らい
2025-04-15 21:00:25
7720文字
Public レオいず
 

レオいず30days⑮「スキャンダルの調査結果について」

フィレンツェ編⑤ お題「浮気」
※ちょっぴりエ〇チ(下品)


「不倫してたんだって。撮られてんのウケる」

 天罰じゃ~ん、と吐き捨てる凛月の手元には、週刊誌が置かれている。既婚者同士の衝撃密会と綴られた記事には、かつて音楽番組で何度も共演したことがあるアーティストが映っていた。深夜二十三時のファミレス駐車場で、既婚女性と車内キスをしている場面を撮られたらしい。
 音楽界の重鎮とも評される古株の不貞は、ワイドショーでも連日報道されることだろう。長年のキャリアを不倫で台無しするなんて、あまりにも愚かすぎる。泉は鼻でふんと笑いながら、缶コーヒーを飲み干した。

「最近こいつ調子こいてたし、自業自得でしょ」
「セッちゃん、このひとに楽屋挨拶を無視されたこと、随分と根に持ってんね」
「はあ? くまくんだって、『あいつ感じ悪い』ってキレてたじゃん」
「そりゃあね。ス~ちゃんがしつこく『いくら業界の先輩とはいえ、無礼ではないでしょうか?』って食い下がってたから、逆に冷静でいられたけど。……音楽界のトップにキレだすの、ほんとウケた。あ~おもろ。ス~ちゃん、大好き」
「まっすぐな子だよねえ、かさくん。いちおう感謝してるよ。あいつが怒ってくれなかったら、俺がキレてたからねえ」
「血筋だね~」
「俺が産んだ子じゃないっての」
「はいはい。……俺もスカっとしたから、良かったけどね。相手によって態度変えるの、マジで無理~」

 まぁ、神様はちゃんと見てるってことで。
 週刊誌のページをぱたりと閉じて、凛月はふあぁぁふ、と欠伸する。そうして頬杖をつきながら、にやりと微笑んだ。何その顔。泉が訝しげに問えば、凛月は愉快な口ぶりで続ける。

「その点、セッちゃんは心配ないよねえ」
「当たり前でしょ。俺は、ゆうくん一筋だもん」
「俺だって、ま~くん以外ありえないんですけど。……って、ちが~う。俺が言いたいのは、月ぴ~のことだよ」
「はあ?」
「月ぴ~って、一途じゃ~ん?」

 学生時代と出会ったカノジョと結婚するタイプだよねえ。凛月が口笛を吹きながら、細い人差し指で泉の頬をつつく。ガキじゃないんだから、やめてよねえ。好奇心旺盛な吸血鬼を追い払って、泉はそっぽを向いた。

「なにを言い出すのかと思えば……。っつうか、俺はご主人さまで、あいつはペットでしょ。俺に従順なのは、当然でしょうが」
「そういうことにしといてあげる。おっぱいの大きい美女にハニートラップを仕掛けられても、『ごめん。おれには心に決めた奴がいるから……』ってはっきり断りそうだもんね」

 すこしだけ想像して、泉はちょっぴり照れ臭くなる。自由奔放な幼稚園児がそのまま大きくなったような男なのに、泉には一途を貫き通しているのだ。なんなら独占欲が激しくて、他の男と喋っていただけで「そうやって相手に気を持たせるのやめとけ」と真剣に注意してくることもある。実際それで何度か喧嘩になった。もっぱらクレーム窓口と化している三毛縞に愚痴をぶちまけたら、「それだけ愛されてるってことじゃないかあ?」と軽々いなされてしまったけれども。
 とにかく泉一筋のはずである。昼間は「だぁい好き!」とキスの雨を降らせてくるし、ベッドの上でも「愛してるよ」と低い声で囁いてくるし───

