閉じていた両の瞳をゆっくりと開ける。夢でも視ていたのか頭がふわふわとした感じがして落ち着かない。でもまさか次元移動中に眠りこけるとか白昼夢じゃあるまいしと。勘違いだと結論づける。
「……あれ?」
夢心地から意識を集中させ、気が付けば森の中に佇んでいた。
ぱちくり。
慌てず騒がず瞬き大きく1つ。それ以外は特に表情を変えずきょろりと辺りを見回す。
飛び込んでくるのは複雑に絡み合った枝と青々と茂る葉。それ以外何も見当たらない。
「んーっと。森だなぁ」
人工的な建造物はもちろんのこと、人っ子一人見当たらない。どうやら移動の着地点を誤ってしまったようだ。
「毎度毎度思うけど降りる場所もーちょいなんとかならないものですかねぇ」
ため息がこぼれるが仕方ない。
街から街へ。
世界から世界へ。
旅から旅への日常は随分と慣れてはきたものの、到着する度にこれでは面倒というものである。
まぁ、街の往来ど真ん中に突然人が現れたらパニックだろうけども。
「ともあれ先ずは状況確認を――」
どの世界に辿り着いたのかを確認しなければ動きようがない。一先ず人のいる所まででなければと思い、行動を起こそうかなと思っていた矢先――
「なんじゃこれぇっ!?」
――中略――
――くすくす――
なんか聞こえた。
子どものような。老年のような。男のようにも。女のようにも聞こえる。アンバランスなその声に思わず視線が上がる。
トランクのフタをパタムと閉めて辺りをキョロキョロと見回す。映るのはあいも変わらず鬱蒼と生茂る木々だけだ。さっきと変わりない。人がいるのであれば人影があってもいいはずなのだが。何もない。けど――
「……なんだろ。なーんか見られてるような気が」
視線を感じる。あちこちから。
こちらを誂うようにまたもくすくすと笑い声が耳をくすぐった。
――ニンゲン?――
――ニンゲンダ――
また。
声は聞こえど姿は見えず。
――ニンゲン。ヒサシブリニミタ――
――ナンデココニイルンダロ?――
そんなんこっちが聞きたいくらいだ。
「そもそもどこなのよここ」
こんな声がいる存在のいる世界には心当たりがない。似たようなモノがいる世界には心当たりがあるけど、そういう存在は既に私の手元にあるし。一体なんの世界だ?
「どなたかいらっしゃるんですか?」
――ミエテル?――
――ミエテルノ?――
なんだ見えてるって。そんな不可思議な現象なのかこれ。
「御用がおありでしたら姿を見せてはどうですか?」
――カン――
近付いてくる音。
――カン――
「お主。何者じゃ」
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