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伊坂
Public
トワウォ/鯨
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罰符よろしく(洛信)
背中を怪我してしまった洛軍の話。いいかい? クソデキてる洛信だよ………。
罰符よろしく
城砦にきていた十二と食事をし、勘定のために席を立った時だった。
「おっま、背中に血ィついてんぞ」
「え?」
「怪我したか? ポロシャツに血が滲んでる」
「えっ、いや」
怪我、したかな?
全く身に覚えがなくて洛軍は困惑する。特に痛みもないし本当に血だろうか?
払うと言ったのに、なぜかいつものように十二が二人分の勘定を済ませてしまうのを見て洛軍は「ありがとう」と眉尻を下げながら口にした。「ん」と得意げに十二が言う。しばらく二人して他愛のない話をしながら道を歩いていたが、十字路に差し掛かって別れる前に「でもお前は四仔のところへ寄ってけ!」と、彼は洛軍の体を診療室がある方向へ向けてばしん! と叩いた。
「痛゛っ」
「ほらな、やっぱ怪我してんだって」
「みたいだな。自分じゃ見えないからわからなかった」
確か四仔のところには姿見もあったはず、と思い浮かべながら返事する。
治療は必要ないとしても、背中についている血の程度を確認するためにも寄ってみよう。
今着ているこのポロシャツは、初めて信一からもらったお気に入りの服のうちのひとつだ。思い入れもあるからまだ大事に着ていたい。毛玉だらけになりつつはあるけど
……
。
信一のところに向かうという十二と別れて、洛軍は駆け足気味に、昼でも薄暗い城砦の階段を蹴った。
「四仔」
張り紙だらけの階段を登り、診療所のドアを軽く叩いて中を確認する。
「洛軍? どうした?」
四仔はすぐに声を上げて、薬棚の方から背を丸めるようにして姿を現した。
「今大丈夫か? 姿見を借りたくて」
「姿見? なんでまた」
「背中に血がついてるらしい」
「どこかで切ったか? 塗り薬くらいなら塗ってやるぞ」
気安くぽんぽんと会話をしながら、最近は後ろの髪をピンのようなもので留めている四仔を前にしてポロシャツを脱ぐ。
「うわ、ほんとだ。血って洗えば落ちるのか?」
「おまっ
……
、お前、それよりソレ痛いだろ
……
?」
姿見を前に身体をひねりながら、そういえば髪が少し伸びてきたなと洛軍はほほえむ。伸ばした方がいい、理髪師をやるなら自分の髪をアレンジしてみるのも勉強だぞと言われて伸ばしはじめた。それに、彼は「そのほうが俺好みかも」とも言って洛軍に煙を吐いた。そのときの甘い表情までが胸裏に蘇って、洛軍の耳はかぁっと熱くなる。
そんな時だ。
「洛軍が怪我したって?」
ノックもなしに診療所のドアが開け放たれて、そこに居たのは十二に背中を押される信一だった。洛軍は二人に「やあ」と目配せをしたあと、ようやく姿見に映る自分の背中へと視線を向けて
――
絶句した。そう、絶句だ。これは
………
。傷っていうか
……
、これ、は
………
。
洛軍は固まるしかなった。
ぎこちなく目だけを信一のほうに向ければ、彼は今まで見たこともない
――
絶望と怒りが綯交ぜになった顔で洛軍を凝視していた。お前ふざけるなよ。わざわざ自分の手牌を見せてやるやつがあるか? という顔。
と、そこで、
「あ~、あ~、お熱いこったぁな~」と、十二がニヤニヤとして声を上げる。
「おい、爪切りなら貸せるぞ。彼女に貸してやれよ」と四仔。
信一は何をか言おうとして口を開け、しかし何も言えず口を閉ざした。頬がほんのりと朱に染まっている。きっと洛軍の顔も赤い。
昨夜ーー
…
。
洛軍の恋人は、最初から最後まで可愛かった。まあそれはいつものことなのだが、昨日はお互いアルコールが入っていたからまるで自制が利かなかった。言葉もなく脱がしあい、互いの腕が絡み合うだけで楽しくて嬉しくて。
恋人は洛軍の頭を撫でて、俺をすきにしていいのはお前だけと誇らしげに言い始め、それで洛軍も気分が良くなってしまい、かわいらしいでべそを撫で、額や、腕の内側を唇でなぶり、鎖骨をついばんで無数のキスマークをつけた。彼はそのたびに悩ましげに息を吐いて、胸の突起を控えめにとがらせて洛軍を喜ばせた。
彼は洛軍が股間を熱くさせているの気づいてにやつくと、のしかかるように股間を開きながら跨ってきて、それで、もう洛軍は舞い上がるような気持ちになって、彼の細すぎる腰を両手で支えた。嬉しさのあまり、つながったまま彼を持ち上げてしまったのだ! 彼は、藍信一は「ばっ、ばか!
……
おいっ、ばか!」とさすがに焦りながら声を上げた。浮いている自分の身体。深くなる接合に混乱して、洛軍の背筋にぎゅうっとしがみついて「や、やだ
……
」と昼間には絶対に漏らさないようなか細い声で鳴いた。ゆるいパーマがふわふわとゆれてかわいらしくて
……
。
悲鳴じみた嬌声。恐怖と悦楽。
そのたびにきゅうきゅうと締め付けられる自分の熱杭。
無我夢中でゆさぶる洛軍の背中に手を回して、彼は、最後の方にはぎりぎりと爪を立てて果てた。
(全然、痛くなかったけどな
……
)
淫奔な回想から戻って、洛軍は姿見に映った自分の背中の傷をもう一度見やった。酷い。今の今まで痛みを感じていなかったのが不思議なくらいの傷だ。
力のこもった五指が背の上を引っ掻いたのは明確で、みみず腫れのようになっている傷に、ところどころ血が滲んで凝結している。
昨日の行為の激しさを思い出して、洛軍の耳は、背中は、全身は熱くなった。居ても立ってもいられなくなって再びポロシャツを着こむ。
「「さてとご両人?」」
声の主は十二と四仔だった。
彼らは声を揃えて手のひらを自分『達』に向けている。
「「罰符よろしく」」
肩をすくめる信一の隣で、洛軍は力なくやれやれと笑った。
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※罰符
……
麻雀における罰金のこと
お断りだねって電光石火で診療所からおさらばする洛信もいいなって思う。爪きりはありがたく借りていく。
かれぴのために、あとでいそいそ軟膏取りに来るソンヤッちゃんもかわいいと思う。つまり洛信ちゃんはかわいい。笑
波箱はここから
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