たくとろ
Public
 

マスカーニャの情動

アチマス

リコとロイの二度目の旅立ちから数日が経過した。連日ラクリウムで凶暴化したポケモンの調査に追われ、一旦休憩をしようと決め、この日は久々にピクニックをすることになった。ピクニックといえばもちろんサンドイッチ。具材を好きなように挟んで食べるのが楽しいところだ。しかし、テーブルに並べた具材を見た二人は一抹の寂しさを感じていた。

ちょっと用意しすぎちゃったかな」
大丈夫だよ。アチゲータたち、いっぱい食べるから」

ロイがそう言って微笑みかけると、リコは小さく頷いた。気持ちを切り替えて早速サンドイッチ作りに挑戦する二人。リコは以前よりも好きなものを取って、分厚いサンドイッチを作っていく。一方ロイも好きなものを取っているが、以前に比べると少し抑え気味な感じだ。

「ロイ、今日は絵本のサンドイッチ挑戦しないの?」
「あれはやっぱり無理かなって。テーブルの下に落としたらまずいしね」

やっぱり、ロイは少し大人になった。落ち着いた返事を受けてリコはそう感じた。前よりも仲間のポケモンが多いし、みんな進化してるのでたくさんサンドイッチを作る。キャップには肉ばかり挟んだものをロイが作っていた。そういえば、フリードはそんなのを作っていたっけロイから肉サンドを受け取ったキャップはご満悦な様子で、リコの表情も明るくなった。
ポケモンたちにサンドイッチを配っていくと、みんな美味しそうに食べる。ガツガツと勢いよく食べるロイのポケモンたちに対し、リコのポケモンたちはゆっくりと食べる。ポケモンたちを見ながら、リコとロイもニコニコと楽しく食を進めた。



リコとロイが片付けを始めると、ポケモンたちは自由に遊び始めた。タイカイデンはアチゲータを背に乗せて空を飛ぶ。いっぱいに風を感じて気持ちよさそうだ。ルカリオが木陰に腰を下ろしてそんな二匹を見上げていると、そばにテブリムが来た。ルカリオの隣に座り込み、お話を始めた。しばらくして、二匹の視線はマスカーニャの方に向いた。別の木陰にしゃがみ込んで花をぽんっ、ぽんっと爆発させて遊んでいる。そして、一瞬顔を上げると目つきを鋭くしてまた顔を落として花を爆発させて遊び始めた。
片付けをしつつ、マスカーニャの不自然な姿についてリコとロイは話していた。

「マスカーニャなんか機嫌悪そうだね」
「ピクニックしてる間は大丈夫そうだったけど旅に出てから時々あんな感じなんだ」

二人がまたマスカーニャの方を見ると、ルカリオとテブリムが声をかけているようだ。しかしマスカーニャはぷいっとそっぽを向いてしまい、二匹は顔を見合わせてマスカーニャから離れていった。独りに戻ると、マスカーニャはまた空を睨んだかと思えば花爆弾で遊ぶ。

マスカーニャ、もしかしてタイカイデンにヤキモチ妬いてるのかな」
「え?」
「ほら、前にリコの家に行ったときもあの頃はまだニャオハとホゲータだったけど、パピモッチにさ」
「あったね。そっかアチゲータがずっとタイカイデンと飛んでるから

リコとロイはマスカーニャの気持ちを大体察した。そして再びマスカーニャの方を見ると、マスカーニャは立ち上がり、手を空に掲げて強烈なマジカルリーフを放った。大量の緑の葉は木の幹を揺らし、そこで寝ていたキャップを驚かせる。緑葉は高く昇り、滑空するタイカイデンに向かっていく。

「危ない!」

下から迫ってくるそれに気づいたタイカイデンは体の向きを変えて危機一髪でそれを回避する。マスカーニャはさらにもう一度マジカルリーフを放つ。これをまたタイカイデンがかわすと、マスカーニャが攻撃を撃ち出し、タイカイデンがかわす。数回それを繰り返し、タイカイデンの上にいるアチゲータは楽しそうに笑っている。地面にいるマスカーニャは大きな唸り声を上げながら地団駄を踏んだ。

「もうマスカーニャ進化して落ち着いたと思ってたんだけど」
「あははでも多分アチゲータたち、バトルの練習だと思って楽しんでるよ」
「それくらいで済んだらいいんだけど
「大丈夫だよ。ほら」

ロイが指を差すと、タイカイデンがマスカーニャの元に降り立った。アチゲータも地面に降りると、マスカーニャのところへと走っていき、ニコニコと笑って何か話している。険しかったマスカーニャの表情も少しずつやわらいでいく。しばらくして、再びアチゲータがタイカイデンの上に乗って上昇すると、マスカーニャがジャンプしてタイカイデンの両脚に掴まる。するとタイカイデンは大きく羽ばたき、空を舞う。空から木々を見下ろして、マスカーニャの目が輝く。冷たい風がふわふわの体毛を撫で、太陽の光を受けて甘い香りが広がる。顔を上げれば、ご機嫌なアチゲータがマスカーニャにキラキラの笑顔を送る。タイカイデンとも目配せすると、タイカイデンは翼を広げて急降下を始めた。下から当たる空気に押されてマスカーニャとアチゲータは笑顔で叫ぶ。マスカーニャの足が地面スレスレになるところを飛び、再び上昇。スリルと快感に満ちた滑空体験をアチゲータと共にし、マスカーニャは満面の笑みを見せた。



夜になり、みんなで焚き火を囲む。ポケモンたちがすっかり疲れて眠る中、リコとロイはあたたかいココアを飲みながら話していた。ポケモンたちを起こさないよう静かに話す。

「マスカーニャ、機嫌直ったみたいでよかったね」
「うん。今も楽しそう」

視線の先にはアチゲータの背中に体を乗せて眠るマスカーニャの姿。ぽかぽかの体の気持ちよさか、はたまたよい夢を見てか、にゃーにゃーとこぼしながら浮かべる笑みはご機嫌そのものだ。ロイのこっそり写真を撮っておこうという提案を受け、リコはスマホロトムを構えた。