートルームに俺を呼び出すなんて」
ついに吹き出したバッキーは二度ほど頷いて目尻を下げたまま言った。
「議会の人間が集まるパーティーがあったんだ。この部屋はそのおまけ。他にも顔も知らない役人たちがこのフロアに泊まる」
「嘘つけ。お前に限ってそんなことはしない。名前も、下手したら部屋番号も把握してるはずだ」
訝る視線を送ると目の前の男はあっさりと罪を認めた。両手をあげて降参、と持ち上げたグラスをテーブルに置く。その際、サムのグラスも掠め取っていった。
「買い被りすぎだ。名前と部屋番号、それぞれの簡単なプロフィールくらいしか頭に入っていない」
当然のことだろうとは思うが、それでも徹底したやり方にかつての彼を思わせた。
「お前ってほんとムカつくやつだな」
「お褒めいただき光栄だよ」
バッキーが一歩ずつ近づいてくる。最初からそれほど遠い位置にいたわけではなかった。こんなにも時間が長く感じるのは、男がサムの心情を読むのをゆっくり愉しんでいるからだ。苛々して、しかし、だからといって逃げるなんて真似はできなかった。
「世間話はこれくらいにしようか、サム」
「俺はまだまだ話し足りないけど」
余裕ぶっておきながら、これなのだからサムはバッキーのことを嫌いにはなれなかった。内にひた隠す獣は些細なことで顔を出す。この貼り付けたみたいな政治家の仮面を剥いでやるために、一歩後ろへ下がる。
「サム」
咎めるようで、撫でるような呼びかけに油断して体が硬直した。気付いた時にはヴィブラニウムの腕が腰に回っていて、腹がぶつかる。じわりと伝わってくる体温は、これまでにも何度か味わったことがある。体はよく覚えているものだ。
「よくやったよ、お前は」
唇が触れるほど近くで述べられた賞賛は、サムが一番欲しかったものなのかもしれなかった。長くスティーブの隣で彼を見てきたバッキーであることがなによりも重要であったように思う。素直に受け取ってやっても良かったが、このままでは負けっぱなしのような気がして距離を保つべくバッキーの胸に手を置いた。
「まさかそんなこと言ってくれるとはな。キスして黙らせるかと」
胸の奥がじんわりとあたたかい。手のひらに感じる温度がやけにリアルで手を引っ込めようとした。それが叶わなかったのは、バッキーが腕を掴んで引き止めたからだ。逃げなくていい。お前が欲しいものならなんでも与えてやる。暗にそう言われているみたいで焦燥に駆られる。
欲しかった賞賛を得られて、他にはなにを望む?
「心配しなくてもそれはこれからやるつもりだ」
「そうこなくちゃな」
ここまできたら身を委ねるしかなかった。生真面目に抱いてくれなんて言えるほど素直じゃない。それにバッキーはサムが言えないことを理解してこんな真似をしている。ならばそのゲームについていけばいいだけのこと。
挑戦的な笑みを浮かべて後ずさる。少し右にズレて進めばあと数メートルでベッドがある。バッキーと見つめ合い、互いに焦らすのを楽しみながら足を進めた。
「俺の勝ちだ」
この部屋に入る前、心の中で留めていたことを口にした。本音じゃ惨敗といってもいいくらいだが、認めたくなかった。
ベッドはサムのすぐ後ろにある。肩でも押されればいとも簡単に倒れるだろう。
「そうだな」
こういう時、バッキーは必ずといっていいほど無茶しない。紳士でも気取っているのだろうか、くだらない。もっと強引に来てほしい時だってあるというのに。だからこんな分かりやすい挑発にも乗ってこないのだ。
「サム、もしかして怖気付いたのか?」
前言撤回。どうやらバッキーも今日ばかりは本気のようだ。なにがそうさせたかは分からないが、それならそれでサムだって手加減するつもりはない。
「そんなわけないだろ」
胸ぐらを掴んで唇をぶつけた。キスと呼ぶにはあまりに暴力的なそれに、興奮が増していく。後ろに体重をかけてベッドに背中から着地すると至近距離に赤く腫れた唇をしたバッキーの顔があった。
「バック、かかってこい」
サムの言葉にバッキーが喉の奥から唸り声をあげる。獣じみたそれに心臓の音が強くなった。
「望むところだ」
かろうじて絞り出したであろう言葉は最後までは聞き取れず、再び唇が重なった。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内