ろころころ
2025-04-14 19:47:14
2754文字
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魔法少女 pk擬






「私はただ、魔法少女になりたかっただけなのに」

スタジアムの真ん中ではレックウザを取り合う最後の集団戦が白熱している。

そんな中、マギアちゃんがとても小さな声でそんなことを言ったのを、私は聞き逃さなかった。

「マギアちゃん?」
………聞こえてたの?……いいの、忘れて。大会どころか通常マッチにすら呼ばれない、ただの負け犬の遠吠えだから」
「そ、そんなこと!」

レックウザが微笑んだのは──────リーフィア!

実況者さんの声が高々と響く。観客たちの歓声は更に大きく、激しくなる。耳がギンギンするくらいに。

「私だってそうだよ。最近はアサシン達が強いから、遠距離アタッカー下メイジしかも二回進化の私達はすぐにやられちゃうもん」
「別にアサシン達が暴れる前だって私は出れてなかったわよ」

選手たちには役割ロールがある。
アサシンは移動が素早く、攻撃力も高い。草むらに隠れて私達メイジを倒すのがお仕事。
今の環境はそんなアサシンたちが強化を受けていて、私達メイジはすぐに倒されてしまうから全然試合に呼ばれない。
特に私とマギアちゃんは二進化ポケモンだから、一番強い状態になるまで時間がかかる。けれども、それまでに何回もアサシンにやられてしまうから、結局チームの足を引っ張ってしまう。

「私がなかなか選ばれなくて、しかも負けるから、最近のトレーナーの機嫌がいっそう悪いの。最悪」
……うん、カゲくんが心配してた」

至る所からゴールの音が聞こえる。入る度に上がる歓声。レックウザを倒せばゴールを入れやすくなるシールドが貰えるから、レックウザに最後の一発ラストヒットを与えたチームが大体勝つ。それがこのゲームの特徴。

……彼の話はやめて。アイツは戦えるのに試合にだって出れるのに、私の事を知った顔してくる。無神経でお節介なクソ男」
「うーん………

カゲくんだってきっと心配なんだ。マギアちゃんとカゲくんは、私とホムくんやアレくんみたいな、小さい頃からの仲だから。小さい頃に約束したんだって。マギアちゃんは魔法少女に、カゲくんは忍者になるって。

「アイツはちゃんと戦えて、周りのことにも気を回せる余裕もあるの。そんなアイツと私は昔約束したのよ。それなのに比べちゃうのは仕方ないじゃない。環境だってわかっていても、アイツは試合にだって呼ばれるし、トレーナーから殴られることだってないのに!」


3、2、1 ──────ゲームセット!
カウントダウンに続いて試合終了の合図。それぞれのチームの合計点がモニターに表示される。勝ったのは紫チーム。鳴り止まぬ歓声の中には選手に対する暴言が混じっている。

「マギアちゃん………
……………この間のメイジ会議、覚えてる?私、最低なことしたの。自分に余裕が無いからって人に当たった。あのクソ男トレーナーと同じことしたのよ」
「えっと確かミュウツーさんが





同じ役割ロールを集めて定期的に行われる会議。私とマギアちゃんはメイジだから、一緒の会議に出ていた。
最近の選手はアサシンの指名が多く、アサシンに不利なメイジは呼ばれないことも多い。このままだと"メイジは要らない"という風潮が強まってしまい、私達の出番は更に無くなってしまう。だから定期的に集まって、自分たちのロールがどうしたら活躍出来るのかを考えるのがこの会議の目的。
だけど、それぞれに色んな思いがあるからか、ぶつかることも多い。


「弱者は不要だ。帰れ」

会議室に入ってすぐ、ミュウツーさんはマギアちゃんにそう言ったのだ。
ざわざわと騒がしくなる会議室。その場にいたみんなの視線がマギアちゃんに集まっていた。
どうしてそんなことを言うんだろうと思ってしまうけれど、彼はいつだってこんな感じなのだ。確かにゲームに置いて強いのは大切だけど、だからってそんな言い方しなくても良いのに。

「マギアちゃ
「──────うるさいっ!」

マギアちゃんの声で辺りが静かになった。

「お前に何がわかるって言うの!?私だって頑張ってる!でも勝てないの!お前伝説にはわからないでしょうね!?」
「声を聞け」
………はぁ?」

ミュウツーさんはマギアちゃんの言葉に答えることは無かった。けれど、たったそれだけ伝えたんだ。

「周囲の者の声を聞け」

そう言って、ミュウツーさんは消えていった。

「あ、あの気にしないで。私達も今の環境は苦しくてあまり勝てないの。貴方だけじゃないわ」
「あたしだってそうよ!あーっ!!!あのアサシン共ムカつく!強化されたからって調子乗って!ナーフされたらボコボコに仕返してやるんだから!」
「し、進化する前にやられちゃうし野生のポケモンも全部取られちゃって、ぜ、全然強くなれない

サーナイトちゃん、エーフィちゃん、シャンデラちゃんと、その場にいた子達がマギアちゃんを励まそうと集まる。みんな同じで、苦労しているんだ。
私もマギアちゃんを励まそうと思い近寄ろうとしたその時──────

……うるさいっ!あんた達は負けたって殴られたりしないんでしょ!?家事で扱き使われたり、暴言吐かれたりしないんでしょ!?一緒になった気でいないで!」

そう叫んで、マギアちゃんは会議室のドアを強く閉めて出て行ってしまった。

「あ……

止めようと手を伸ばしたけど、もう遅い。マギアちゃんの姿はその場にはなかった。





………そう、あの時のよ。情けないわよね。慰めてくれたのに当たるような真似して。私ね、ミュウツーが言いたいことわかったの。あの時もそう、私、誰の声も聞いてなかったでしょ?」
「声?」

試合を終え、それぞれのチームメンバーが中央に並ぶ。そして互いに一例。勝っても負けても、戦ってくれた相手へのお礼は大切だ。

「そう。みんな自分が負けた話とか、そういうのを出してまで私に寄り添ってくれた。それなのに私は、全部否定して。あの時だけじゃない。私に手を差し伸べてくれた人はたくさんいるの。カゲもそうだし貴方だって」

マギアちゃんは少し泣きそうな顔で微笑んだ。

「ありがとう」
えっ?えぇっ!?そ、そんな!私は何も!」
「気遣ってくれてたんでしょ?なら素直にどういたしましてって言っておきなさい。ふふっ、貴方も優しいわよね。フシギバナだからかしら?」
「えっ?」

フシギバナ?確かに私はそうだけど、それと優しさって何か関係があるのだろうか?

「島の世界から来たフシギバナの子に会ったの。貴方と同じ、優しい子よ」


マギアちゃんは遠くを見ながら微笑んだ。