……などと惚気を並べており……
「変なナレーションをつけるな!」

 読心術を使いこなす悪友にぐいっと迫って、泉はわぁっと声を荒げる。凛月は楽しげに「うるさ」と耳を塞ぎながら、唇をにんまりと結んだ。

「セッちゃん博士号の俺には、わかる。今、月ぴ~のこと考えてたでしょ」
「はあ? 考えてるわけないでしょ。この馬鹿くま!」
「ふふん、お熱いね~。まぁ事実無根の不倫ゴシップが出たら、俺が証人として主張してあげるね。つけ入る隙もなければ別れる気配もない、空前絶後のラブラブカップルですよ~ってさ」

 茶化し続ける凛月の頬をつねりながら、泉はもういちど考えた。確かにレオは不倫することはなさそうだ。毎日のように「セナ、だぁい好き」と抱きついてくるし、一日三回はキスだってする。事の最中にも、「おまえしか考えられない。愛してるよ、世界でいちばん」と臭い台詞を吐いたりして、小柄な体格からは考えられないほどの激しいセックスもする。
 万が一浮気していたにせよ、片付け全般が苦手なレオのことである。確実に物的証拠を残すに決まっているのだが、今のところ不審な動きは見受けられない。家に帰っても、知らない香水のにおいがしたことなんてなかった。謎の石ころを持ち帰ることはあれど、見知らぬ女の私物を発見したことは一度もない。

「まぁ、れおくんに限ってそんなこと、ありえないでしょ」

 そんなことはありえない、はずだったのだ。
 日本国内での仕事をこなしたあと、泉はフィレンツェの自宅に帰ってきた。短期間とはいえ家を空けていたから、甘えん坊のペットはさぞかし寂しがっているに違いない。早々に鍵を開けて部屋に入ったが、不思議なことに物音ひとつ聞こえなかった。さては、徹夜明けで昼寝でもしているのかと考えて、泉はゆっくり足を進めていく。
 当の本人は、ソファーに寝そべっていた。泉の接近にも気づかないほどに、真剣なまなざしでスマートフォンを眺めている。

「れおくん、ただいま」
「ぎゃ~っ!」

 泉が声を掛けたとたん、レオは慌てて飛び起きた。ソファーの下にスマートフォンが落下したので、泉はすかさず拾おうとする。
 ところが、レオは「セナ、おかえりっ」と早口で挨拶すると、かるたの札でも取りに行くかのように奪い取るのだった。

「日本での仕事は疲れただろ~、セナさん!」
……はあ?」
「さぁさぁ、コートをお脱ぎください。長旅お疲れのようですから、ソファーに座って座って……

 泉が羽織っていたコートを脱がすと、レオは手早い動きでハンガーに掛ける。肩の部分にきちんと合わせていなかったために、コートがずり落ちた。なぜだか急いで掛け直そうとして、がさつな所作を繰り返すものだから、三回連続で落っこちる。
 手元、狂いすぎでしょ。っつうか、怪しすぎる……
 レオの立ち回りを観察しながら、泉は疑わしい視線を送る。レオが「さん付け」で媚びるときは、大抵なにか隠しごとをしているときである。提出期限の過ぎた書類をベッドの下に格納していたり、頼まれた買い物をすこんと忘れて作曲に明け暮れていたり───かつての前科においても、「セナさん、これには深いわけがありまして」と言い訳されたことを思い返して、泉はますます疑念を深めた。
 そもそも、甘えたがりのペットが「寂しかったぞ~」と飛びついてこない時点で、のっけから怪しいのだけれど。当の本人はパーカーの裾を引き延ばし、尻ポケットに挟んだスマートフォンの影を隠そうとしている。いかにも不審な行動は、なによりの証拠でもあった。
 月ぴ~って、不倫しなさそうだよねえ。
 帰国前の凛月がよぎる。泉だってそう信じているけれど、なにせ浮気が流行っている世の中である。昼下がりの団地でダブル不倫するドラマは人気を博しているし、清純派と持て囃されてきた芸能人の不貞スキャンダルだって、定期的に撮られているのだ。
 れおくんが浮気するわけがない。そんな固定観念はいったん捨て置いて、念のため確認しておく価値はあるだろう。

