三毛田
2025-04-15 11:28:08
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63 03. くるくると回す傘

63日目
クルクルするのは危ないというのを学んだ

「こら、穹」
 傘をくるくる回しながら歩いていると、斜め後ろから叱る声。
「雨が降ってないんだから、いいじゃん」
「だとしても、回していて誰かに当たったらどうする。悪いのはお前なのだから、責められたとしても文句は言えないぞ」
「はーい」
 それはとても困るので、傘を閉じてくるっと回して止める。
 丹恒が言うのだから、きっと今の俺の行動は悪いことなのだ。ならば、おとなしく従うが吉。
「はしゃいでいたな。そんなに嬉しいのか」
「多分、そうなんだと思う。子供みたいだって言われそうだけど、嬉しいんだ」
「そうか。その気持ちを責めることはしない。だが、やっていいことと悪いことは、覚えてくれ」
「じゃあ、列車に戻って俺の部屋で教えて」
「ノートと筆記用具を用意しておけ」
「わかりました」
 教えてもらったことを、忘れてしまうのではないか。それを危惧しての言葉だろう。
 忘れる忘れないは別として、メモして覚えるというのは大切だと教えてもらったので、断る気持ちはない。
 用事を終えて列車に戻り、俺はノートとペンを用意して丹恒を待つ。
「待たせた」
「ううん。お願いします」
 上着を手に、部屋に入ってきた丹恒はすまなそうに眉を下げ。
 でも、戻ってきて色々終えてからならこの時間だろう。それどころか、丹恒の事だから色々準備したのだろう。
「丹恒、ちゅーしたい」
「終えてからだ」
「はーい」
 愛しさが募って、キスしたくなったけど止められた。まあ、止められるだろうとは思っていたので文句はない。
「まず。傘や杖は、振り回すものじゃない。それは前提だ」
「はい」
「傘の先端だけじゃなく、普段閉じている時はあまり感じないだろうが、広げた時の露先が当たる時がある」
「はい」
 詳しい名称はよくわからないが、何処であるかはわかった。
 なるほど。ああやって回すと、その先っぽが当たってしまうということか。
「確かに、危ない」
「わかったか」
「うん」
「雨が降っている日には、ああやって回すことで、雫が飛んで他の人間の服を濡らしてしまう」
「うん」
「雨が止んで傘を閉じた時、きちんと縦に持たないと周囲の人間に当たってしまう。それにより相手に怪我を負わせた時、責任は負えるか?」
「無理です。出来ません」
「よろしい」
 丹恒に言われたことを、走り書きで書いていく。
「わかったか?」
「わかりました」
「いい子だ」
 いい子だと言われ、下半身がきゅんとなる。
「丹恒先生」
「どうした」
「ご褒美ください」
「仕方ないな」