溶けかけ。
2025-04-12 23:00:15
1221文字
Public
 

変質

源水の水を食べて?しまったフリーナのお話です。
ヌヴィが執着してます。


「キミの元素爆発のときに出るそれ、美味しいのかい?」
 フリーナが源水の雫を指差して問いかけた。
「そもそも、それは食べ物ではない。君は髪と共に知性まで退行してしまったのか?」
「なっ……! なんて失礼な! 純然たる興味に決まっているだろう!?」
「そうだろうか? なんでも口に入れるのは赤子がやることではないのかね? ……いや、失敬。赤子は情報を得るためであって君のように空腹だからではなかったな」
 ヌヴィレットが喉を鳴らして嘲笑する。フリーナは顔を真っ赤にして怒りを露わにするとどすどすと大きな音を立てて先へと進む。
 このとき、フリーナが気づいていれば何かが変わったかもしれない。憤慨しながらずんずんと突き進むその背後でヌヴィレットがうっとりとした表情でその背を見つめていたことを。

「ヌヴィ、レット……身体……熱い……
「そうであろうな」
 ヌヴィレットがフリーナの頰を撫でる。熱に犯された身体に彼の低い体温が染み渡る。
「気持ちいい……
 すり……とフリーナがヌヴィレットの手に頰を寄せた。その様子に順調だ、とヌヴィレットは内心でほくそ笑んだ。
「なんで、僕、こんなに……っあ……あああああっ……!」
 いっそ、痛いほどの熱がフリーナの身体を苛んでいく。落ちた雫は彼女の瞳からこぼれた涙なのか、はたまた、汗だったのか、今になっては些細なことだ。
「ヌヴィ……
 フリーナの手が所在なさげに空を彷徨う。ヌヴィレットはその手を掴むと掌に口づけた。
「ヌヴィ……レット……?」
「どうかしたかね? フリーナ殿」
 ヌヴィレットが淡く微笑んで首を傾げた。
 ぞわり、とフリーナの肌が粟立つ。──彼はこんなふうに笑う人だっただろうか。
……まさか」
 ヌヴィレットの表情や仕草にフリーナの心のなかで暗雲が立ち込めていく。
……君が食べてみたいと言ったのだろう?」
 恍惚とした顔でヌヴィレットが口角を持ち上げた。そういえば、今日の食事中、彼にしては珍しく自身と同じものを嗜んでいたことを思い出す。
「甘いフォンタであれば味を誤魔化すことも容易いと気づいたのだ」
 そうだ。何故、思い至らなかったのだろう。今日のフォンタは彼が用意したということを。それも「君と共に飲みたい」だなんて誘い文句すら準備して。
「まさか……全部……う、うあああああっ!」
 恐怖が身体を支配するのと同時に熱が身体中を駆け巡る。
 痛い、イタイ────あつい。
「安心したまえフリーナ殿。君のそれは身体が書き変わっていく際の副作用のようなものだ」
 痛みと熱にのたうち回るフリーナの耳にヌヴィレットの言葉が途切れ途切れに届く。
 書き変わる? 副作用? 彼はいったい何を言っているのだろう?
 熱と痛みが治まり、フリーナは意識を手放す。ヌヴィレットは気を失ったフリーナを抱き上げると、そっと額に口づけた。
「これで、君を失うことはないだろう?」