三毛田
2025-04-10 09:24:19
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58 18. バカみたい

58日目
本当バカみたいだけど、それが恋

 嫉妬して、後悔して、泣きじゃくって、困らせて。
 恋心なんて。恋する気持ちなんて。
 知りたくなかったし、気づきたくもなかった。
 こちとら、今の〝俺〟として目覚めてからまだ数ヶ月だぞ?!
 記憶を前の俺がどうだったのかは知らないけれど、こんな感情に振り回されていた覚えみたいなものはない。
 あったら、感覚として覚えているだろう。
「丹恒。お願いだから、大人しくしてくれ……
「心外だな。俺はずっと大人しくしている」
 そんなわけない! と叫びたいのを我慢して、牽制するように辺りを見回し。
 たまたま立ち寄った星には、ベロブルグのように博物館があり。
 更には、巨大な図書館もあって。
『そうね。ここにはしばらく滞在しましょう』
 姫子の言葉に、意気揚々とその二つの建物へ向かったのは丹恒。開館から閉館まで、ずっといる。
 ご飯の時間にだけは外に連れ出すが、さっさと食べてはすぐ戻り。
 ある日からずっといる、美丈夫。
 噂にならないはずもなく。
 なるべく一緒にいるようにしているけれど、話しかける人は後を絶たない。
『図書館では静かにするべきだ。話しかけないでくれ』
 なんて、けんもほろろに冷たく突き放されて黙って従うような人間なら、問題はなかった。
 まあ、大事になる前に相手は出禁にされていた。
 ざまあみろと言いたかったが、一歩間違えると俺も同じようになっていた可能性はある。
「バカみたい」
「ん?」
「自分のことなんか一切見てくれない、探究心の塊みたいな男が好きな俺がバカみたいってこと」
「それは大変だな」
「お前さあ」
「文句を言いつつも、こうして俺の隣にいてくれるお前のことは、好きだが」
「お前、本当そういうところっ」
 顔が熱い。それを誤魔化すように、お昼のホットドッグにかぶりつく。
「穹。ケチャップがついている」
 紙ナプキンで俺の頬を優しく拭く。
「列車に帰ったら、覚えとけよ」
「善処する」
「今この瞬間から、丹恒は俺の恋人だからな」
 そう宣言すると、そっぽを向いてしまう。でも、耳の先は赤い。
 俺の恋心パンチは効いたようだ。
 嬉しくなって、追加で買ったカスタードパイに歯を立て。
「そ、そうだ。博物館でバックヤードツアーをやるらしい。午後の回のチケットを買ったんだ。穹さえよければ、その……一緒に参加しないか」
「一人じゃないの?」
「実はペアなんだ」
 恋人と意識したからか、おずおず話しかけてくるのが、すごく可愛い。
 色々悩んでいたのが、本当バカみたいだなって思ってしまった。