「温かい風呂に入りたいよな? おれが入れてきてやるよ」

 泉はそろり、そろりと浴室に向かうレオを呼び止めた。

「れおくん。待ちな」
「ぎくっ」

 声に出す馬鹿がいるか。逆にわかりやすくて助かるが、本当に隠しごとをしているのだと思うと不安が募る。泉はソファーをとんとんと叩いて、レオを招き寄せた。

「れおくん。俺の隣に来てくれる?」
「え」
「いいから、来てくれる?」
…………なぜ?」
「来いっつってんだろ」
「はい……

 躊躇するレオに圧を掛けて、半ば強引に座らせる。背筋をぴんと伸ばして正座するレオに顔を近づけると、泉は満面の笑みをぶつけた。

「れおくんさあ。俺に内緒にしてることなぁい?」
「はい、セナ先生。先に開封したオリーブオイルがあることに気づかないで、新品のふたを開けちゃったことでしょうか」
「はあ? ちゃんと確認しろって、いつも言ってるよねえ!?」
「くそ~、まだ把握してなかったか! 失敗した~……
「言わなきゃ隠せたかも、みたいな顔すな! ……そんなことより、お尻のポケットにしまってるスマホ。俺に貸してくれる?」

 泉はてのひらを出して要求する。ところがレオは、ソファーの背もたれに深く腰掛けて、防御態勢をとった。
 この野郎。やっぱり秘密を隠してやがる。
 レオの身体をひっくり返して、泉は強行突破を試みた。

「ケツ、出しな!」
「やだ~っ!」

 レオの尻をまさぐって奪おうとするが、案の定レオは「泥棒~!」と暴れる。まるで大事な卵を守るように腹部に隠すものだから、泉のこめかみは苛立ちにひりついた。やましい事実がなければ、「おお、いいぞー」と気前よく渡すはずである。頑なに抵抗するということは、やはり秘密を隠し持っているのだろう。
 まさか、女の子と連絡をとってる?
 疑惑の一歩が、確信に変わっていく。泉は冷や汗を垂らしながら、数秒ほど考えた。「浮気してる?」とはっきり尋ねたところで、かえって誤魔化される可能性がある。慎重に問い詰めなくては───冷静な主人の顔をぶら下げて、泉は用心深く告げることにした。

「俺が居ないあいだに舞い込んだ仕事を、細かく把握しておきたいの。作曲のお仕事とか、色々とメール来てるでしょ?」
「え? あ~、うん。……まぁ……
「れおくん、セナに負担を掛けたくない~って面倒な仕事は隠したがるし。俺は主人なんだから、ペットのスケジュールぐらいは管理しておかないとねえ。厳しいようで悪いけど、俺にはちゃんと見せてほしいな」

 俳優業で培った優しい声色で告げると、レオは逡巡して───人懐こい八重歯を、にこっと覗かせた。

「そういうことか! なら、いいぞ! ほい!」
「え? ……どうも」

 つい数秒前までの抵抗はなんだったのか。やけに簡単に渡すものだから、泉はいささか躊躇する。レオのスケジュールはあんず経由で確認済みなのだけれど、ああ言った手前メールを確認するふりをしなくてはならなかった。行儀よく正座しているレオを横目に、泉は受信リストを開く。
 差出人の一番上は、妹の『ルカ』。その次に『セナ』。そこから仕事相手の当たり障りのない内容を挟んで、『リッツ』が現れる。「セッちゃん、さっき帰ったよ。そっちに戻ったら、情熱的に抱いてあげなさい」と書かれたメッセージに「こいつ……!」と舌打ちしながら、泉は順番にスクロールする。
 スオ~、ナル、ママ、お母さん、お父さん、橋の上で鳩にエサあげてるおじさん───なんでこいつ知らないおっさんと連絡先交換してんの?───見慣れない名前はちらほら並んでいるものの、怪しい女性による誘惑のメッセージは見受けられない。
 なるほどね。とっくの昔に証拠隠滅済みってわけ?
 泉は歯ぎしりしながら、レオを振り返る。待ってましたと言わんばかりに、レオが笑った。

