友達と話しながら学園の屋上にやってきた。扉を開けると、リコ先輩と知らない男の人が話しているのが見えた。背丈はリコ先輩と同じくらいで、髪は黒とピンク、肩に何かポケモンを乗せているみたいだ。
「どうしてもリコに会わなくちゃって…大切なことを伝えたくって」
うっすらと聞こえてきた言葉。リコ先輩に会いにきたのは間違いないらしい。そして、後ろ姿しか見えないけど…
「わぁ…!」
「ねえ、誰あれ…!」
「えぇ…!誰だろ」
「見て…!」
「あはは…!」
みんな思ってることは同じみたいだ。話しているとリコ先輩が男の人を止めてこっちに歩いてきた。
「リコ先輩の知り合いみたい!」
「転校生?」
「なんかカッコいい!」
「そういうんじゃないから…」
リコ先輩が両手を前にして否定する。でも、その後ろから男の人はひょっこりと顔を出した。なんというか何も分かってなさそうに見える。でもカッコいい。
「どうしたの?」
「ピィカァ?」
男の人の肩に乗っていたのは帽子を被ったピカチュウだ。肩からどう見ても顔に合ったサイズじゃないゴーグルをかけている。少し威張った感じの態度だけど、やっぱりピカチュウ。こんなの…
「かわいい〜!!」
私たちがそう言うと、そのピカチュウはカチュカチュとくしゃみを始めた。その様子が余計にかわいい。
「ロイ!?やっぱりロイだよね〜!!」
隣からアン先輩がやってきた。この男の人はロイさんと言うらしい。でも、アン先輩とも知り合いなんて…リコ先輩とアン先輩、どっちの彼氏なんだろう…
「アン!久しぶり!」
ロイさんがそう言うと、二人はハイタッチを交わした。背伸びたよね!と楽しげに話している。特に照れもせず褒めているし、なるほど、これは友達って感じだ。
「でも、なんでセキエイ学園に?」
「あ。リコ、伝えたいことがあるんだ。僕と一緒に…」
「わぁ…!!」
やっぱり、きっとこのロイという人はリコ先輩に告白を…いや、もしかしたらプロポーズ!?!?「一緒に」って、まさか学園から連れ去るんじゃ!!
友達の方の顔を向くと、やっぱりみんな同じことを考えている。さあ、早く告白を…!!
「ちょっと待って」
リコ先輩はそう言うと、ロイさんとアン先輩を連れてどこかへ行ってしまった。別れる前に本当にそういうのじゃないと言われたけれど、ここまで言われると逆になんだか怪しい。
アン先輩が知らない男の子とバトルをしているという話を聞いて、私たちもバトルフィールドに向かった。そこにいたのはやっぱりロイさん。バトルはちょうど終わったところみたいで、あのアン先輩が負けたみたいだ。カッコよくてバトルも強い。すごい人だ。でも、周りのみんなから聞こえてきた内容は暗いものだった。
「あの男の子、ライジングボルテッカーズらしいよ」
「え?そんな人が入ってきていいの?」
「ヤバいよね?」
その場に先に来ていた友達から聞いてみると、どうやらロイさんは自分からライジングボルテッカーズを名乗ったらしい。どうしてそんな人がここに…一体リコ先輩になんの用で…
噂している間にリコ先輩とロイさんのバトルが始まった。トリックフラワーで惑わしながら戦うリコ先輩と力押しで戦いつつも、トリックフラワーをしっかり対策するロイさん。白熱した勝負の中で、リコ先輩はいつになく闘志に満ちた顔をしていた。心からバトルを楽しんでいる。そして二人ともカッコいい。
「マスカーニャ!満開に輝いて!」
「アチゲータ輝け!夢の結晶!」
二人のポケモンがテラスタルした。この学園でテラスタルを使えるのはリコ先輩とアン先輩くらいで、私たちも見るのは初めてだ。アチゲータもマスカーニャもキラキラ輝いていてとっても綺麗だ。
勝負はロイさんの勝利。バトルが終わると、二人の生徒がロイさんのところへ行った。ライジングボルテッカーズのメンバーなのかという問いに、ロイさんはそうだけど…と何も気にしない素振りで返していた。アン先輩とリコ先輩にも女子生徒が噛みついた。するとリコ先輩はキリッとした顔で語った。
「私は、ライジングボルテッカーズです!」
「ビィカチュ!」
みんなが呆気に取られる中、リコ先輩は笑っていた。でも、とても堂々としていて、何もわからないけど、なんだかかっこいいと感じた。
その日の夕方、リコ先輩はロイさんと一緒に旅立ったらしい。そう、ロイさんと…
「アン先輩!!やっぱりあの二人ってそういうことなんですか!?」
「え?」
「付き合ってるんですよね!!リコ先輩とあのロイさんって人!!」
「いや、それはさ…違う…と思うけど…」
アン先輩の返事はとても歯切れが悪い。アン先輩もはっきり違うとは言えないんだ。
「アン先輩的にはどうなんですか!!付き合ってるっぽいですか!?」
「うーん…二人ともまだその二、三段階前な気がするかなあ…」
「じゃあこれから!?」
「そっか一緒に旅をして愛を…!!」
「あのさ…あんまり外野が好き勝手言うもんじゃ…」
「でも、『リコ先輩が男の子と二人で旅に出た』ってもう学園中で話題ですよ?」
「…マジ?」
リコ先輩とロイさんのことはみんな知っている。二人がライジングボルテッカーズだったことも同時に広がったけど、そんなことよりこっちの方が大事だ。男子の間では密かに人気があったリコ先輩の色恋沙汰で、ショックを受けている人もたくさんいる。リコ先輩とロイさんの関係は今、学園で一番のトピックだ。
「あ!見て、二人がテラスタル研修でバトルした時の動画だって!!」
「ほんとだ!どこから!?」
「パルデアのアカデミーに友達がいる人から広がってるんだって!!」
「きゃー!!二人ともすごいこと言ってる!!」
「っていうかロイさんかわいくない!?アン先輩!!これって去年のですよね!!リアルで見てたんですか!?」
「はあ…リコが次に戻ってきた時が大変だなあ…」
後輩たちのきゃっきゃきゃっきゃと騒ぐ様子にアンは頭を抱えていた。学園中で広がった噂はさすがにどうしようもない。アンはもう一度ため息を吐いて匙を投げた。
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