ろきのや
2025-04-14 00:04:55
1424文字
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とあるモンスターとクリスの話

※流血描写あり

テレビの中でニンゲンからパッと赤い液体が飛び散る。

ニンゲンの体には血というものが流れていて、ニンゲンが病気になったり怪我したり潰れたりすると、水風船が割れたみたいに派手に飛び散るものだから、なんだかかっこよかった。

映像では何度も観たけれど、本物はどんな感じなんだろう。

本当に赤いの?触ってみたらどんな感じ?匂いは?味は?そんな好奇心を抱えながら日々を過ごしていた。

この町にもニンゲンがいる。話した事はないけれど、クリスっていうらしい。

いつもアズリエルと一緒にいる子。

自分は人見知りだから、中々近寄る機会がなかった。いつも過ごす路地裏からクリスの姿を見かけては、遠くから眺めていた。

あの子もあの映画みたいに血が出るんだろうか。

あの子がひとりでいたなら話しかける事も出来るのに。ずっとそばにいるアズリエルが邪魔だった。

そんな風に思っていたら、ある時機会が訪れた。

いつもの路地裏に行くと、そこに佇むクリスの背中が見えた。それもひとりで。背中を丸めるようにして壁に向かって立っている。

これはチャンスだって思った。ここならきっと2人だけでゆっくりお話し出来る。
仲良くなれたらいっぱいニンゲンの事を聞けるかもしれない。

ちょっとドキドキしながら、クリスの肩を叩いた。

クリスはビクリと肩を跳ね上げて振り向いた。

目を見開いたその顔、鼻の穴から、とろりとした赤いものが滴り落ちていた。

血だ!!

本物の血だ!テレビで観たのよりずっと赤い気がする!本当に血が出るんだ!

本物が見れて嬉しい。ドキドキする。

でもクリスはすぐに顔を伏せて、顔を両手で隠すようにしてその場を立ち去ろうとした。

「待って!」

腕を掴んで引き寄せると、その手のひらも真っ赤に染まっていて、映画よりずっと本物だった。鉄みたいな匂いがする。

もっとよく見たいのに、クリスがもう片方の手で顔を隠すものだから、両腕を掴んで開かせた。

クリスと目が合う。

顔から滴る血は相変わらずどんどん流れ落ちていて、地面やクリスの服を濡らしていた。

本物の血をもっとよく見ていたいのに、クリスが逃げようとするのが分かった。

もっと近くで見たい。

もっと匂いを嗅いでみたい。

触ってみたい。

どんな味がするんだろう。

クリスが逃げないように両腕を強く掴みながら、顔を近付けて血を舐めてみようとした。

すると突然鋭い声が響いた。

「クリス!!」

その声を聞いて、急に自分がとても悪い事をしてるような気分になって、反射的に逃げ出してしまった。

走りながらちらりと振り返ると、ニンゲンに駆け寄る影があった。アズリエルだ。

いいなぁ。

自分もアズリエルと同じ立場だったなら、きっと血だってじっくり見る事が出来るのに。

家に帰ってからも、血の赤さを何度も思い出していた。赤かったなぁ。綺麗だったなぁ。本当に鉄の匂いがした。どんな味がしたんだろう。

本物の血を見る事が出来て嬉しいのに、なんだか引っかかるものがあった。

あの時の、クリスの顔。

映画の中では血が飛び散る事は派手で面白い事だったのに、クリスは血を見られるのが嫌そうだった。恥ずかしそうだった。

なんでだろう、見てはいけないものを見てしまったような気がする。どうしてかその表情ばかり頭から離れない。

いけない事をした気分なのに、また見たいと思っていた。