haruon1018
2025-04-11 21:05:09
3507文字
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七月までにどうにかしたい

893💊の両思いラブラブ話の冒頭(たぶん本編の数年後くらい)前に文庫メーカーさんであげましたが復刻読んだので町並みを少し変えて、色々設定盛り込みました。
あとコー●ラヴ●礼装のtksgさん描きたく……


 アジア某国第三の都市T市に森と一緒にアジトを構えて早半年が過ぎた。
 日本と変わらぬ気候と言語は異なるが、漢字文化が根付いているので看板でなんとなくどんな店なのか察しが付く。
 好奇心旺盛な高杉はあちこちを周り、日本とは違う空気を感じたかったが相変わらず森に外出を阻まれていた。
 流石に日本とは違うので、勝手に逃げ出して何かあっては困ると定期的に外に連れ出してくれてはいる。
 日本の中華街と変わらぬ大門の中は、石畳の上に奇抜な電飾の店が所狭しと並んでいる。
 香辛料や揚げ物の匂いが食欲をそそり、行き交う人に味見と称して店員が品を売りつける。
 エキセントリックな高杉の趣味に合う置物が置いている雑貨店もあるが、なかなか商売根性の強い店主で高杉の顔を見る度に商品を薦めてくる。
 高杉だけなら今頃、部屋中置物で溢れかえっているが、万国共通厳つい男は恐れられるので大体隣にいる森の御陰で家が物で溢れることにはならなかった。
 流石に毎回番犬よろしく森に助けられるのも癪だったので現地の言葉を覚えたが、使い道は今のところない。。
 時々裏路地で何やら交渉している森だがその最中でも高すぎの行動を見張っている。
 なんやかんやで添い遂げたのだから信用してほしいものだが、こればかりは森の性分なのか変えられないらしい。

 腰の辺りまで伸びた一本垂らしの三つ編みを弄りながら高杉は部屋を見渡す。
 ツテを頼って森が用意した仮の住居は所謂、擬洋風建物と呼ばれる建物だ。
 日本にいた頃は雑居ビルだったので随分な出世だ。
 表通りの住居に相応しく、外装はコンクリート製だがアールデコ様式の洋館で洒落た応接間もあるが和室もある。
 元は海を渡って廓稼業をしていた渡世人の本宅だったようで随所に職人技が光っている。
 商いがどうであれ当時の渡世人には侘びさびが血肉に染みこんでいたと森は漏らしていた。
 さてそもそも高杉達が日本を離れることになったきっかけは高杉にある。
「また面倒な物を作ったの、じゃんじゃん作って良いと入ったが少々やりすぎじゃ」
 裏社会にトコトン染まってやろうと高杉が開発したのは、一時的に背を伸ばす薬である。
 半日ほどしか効果がなく、無理に筋肉を伸ばすので痛みを伴うが信長はいたく気に入っている。
「蘭丸とイチャイチャするのに足りぬ時があるから」
 信長に足蹴りされたくない高杉は黙ってほしい分だけ信長に献上した。
 もう一つは掌の静脈と指紋を一時的に変える薬だ。
 生体認証は指紋が一般的であったが犯罪を連想させる、偽造も容易になったので今は掌の静脈から本人確認することが主流になってきている。
 静脈は躯の内部にあるため偽造は難しいと云われていたが高杉は見事に成功した。
 表の世界で発表したなら世界的な賞を授与できるが、裏社会の人間が産み出したとなれば正義が動く。
 更に織田でも厄介な世界的犯罪組織も動き出してきた。
 三文映画の冒頭のような状況になったので信長の命令で、高杉は森と二人、失踪することにした。
 頭脳と機材があればどこでも研究できる高杉とは違い、森は信長直属の若頭だ。
 離れて大丈夫なのか不安になったが、「ハネムーン旅行を楽しんでこい」信長は笑われた。
 流石は森家可愛い信長である。
 それに若頭が一人抜けたとて織田の組織は揺らがない。
 羽柴に、柴田、前田と織田の傘下には彼女を敬い、動くヤクザは数多くいる。
 最近では顔を見たことはないが与一郎という青年も稼業に精を出しているという。
「寧ろ帰国した後、ポジション残っている?」とうっかり高杉が口にすれば、
「大殿はああ云っているが同盟やら海外拠点を見つけろって注文付けてきた」と森は淡々と語った。
 森家は独立した組を持っていたとことを高杉の世話係の羽柴から聞いたことがある。
 高杉が森と関わる随分前に起きた抗戦により、森長可は父兄を亡くした。
 ヤクザ世界でも血筋は跡目を選ぶ上で重要になる。
 本来なら次男である森、長可が組を引っ張るのが普通であったが、まだ跡目を継ぐには経験が足りないと信長の預かりになった。
 その後、蘭丸も成長し信長の庇護を受けているうちにどちらが組を継ぐかという話が出来上がり、普通ならお家騒動に発展するところを「じゃあ成利が独り立ちしたときに選べば良いだろう」と森のあっけらかんとした台詞と「それで良いよね」と有無を言わせない信長の一声で、跡目については現在も保留となっている。
 その蘭丸が一人前になるまであと二年。
 その頃には帰国できているだろうが、どちらにせよ、高杉が森のそばに居るのは決定事項だ。

