望月 鏡翠
2025-04-12 22:06:03
1059文字
Public 日課
 

#1684 「オカルティズム」「インフォーマル」「中店」

#毎日最低800文字のSSを書く/三題話

 建物の一番下の階と言われた場合、普通は地下一階に向かう。部屋があるのはそこまでだからだ。
 それより下の階は駐車場である。地下二階が来客用、奥の半分から地下二階が従業員。
 地下三階までいくと、大型車が入る搬入搬出路となっていて、一般車の出入りは制限されている。
 もちろん従業員ならエレベーターのボタンを押せば地下三階まで行くことはできるわけだが、資材部の研修でもなければいく用事はない。
 地下一階のエレベーターホールで待っていた私は、上司になるべき人から電話を受けて、私は慌てて地下三階に向かった。
 エレベーターのドアが開く。最低限の灯りしかない駐車場の内部は薄暗い。エレベーターホール前以外の大抵のスペースは動体感知式照明になっているので、作業している車や駐車する人間がいない間は薄暗い。
 そこには二人の人物が待ち受けていた。どちらかが上司。どちらかが先輩だ。
「たいっっへんに申し訳ありません」
 深々と頭を下げる。
 こちらが上司だろうという初老の男性は、手を振ると先に立って歩き出した。
「いや〜いいんだよ。無事でいてくれれば。初日から怪異に攫われて行方不明になってしまったのかと思った」
 癖の強い冗談に、曖昧な愛想笑いで応じると隣に立っていた先輩らしき人が、肩を竦める。
「残念ながらうちの部署は全員がもれなくオカルティズムに傾倒している。職場を見てもらえればわかると思うけどね」
 案内をするためにここに集合したわけではなく、本当にここのフロアにあるらしい。知る限り、この階にオフィスに該当する部屋はない。
 どこにいくのかと思ったら、そこは配送分室だった。送られてきた荷物を一時保管する倉庫。その作業スペースの一角が、我々のオフィスとしてパーテーションで区切られて机やパソコンと行った諸々のものが運び込まれている。
「こんなところに押し込められているなんて、不当ではありませんか」
「仕方がない。残念ながら、我々の活動の大半はインフォーマルゆえに、予算が降りない。だからオフィスも支給してもらえないというわけだ。ただし、居心地はいいよ。人目を気にしなくていいし、何より荷物の保存のためという名目でずっと冷房を効かせてくれているしね」
「新しく入った君にはこの中店を大店にするくらいの、志で望んで欲しいと思っている」
 どうみても、中店どころか小店だ。自己評価が高すぎるのではないだろうか。私には自分が配属された怪異対策課なんて部署の必要性が、いまだに正しく理解できてはいなかったのだ。