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望月 鏡翠
2025-04-10 23:38:48
867文字
Public
日課
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#1681 「白粉」「木管」「尻っ跳ね」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
雨上がり濡れたアスファルトの匂いがたちのぼり、空気を夏にする。どこに隠れていたのか、晴れた瞬間に蝉の声が鳴り響いた。駆けていったら根元にたどり着くことができそうなくらいに近い場所に、虹が出ている。遠くには雨雲の名残が灰色になってこびりついていた。
そんな外の景色とは対照的に、ホールの中はしんと静まり帰っている。スポットライトのしたで、金色でピカピカの楽器がキラキラと光る。夏の茹だるような眩しさとは対照的な光だ。
中に入れば空調が効いてひんやりとしている。その環境に一番神経を使うのは、木管楽器の奏者だ。
木材は湿度でコンディションが変わる。練習に使ってよい防音室とも空調の具合が違うから、本番前にナーバスになった学生の神経を逆撫でしていた。大舞台を前にして、環境の違いで実力を発揮できず、仲間の足を引っ張ったらどうしようと、それが心配なのだ。
そうして、各々緊張で神経を尖らせる学生たちの中で、ピリピリとしたグループがあった。仲間が一人遅れているのだ。弱小の学校に、補欠メンバーもレギュラーメンバーもいない。一人が欠けたら、そこのパートは欠けたまま本番に出ることになる。
出番は刻一刻と迫っている。
「まだ、繋がらない?」
苛立ちをなるべく声に出さないようにしながら、部長は彼女に電話をかける。
「あ、きたきた!」
部員の一人が声を上げる。
夏の光を浴びながら、
ホールのエントランスを扉にぶつかるように開く。扉が開いた一瞬に、外から蝉の声が飛び込んできて、閉じると同時に遠ざかった。
いつも白粉を叩いたように白い肌が、真っ赤になっている。ずぶ濡れの背中には、全力疾走のあとの泥の尻っ跳ねが残っていた。濡れているのが雨なのか汗なのか、わからなかった。
息が整わず、ごめんの一言すらうまく発音できなかった。
言いたいことは山のようにあることはわかっていた。彼らはお互いの目を見て頷きあうと、すぐさま練習室に雪崩れ込んだ。
これがいい思い出に変わるのか、関係の決裂になるのかは今日の結果次第なのだ。
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