 そんなことを思い出していると玄関の扉が開く音がした。
 存外にも静かな足音で廊下を通り過ぎると、森が扉の取っ手を回したので高杉はすかさず、扉の前に立った。
「主人、欢迎回家」
「なんだよその中国語、誰に習った」
 紙袋を抱え、独特の髑髏模様がプリントされたシャツにチノパンとラフな格好の森が怪訝そうな顔をしたまま立っている。
「もっと面白い反応見せろよ、さて誰でしょう」
「ほーん、小籠包と青菜の炒め物買ってきたけど飯にするか」
 所謂お付き合いというものを正式に始めていたが、劇的に何かが変わったわけではない。 せいぜい強制的なセックスがないだけで、高杉が森を好きになったからと云って森は浮かれ上がったりしなかった。
「あっ、だったらデザートに杏仁豆腐を付けよう冷蔵庫で冷やしてある……なんだよ」
「で誰に習ったんだ」
 くっと顔を近づけてきた森に高杉が、ふぅとため息を漏らす。
「気にするところそこかよ、おいおい君、僕が今どんな格好しているか分かっている?」
 白の上着は化学者としてのプライドからではなく単純にハイネックインナーとの組み合わせだが、羽織は少々拘っている。
 オリエンタルな袖口の模様と瀟洒なスタンドアウトカラーの羽織は露店で見つけた一品モノで、そのせいでそこそこ上背がある高杉が纏っても少しだぼ付いている。
森と同じくらいごちゃごちゃとネックレスやピアスで飾り付けている上に室内でサングラスまでかけているのに、森の反応は薄い。
以前であればどこかに逃げるのかとそわそわするだろうが、随分と落ち着いている。
「安モンの映画で秒で死んだと思ったら、ラストで実は親玉でしたと出てくるムカつくヤツ」
「随分な評価だな……君もよく知っている徐福君だよ」
言葉の壁を取り払うのにはベッドを供にすれば良いなどと云う巫山戯た格言があるが、そんな不埒なことはしない。
悪戯に森を刺激して機嫌を損ねれば、二、三日は足腰が立たなくなることをイヤというほど分からされた高杉は素直に漏らす。
徐福は薬を開発していくうちに知り合った、高杉と同じアングラで薬を開発している女性だ。
「赤毛の小娘じゃねぇならいい、」
「世話になってるんだろ、彼女が云う老師に」
「まぁな、けど習うならあいつら以外にしろ」
「了解、それにしても出掛けるなら声をかけてくれ……
「うちに置いてる車じゃ、オレしか乗れねぇだろ」
「デカい図体なんだから三輪自動車ではなく、せめてダットサンを用意すべきだったぞ」
「下手に良い車置いておくと場所が割れるんだよ、」
「あ~なるほどね、それは君も僕も困るね、」
「だろ……なぁ」
「しかしこういった食事はランタン輝く露店で食べるから味があるのだよ、今度は呼んでくれよ、それで君は食べてきただろ、茶を淹れてくれ」
 高杉はくるりと森に背を向けて、台所へ向かうが、高杉が喋喋しいのを森は見逃さなかった。
「おい、」
「ぐえっ、何だよ、いきなり髪を掴むヤツがいるか」
「どうしてオレの名前を呼ばねぇ」
……どうでも良いだろそんなこと、今、この場所には君と僕しかいない」
「高杉」
「っ……煩いな、どうだって良いだろ」
「良くねぇ、どうしてだよ」
「たまには昔を思い出して、そういうプレイだと思えば良い、そのうち呼んでやる」
「人の求愛行動、プレイとか云うな」
「それは謝るが兎に角、困ることはないだろ、僕は腹が減った、」
「っ……あとで割らせてやるからな」
高杉に自分と同じ物しか与えないという狂気じみたことを相変わらず続けている森は舌打ちしながら、用意を始める。
名前を呼ばなかったのは単純に昔を思い出し、気恥ずかしくなったからだけだがもしや入らぬ事をしたのではと高杉はそわそわし、折角煮詰めて作った苺ジャムをのせた杏仁豆腐の甘さを味わえなかった。