「確認は済んだのか? だったら、もういいよな?」

 それでも、早急に返品をせびるのはやっぱり怪しい。どこか忙しないレオを突っぱねて、泉はスマートフォンを胸に抱えこむ。

「嫌」
「え~!?」

 なんとかして取り返そうとするレオの追撃を交わす。虚空を泳ぐレオの身体は空ぶって、泉の膝に「むぎゅっ」と着地した。

「妙に必死だよねえ。なにか後ろめたいことでもあるわけ?」
「いや………………確かにあるかもしれんけど、心をきっちり入れ替えるから!」

 やっぱり、あるじゃん! 泉が声を荒げると、レオは必死の形相で首を振る。

「うう~っ…………例えおまえと何があろうとも、おれは前を向いて歩きたいっ! 大丈夫だ、なんとかなるなる鳴上嵐! 明日は明日の風が吹くって、スカーレットオハラも言ってた!」
「意味不明!」

 やっぱりスマホに秘密が隠されている……。泉はメッセージリストを閉じて、他にも調査すべき場所はないか考えた。ふいに視界に入った写真のアプリをタップすれば、青ざめたレオが露骨に慌てる。ビンゴだ。

「待て。話せばわかる。落ち着け、いや落ち着いてください。クールダウン! いや本当に頼む!」
「俺はいつだって冷静だよ! ……何。セクシーなお店で働いてる女の子とのツーショットでも隠してるわけ?」
「それはない! 夜の店には行かん! だっておれは、宇宙で一番セナがだぁい好きなんだから!」
「だったら、どうして嫌がるのかなあ」
「ええ~と、それは、その……のっぴきならない事情があり……
「俺になにか秘密を隠してるからだよねえ?」
「あ! ああ~!」

 部屋の片づけが苦手な男が、一つひとつの画像を整理できるわけがない。Knights、家族、猫、食べ物、景色。アルバム内のあらゆる画像はフォルダ分けされることなく、自由にとっ散らかっている。
 しかし、唯一作成されているフォルダがあった。「おれ以外が観たら殺すぞ」───物騒なタイトルに肝が冷えるが、怪しいとすれば間違いなくこれである。
 もはや観念したのか、レオはすっかり静かになっていた。そうそう。お利口なペットは、そうやって黙ってお座りしていればいいの。常日頃のしつけの成果を実感しながら、泉はフォルダを展開する。
 一本の動画が格納されていた。そこには鈍色の髪が、サムネイルいっぱいに映しだされている。

「何これ。……俺?」
……今ならまだ引き返せるけど、ほんとに観る……?」
「当たり前でしょ。はい、再生」
「ああ~……

 レオが泣きそうな声で縮こまる。何こいつ、と憐れんでいたのも束の間。動画のシークバーが高速で進んだことで、泉は言葉を失うことになった。

『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「は?」
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「ねえ」
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「何? これ」

 自動再生をオンにしているために、たった八秒の動画がループする。快楽に身悶えながら首をいやいやと振り、甘い嬌声を響かせる自分が───泉はしょんぼりと肩を落とすレオの胸倉を無言で掴んだ。
 説明しろ、とわざわざ言葉に出さずとも、凄まじい圧に察したレオが供述をはじめる。

……ハメ撮りです」
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「見ればわかる」
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
……セナが日本に帰るまえ、激しくえっちした夜があったかと、思いますが……
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「うん。エッチしたね」
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「仕事の関係で、しばらく会えないじゃん。だから、急激に寂しくなっちゃって……
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「ええと、要するにアレだ。つまりは、一時の気の迷いで……
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「ハメ撮りをしてしまいました。ごめんなさい」
『あっあぁんっれおくんっ駄』

