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望月 鏡翠
2025-04-12 22:48:16
895文字
Public
日課
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#1685 「針銀鉱」「艶立つ」「壮語」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
古いものばかり置いている店は誇りっぽいと言って、両親はあまりこの店に入ってこようとしなかった。帰るときも、店の外から連絡を寄越すだけである。そこできちんと返事をすれば、私の時間は侵害されることはなかった。
埃っぽいというけれど、その埃を私は感じたことがない。ここで売られている物語を、選ばれた人にしか認識できないのと同じように、選ばれていないものにしか認識できない誇りが店内に存在しているのかもしれない。
ここは選ばれしもののためにある、選ばれしもののための店です。私は彼らに適切な出会いを提供するための、いわば待ち合わせ場所なのです」
ただの骨董品店の店主とは思えない大言壮語だが、選ばれしものと言われて悪い気はしなかった。私以外のお客さんが来ているのを見たことがないから、クローズドの札をみるたびに閉店してしまったんじゃないかと心配になる。だけどお店は水曜日になると必ずまた開店していた。
家事も労働も知らなさそうな指先が、柔らかい布で丁寧に展示ケースの表面を磨きあげていく。その動きはただ掃除をしているだけなのに、妙に艶立つのだ。
私は本当ならお金を払って商品を買っていく人が座るべき、来客用の椅子に腰掛け、その動きを見つめていた。
やがて、店の中に見知らぬ品物が追加されていることに気がついた。黒々とした石の塊のようなものが、クッションを敷いたプラスチックケースの中に納めて、固定してある。カウンターに置いてあって、まだ値札がついていなかったから、新入りだと確信を持った。
「これは何?」
「針銀鉱という鉱物の一種です」
「そうじゃなくて」
私は店主の説明を遮った。
「物が何か、じゃなくて。物語があるんでしょう、この石にも」
彼が集めてきたのであれば、それは誰かの記憶や思いの結晶であるはずだ。あるいは死んだあとに残る魂そのものかもしれない。
「おや、良いのですか。これは少々重苦しい話ですよ。残酷さや陰険さはありませんが派手さもありません」
「でも、あなたの興味を引いた」
店主は意を得たように頷くと、お茶を入れて静かにその針銀鉱について、話し始めた。
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