三毛田
2025-04-09 10:48:10
1061文字
Public 1000字3
 

57 17. 晴れときどき土砂降り

57日目
そういう日もある

 空は朝から晩まで晴天。降水確率はほぼゼロ。
 のはずなのに、俺の心はどんより曇り。このままだと、顔は土砂降りだ。
「穹。諦めなって」
「だってぇ」
 星穹寮の末っ子であることを全面に押し出し、泣き真似をしようとした。でも、口から出たのは本当に今にも泣きそうな、情けない声。
「丹恒なら、すぐ戻ってくるでしょ。なの、放っておいて先に帰ろうよ」
「ダメダメ! 見張っておいてって頼まれたの!」
「何で買収されたの」
……ベリージュース用の、冷凍ベリーミックス。三袋」
 なのの返答に、出そうになった涙も引っ込む。
「それだけ?」
「悪い? だって、丹恒が選んでくれたのいつも美味しいんだもん。そりゃあ、作ってくれるパムの腕がいいのもあるけどさ。素材がいいと、美味しいんだよ」
「今度から私が買ってあげるから、あんまり丹恒の言うことばっかり聞かないで」
「努力はするよ」
 なのから言質をとった星は、満足そうに頷く。
「俺は、早く帰っていろと言ったんだが」
 教室に戻ってきた丹恒は、俺たちを見て呆れた表情。
「丹恒! 大丈夫? 何かされなかった?」
「ただの呼び出しに、何かされるもなにもないだろう」
「丹恒は俺の恋人だってアピールしてるのに、しつこい相手なんだ。何かあってからじゃ遅いんだよ」
「穹……すまない。俺が軽率だった」
 ハッとしたような表情を浮かべ、そして素直に頭を下げ。
「わかってくれればいいんだ。じゃあ、帰ろう? 早く帰らないと、姫子の夕飯になる」
 俺の言葉に、三人は鞄をひったくるように掴み、玄関まで走る。
「ご飯どれくらい余ってたっけ」
「パムに確認中だ。三月、星。二人は先に帰って、スープと主食の準備。パムからの返答次第で主食の味を決めろ。俺と穹で、主菜を買う。明日の弁当もあるから、味付き肉と千切りキャベツだ」
「プルコギがいい! 菓子パンもよろしく」
「あったら! なかったら、味噌漬け!」
「二人とも、お弁当箱!」
 カバンから弁当箱を出し、なのと星へ渡してスーパーへ向かう。
 美人で頭も良く、基本的に優しい寮母の姫子だが、一つだけ欠点がある。そうメシマズなのだ。
 食べ盛りの学生には死活問題。専属家政婦のパムがいてくれるが、時々夕飯は無理な日があり。
 今日がちょうどその日なのだ。
 姫子飯を食べたくないがためにわたわたしていたら、丹恒が告白のために呼び出されたこともどうでもよくなり。
 曇り空だった心も、晴れ。時々強風くらいに落ち着いた。
「丹恒」
「何だ」
「大好き」