 ループ再生がやかましすぎる。泉は勢いよく停止ボタンを押すと、レオの肩を揺さぶった。個人情報の塊をよく落とすくせに、恋人とのポルノ動画を保存しているなんてありえない。
 泉は顔を真っ赤にしながら、レオの胸倉を上下左右に振りまわした。

「俺のエッチな動画で、こっそり楽しんでたってこと~!?」
「そうだよ! わ、悪いか~!」
「開き直るな! っつうか、いったい誰の許可を得てこんなもん撮ってるわけぇ!?」
「もちろん、おれだってハメ撮りするのはよくないと思って、すぐに停止ボタンを押した! ほら、その証拠にシークバーも短いだろ? いまどき流行りの、ショト動画だ!」
「得意げに言い訳するな! ってか、この動画の画角なに!? どうやって撮影したわけ!?」
「ネコチャン撮影用の、首からぶら下げる小型カメラで……
「そんなもん、いつ買ったの!?」
「おれがCMやってるネコチャンフードの会社から、試供品で……
「よかったら、猫ちゃんを可愛く撮ってくださいね~、って先方のご厚意でプレゼントされたものを、俺とのエッチ撮影に使ったってこと? ……っはぁ、信じらんない!」
「セナ~、ごめん……。嫌いにならないで~……

 よほど寂しかったに違いない。凄まじい剣幕で詰め寄られながらも泉に抱きついて、上目遣いで訴えている。世間一般的には変人扱いされるレオだけれど、意外とセックスの趣味は普通なのだ。レオの言葉通り、血迷っただけというのは真実なのだろう。
 整った眉を八の字にして、「セナがいないと寂しくて、死んじゃいそうだったんだよ~……」と甘ったれた声で懇願するものだから、いじめっ子にでもなった気分になる。泉は額を抱えながら、ため息をついた。
 久しぶりの再会で喧嘩したって仕方がないし、今日はこの辺で手を打ってやることにした。

……いいよ。……許してあげる」
「ほんと~……?」
「うん。……そのかわり、いますぐ動画消して」
「え」

 泉の顔面とスマートフォンの液晶を見比べて、レオが躊躇する。
 こいつ、この期に及んで俺とのエッチ動画を死守しようっての……!?
 泉は赤面しながら、レオにぐいっと迫った。本人にとっては究極のおかずなのかもしれないが、さっさと削除してもらわなくては困る。万が一インターネットの海に流出したら、それこそ大惨事だ。リスク管理も、プロ意識のひとつなのである。

「残念そうにするな! はい、俺の目の前で今すぐ消して!」
「わかりました……
『あっあぁんっれおくんっ駄目ぇ……
「ごめん、自動再生オンにしてるから……
「わかったから、早く消せ!」

 レオの指を掴んで、画面上の『完全に削除しますか?』に表示された『はい』を押し潰す。迫り来る絶頂の波に悶絶している泉の動画は、この世から完全に消え去った。

「れおくんの変態」
「ごめんなさい……
「今度ハメ撮りしたら、次こそはぶっ殺すからねえ」
「怖…………でも、おれの一番はやっぱり本物のセナだよ~……

 セナぁ、おかえりっ。甘えん坊のペットが首筋にすりすり懐いてくる。甘いくちづけで返事してやると、濃厚な舌が粘膜に侵入して、激しいキスの嵐に襲われた。
 俺とのエッチな動画、どれぐらい再生したんだろう。恋人の愛撫を受け止めながら、泉はぼんやり考える。数秒ほど思案して、やはり気にしないことにした。地球上から永遠に失われた映像に思いを馳せても仕方がない。そのぶん現実で上書きしてやろうと決意して、泉はまぶたを閉じた。
 浮気の心配はなさそうなので、これにて調査終了とする。