望月 鏡翠
2025-04-15 22:31:27
944文字
Public 日課
 

#1691 「集材」「落屋」「首板」

#毎日最低800文字のSSを書く/三題話


 あんた、この辺りの人じゃないな。わかるよ。顔と服装を見りゃわかるもんだ。どうせカメラでなんか撮りにきたんだろう。最近、この辺にくる連中はみんなそうだ。教えてやるよ。どうせあそこにきたんだろう。幽霊が写りこみゃいいと思ってるんだろう。
 どうして曰くがついているか、教えてやろう。もちろん、ただというわけにはいかん。いいだろう。当たっていても外れていても、お前さんたちはそれを面白おかしく料理して、小遣い稼ぎに使えばいいんだ。
 あそこの家には縁側があるんだが、そこに使われている床板をよーく探してみな。中に一枚どす黒く染まった板があるはずだ。それは時間が経って乾いた血なのさ。雨に濡れても、時が経っても、落ちないくらいにべっとりと深くまで染み込んだ血なんだよ。
 どす黒く色が変わった板が一枚、木材の中に立てかけてある。集材所の木材が、種類も分けずに乱雑に混ざって置かれているわけがない。
 あの家の持ち主は悪いやつでな。ケチで、集材所からこっそりと盗んできた板を使って家を建てたんだ。その中に一枚どす黒い板が混ざっていた。混ざって置かれてるなんて、おかしいだろ? そうじゃないと売りにくいし、買いにくい。普通の品物なら、そんなところにあるわけがないんだ。
 しかし盗人だったから、そんなことわからなかったんだろうな。そのまんま、それで家を建てた。
 それってのが、首板だったってわけだ。首板ってわかるか? 遠い昔に武将が敵の首を切り落とすだろう。それを持ち運ぶのに使う板だ。遠い昔のもんだよ。主人の屋敷が攻められたときに、落屋に寝ていた使用人が慌てて逃げ出した。飛んでくる矢から頭と体を守るために、咄嗟に手に取って頭や体を庇ったのが、その首板だったのさ。
 だけどな。持って逃げ出したあとに、使用人は何を手にしていたのか気がついた。よりにもよって人の恨みをたっぷりと吸っていそうな、板を持って主人を見捨てて逃げてきたわけだ。いかにも呪われていそうだろ。
 だから近くにあった集材所にこっそりと捨てた。それを持って帰るやつがいるなんてな。
 なんでそんなことを知ってるのかって。その使用人ってのが、俺の先祖だからだよ。あの家が代わりに恨みを持って行ってくれて、本当に助かったな。